◎おにぎり売りの女性◎
「おーにーぎーりーーーー。」
沖縄の国際通りから、商店街へ入る。
そのまま公設市場を通り過ぎ、細い路地裏へ続いていく道を歩くと、どこからか聞こえてくる甲高い声。
「おーにーぎーりーーーー。」
声を辿って行くと、おにぎり売りの女性に出会った。
彼女は沖縄の民族衣装を着こなし、大きな風呂敷を背負っている。
声をかけ、風呂敷の中を見ると、そこには不揃いなたくさんのおにぎりが出てきた。
お互いにぶつかり合い、より一層形に個性が出ているおにぎりを、ひとつ手に取る。
「あったかい。」
朝のうちに握られたおにぎりは、まだ温かく、私の手に収まる姿が可愛い。
氣になる中身の具を聞いてみると、何とチャンプルーの一択。
チャンプルーとは、「ごちゃまぜ」という意味で、豆腐と色んな野菜を炒めた料理の総称。
1つ100円。
ひとつひとつ手握り。
梅干しや昆布を想像していた私は、是非ともいただきたいと、いくつかのおにぎりを買うことにした。
しっかりと味付けされたゴーヤチャンプルーと白飯。柔らかく結ばれた米は、齧るとほろほろと解け、落ちないようにもう一口、また一口と、あっという間に食べ終えてしまった。
おにぎりは、結ぶ人によって形や味を変える。
あのおにぎりがもう一度食べたい。
そう思って、同じように作っても、あのおにぎりの味を再現することはできない。
おにぎりも一期一会。
幼い頃、家に帰ると必ずおばあちゃんがいた。
「まりちゃん、食べるかー?」
そう言っていつも作ってくれたおにぎり。
おばあちゃんのおにぎりは、俵型。
手を少し水で濡らし、塩を掌にすり込む。
熱々のご飯を手に取り、優しく結ぶ。
米粒がふわっと光るおにぎりの上に、必ずのせる黒胡麻と紅生姜。
小さな俵型が、小皿いっぱいに乗せられてやってくる。
おばあちゃんの炊く米は柔らかい。
おかげで私お父さんは、柔らかい米じゃないと文句を言う。
これが「お袋の味」ってやつか。
おにぎりは携帯食としても優れている。
腹持ちも良く、いろんなバリエーションがあって、好みに合わせられるし、飽きない。
結び手によって味や形、大きさや食感も違うんだから、これは個性の塊。千差万別。十人十色。
そしておにぎりは、
「お結び」とも呼ばれる。
人と人とを結び、氣持ちの交換。
何とも素晴らしい日本の食文化🌿
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