まだ死なないんだから

27年ぶりに日本長期滞在中の61歳。ずっと暖かい地域にいたので、久しぶりの日本の冬にビ…

まだ死なないんだから

27年ぶりに日本長期滞在中の61歳。ずっと暖かい地域にいたので、久しぶりの日本の冬にビクビクしている。どんなに離れて暮らしていても、日本に戻るとあっという間に日常に溶け込む事が出来るものだと少し驚く。そんな日々を少しずつアンソロジー的に綴っていきたい。

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「忘れられない恋物語」を書き終えて

昨日まで、27年前に経験した、私の身に起きた本当のことを全10回に分けて、「忘れられない恋物語」としてブログに書いていた。 正直、何でこの物語を書き始めたのか?自分でも良く分かっていない。 元はと言えば、居候させて貰っている大家の天然社長が、ブログ1000日連続チャレンジに挑んでおり、面白そうだからやってみよう!みたいな軽いノリだった。 意外だったのは、書き出してみると毎日の事なので大変なんだけど、段々楽しくなって来たのである。 途中から、なんだか見えない力に押される

    • 夢 ー時空を超えて 2の10ー

      来週の火曜日はジェフリーの49日だ。 窓の外を眺め、ぼんやりと日にちを数える。 その年は雪が何度も降った。 ひどい時は気温がマイナス15度を下回った。 そんな時はたったの1ブロックが歩き通せず、地下鉄を出たらまずどこかのデリに入る、温まったら次の信号まで走る、信号近くのスーパーに飛び込み暖をとる、そしてまた走る。こんな具合でアパートにたどり着いていた。 アパートの窓は1st AV. に面していた。 雪が随分と積もった翌朝、誰かが通りの真ん中にゆき山を作った。山と言ってもせ

      • 夢 ー時空を超えて 2の9ー

        日常が戻ってきた。 でも、今までと街の風景がどこか色彩が違って見える。ふと気を抜くと、視界の端がモノクロになっている様な寂しい気配を伝えて来る。 あれ以来、76st. のジェフリーのアパートには行っていない。一度荷物整理にジョアンナが来た時、片見分けに何か持って行きたいものがあれば取りに来てと言われたが、ジェフリーがいない部屋に足を踏み入れる気には到底なれず、用事があるからと辞退した。 彼と歩いた街並みを歩くのも、いちいち彼の姿が垣間見える気がして落ち着かない。 このまま

        • 夢 ー時空を超えて 2の8ー

          お葬式の会場に戻ると、会葬者が次々とジェフリーにお別れを告げているところだった。 私たちの番になり、全員揃ってジェフリーの最期のお顔を見て祈りを捧げる。ところが着物の着せ方が変で、私は靴を脱ぎ、祭壇の棺ににじり寄り、ジェフリーの棺に手を入れて胸元を直した。 やっと綺麗に収まり、ホッとして元の場所に戻ったが、何人かが奇異の目を私に向けていた。 それはそうだ。私達にとって祭壇は神聖なものだから、当たり前のように靴を脱いでいたが、彼らには靴を脱ぐ習慣がない。それ以上に、棺に手を

        「忘れられない恋物語」を書き終えて

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        • 夢 時空を超えて 忘れられない恋物語
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        記事

          夢 ー時空を超えて 2の7ー

          ジェフリーのお葬式の朝は冴え冴えと晴れ渡っていた。 お葬式までの数日をどうやって過ごしたか?もう記憶が曖昧になっているが、なんでこんなに泣いても涙は枯れないのだろうと不思議に思った記憶があるので、泣いてばかりいたのかも知れない。 そう。その時は私にはまだ、魂にとって生も死も繋がっているとは思えず、死は一つの終わりであり、それに対する悲しみで覆われていたのだと思う。 葬祭場には友人数名と出かけた。 2人のルームメイト、ジェフリーが自殺した日に私が病院に付き添った友人とその

          夢 ー時空を超えて 2の7ー

          夢 ー時空を超えて 2の6ー

          ジョンはいつものネイビーの車で来ていた。車種は忘れたが、車内は狭く、いつもジェフリーに椅子が壊れるとか体重オーバーだとか、からかわれていた。今はその小さな車の助手席が、とてつもなく居心地の良いものに感じられた。 走り出してしばらくは、お互いに無言だった。 頃合いを見計らう様にしてジョンが少しずつ口を開く。 僕が軍隊にいたのは知っているよね? 彼は、私より10歳ほど年上で、ギリギリベトナム戦争の経験者だった。ジェフリーも軍隊ににいた事があるけれど、戦争体験者ではない。ジ

          夢 ー時空を超えて 2の6ー

          夢 ー時空を超えて 2の5ー

          ジョアンナは、警官の後ろにいる私を見ると「あっ!」という顔をしたが、すぐに「今回は大変だったわね」と優しく声をかけてくれた。 中へ誘われ、目を伏せながらエンタランスのドアをくぐる。まだ中高校生位の男の子と女の子がリビングで何やら話し込んでいた。私が中に入ると2人はやおら立ち上がり、女の子はためらいがちに挨拶してきたが、男の子はそっぽを向いていた。 ジェフリーの娘と息子だとすぐに分かった。 その男の子はジェフリーにそっくりで、思わずまじまじと見つめてしまった。後から入ってき

          夢 ー時空を超えて 2の5ー

          夢 ー時空を超えて 2の4ー

          家で待っていると、警察官が訪ねてきた。普通にジャケットを着た、茶色い髪をした細身の白人の男性で、一緒に出かけるから支度をしなさいと言われた。 私はと言えば、泣き腫らした顔、ボサボサの髪、くたびれたスェットを着ていたので、少し待って貰って大慌てで身支度を整えた。 一緒に階下に降りて外に出ると、路上に車が停めてあり、それに乗る様に指示されたので、通りを回り込んで右側の助手席に座った。車はすぐに走り出した。 走り出して暫くすると、その警官は自分の名前を名乗り、これからニュージ

          夢 ー時空を超えて 2の4ー

          夢 ー時空を超えて 2の3ー

          何が起きているのか 瞬時には理解が出来なかった。 ジェフリー?ジェフリー? 何度か声をかける。 肩にそっと触れてみる。 ガウンを通して冷たい肌の感触が指に伝わる。 そこからどうやって外に出て、公衆電話にたどり着いたのか、1ミリも覚えていない。 気が付いたら、ダウンタウンのアパートメントにいるルームメイトに電話をしていた。自分が何を口にしているのかも良く分かっていなかった。ただただ涙と鼻水が口に入るので、むせながら、やっとの思いでジェフリーが冷たくなっている事を伝えた。

          夢 ー時空を超えて 2の3ー

          夢 ー時空を超えて 2の2ー

          その日は何となく朝から落ち着かなかった。 語学学校で同じクラスになり、その後も何となく気が合い、なにかと一緒に行動していた友人が妊娠してしまい、掻爬にいく日だった。 私達は彼女の妊娠を聞いた時思わず喜んで歓声を上げ、彼氏も産んで貰うつもり満々だった。 だが、周囲のそんな声は彼女には届いておらず、いつの間にか手術する病院を決めてきていた。 当日、彼も彼女の妹も仕事でどうしてもスケジュールがあかず、私が付き添うことになった。彼女とクィーンズにある病院に向かいながら、何でこんな

          夢 ー時空を超えて 2の2ー

          夢 ー時空を超えて 2の1ー

          1994年から2年間、私はNYにいた。最初の1年は語学学校で、その後の1年はアートスクールで、人生の夏休みの様な時間を過ごした。 他の人よりは出遅れた留学だったが、私にとっては just on time、ピッタリのタイミングだったのだと思う。 働いてお金を貯めてからの留学だったので、授業は真面目に出るし、良く勉強した。それでも日本人が多いNY、ややもすると日本人社会に取り込まれてしまうので、出来るだけ日本人社会とは距離を置いて暮らしていた。 そんな中で親しくお付き合いす

          夢 ー時空を超えて 2の1ー

          天然社長とのご縁は前世繋がり?

          1000日修行32日目 最近、色々な方とのご縁は前世繋がりではないか?と思う事がしばしばある。 例えば天然社長。彼女と私は絶対前世からのご縁があると、つくづく思うのである。 天然社長とはカンボジアでも10ヶ月ほど、日本に帰国後も既に半年一緒に暮らしている。 私はいい加減なところがあり、几帳面な人との同居には向かないと思うが(地雷が多い人には特に)、なぜか中国のパートナーと天然社長、この2人とだけは、ノー地雷、ノーストレスで楽しく暮らしている。 元々胸に抱え込んだまま思った

          天然社長とのご縁は前世繋がり?

          中国の縫製工場のお話しを少し…

          1000日修行31日目 私が経営していた中国の縫製工場のお話しを少し。 縫製工場は、大きく五部門に分けられる。 ・間接部門(生産管理/事務・経理) ・サンプル室 ・裁断場 ・縫製ライン ・まとめ 日本への輸出品を扱う工場の場合、まとめの部門が最重要となる。 まとめ部門は何をやるのかと言うと、縫い上がって来た商品の ・糸切り ・ボタン付け/ボタンホール開け ・汚れ落とし ・アイロン ・検品 ・包装 を一手に引き受ける。 特に気を入れてやらなければならないのが、検品。日本のア

          中国の縫製工場のお話しを少し…

          旧暦で生きる人たち 〜中国の旧正月〜

          1000日修行30日目 またしても旧正月ネタである。 今年の、というか来年の旧正月は2月1日で、大晦日は1月31日(当たり前か!)だ。彼らは大家族が集まる大晦日を、より大切にしている気がする。 さて。普段はブラック企業バリバリの中国の縫製工場も、年に一度の旧正月は3週間から1ヶ月近く休む。目安が、大晦日前1週間から新年15日までがラインの工員の平均的休暇で、事務職は1週間くらい短い。 皆んな出稼ぎで、しかも電車で48時間なんてところからの人もいるので、そのくらいないと行き

          旧暦で生きる人たち 〜中国の旧正月〜

          ホリスティック医学 ー今を生きるー

          1000日修行29日目 今日は「帯津養生塾」の帯津先生の講演会、そしてゲスト講師が統合医療、歯科医でもある中山先生のお話しを聴きに、宇都宮まで行ってきた。 宇都宮って遠いのね!最初新幹線で行くんだ〜って時刻表見てたら、湘南新宿ラインで行っても、料金半額で時間は30分しか違わないのを発見して、迷わず湘南新宿線にした。そうしたら、都内から2時間半かかったわ。。。遠かった…。 そして、宇都宮って餃子で有名なのね?知らなかった〜って言ったら、だてに27年日本にいなかっただけあるわ

          ホリスティック医学 ー今を生きるー

          人間関係 …地雷に注意!

          1000日修行28日目 人間関係を車間距離に例えた話しは以前書いた。そして、人間関係というより人の価値観を見抜けず、過去にかなりの地雷を私は踏んできた。 ややこしいのは、地雷の埋まり方が人によって違うという事である。 そして、国籍、文化の違いにより、この地雷の埋まり方は更に複雑さを極める。 以前香港に住んでいた時、私はイギリス人と暮らしていた。彼はイギリス人の中でもかなり面倒なやつで、小さな地雷からメガ地雷まで幅広く抱えていた。いい加減は良い加減などとうそぶいて生きている

          人間関係 …地雷に注意!