見出し画像

夢 ー時空を超えて 2の10ー

来週の火曜日はジェフリーの49日だ。
窓の外を眺め、ぼんやりと日にちを数える。

その年は雪が何度も降った。
ひどい時は気温がマイナス15度を下回った。
そんな時はたったの1ブロックが歩き通せず、地下鉄を出たらまずどこかのデリに入る、温まったら次の信号まで走る、信号近くのスーパーに飛び込み暖をとる、そしてまた走る。こんな具合でアパートにたどり着いていた。

アパートの窓は1st AV. に面していた。
雪が随分と積もった翌朝、誰かが通りの真ん中にゆき山を作った。山と言ってもせいぜい2〜3mの高さなのだが、向かい側のスタイブサントからスキーを担いできて、その山を滑り降りる人がいたりした。

そうかと思えば、半袖短パンでジョギングしている人や、ド派手なショッキングピンクのスキーウェアを着て、通りをクロスカントリーの様にスキーで歩いている人もいた。

そんな人たちを眺めながら、思考は停止した状態のままゆっくりシェリー酒を口に運ぶ。
こんな状態が良いわけもなく、でも止める事が出来ない。そうしていると、いつの間にか浅くても眠りにすんなり入って行けるから。

その晩も、いつの間にか眠っていた。

そして、、、夢を見た。。。

夢の中で私はボタニカルガーデンにいた。
そこでは、ジェフリーとジョアンナの結婚式が開かれていた。

あたりはかぐわしい花々が咲き乱れ、時に強い南国の花の匂いにむせそうになりながら、ジェフリーを探していた。
私は10歳位の少女で、髪は栗色の巻毛で、ちょうどテンプルちゃんみたいな髪型をしていた。

肌は真っ白で、同じく真っ白なレースのドレスを着ていた。どうやら私はブライズメイドの様だった。
髪に挿した花が落ちそうになり、何度も髪に手をやって直したが上手くいかず、誰か知っている人がいないかキョロキョロしていた。

そうしたら、少し先の人だかりがしている場所にジェフリーがいた。笑いながら、ジョアンナと腕を組んでいた。
私が近寄っても、一向に気付く様子も無かった。

私は寂しい気持ちになり、ブーケを胸の前に持ちながら、首を傾げてジェフリーを見つめ続けた。

やっとジェフリーが私に気付く。
そしてさざなみが広がる様な優しい笑みを浮かべた。

トモコ、こんなところにいたのかい?

そう言って彼は私の方へ屈んできて、私の耳元に唇を近づけて囁いた。

君がどこにいても
何度生まれ変わっても
僕は必ず君を見つけるよ
だから安心して
必ず見つけるから
必ずだよ

その声があまりに優しくて懐かしくて、私は頷きながら涙が止まらなくなってしまった。

…そこで目が覚めた。

あぁ、ジェフリーはいってしまった。
何故かはっきりとそう思った。

彼の魂はまだまだ近くを彷徨っているなぁと思った事は1〜2度ではきかない。
だが今回は、彼の気配はすっかり消えていた。。。

いってしまった。今度こそ本当に。

涙はまだ乾かず、胸の痛みもおさまらなかったが、私は頭を上げて彼に向かって呟いた。

約束よ
どこにいても
どんな姿をしていても
必ず私を見つけてね

何度生まれ変わっても、私はジェフリーに出会う運命なのだ。時空を超えて、2人の魂は巡り合うと約束して、何回も巡りあってきたのだ。

それは揺るがない確信となって、私の心を内側から照らし出してくるようだった。

その翌日、私はミッドタウンのトラベルエージェントに連絡をして、帰国のチケットを予約した。

私の人生の夏休みは終わろうとしていた。

                 ー完ー

この記事が参加している募集

忘れられない恋物語

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?