あかり

ソーシャルワーカー・社会福祉士として、おもに児童、女性分野で仕事をしてきました。出会っ…

あかり

ソーシャルワーカー・社会福祉士として、おもに児童、女性分野で仕事をしてきました。出会った人、できごと、本などを通して、マイノリティの人々のことを知っていただけたらと思っています。リフレッシュはコーヒータイムを楽しむこと、たくさん歩くことなど。

最近の記事

年齢による差別~エイジズム~

1.エイジズムとは 1995年に出版された「エイジズム:優遇と偏見・差別でパルモア・アードマンは、エイジズム(年齢差別)とはある年齢グループに対する否定的、肯定的偏見、ないし差別であると定義しています。 私たちは老化を何かを失っていく過程として思い描きやすく、そのためアンチエイジングが世の注目を集めています。若者にとっては「子ども扱い」されることを嫌がる傾向がこれを表していると言えます。 今回は社会の中でどのようにエイジズムが起こっているのか、そしてエイジズムをなくすた

    • 不登校の子どもたちの声が届かない現実

      1.不登校の現状 令和5年10月に文部科学省が発表した、令和4年度の調査結果では、不登校の児童数は、ここ10年連続で増加し、過去最高の299,048人になりました。※この調査で不登校とは、何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により児童生徒が登校しない、あるいはしたくともできない状況にある者としています。その数は学年が上がるにつれて多くなる傾向にあります。 このうち欠席日数が90日以上の子どもの割合は、小学校で44.6%、中学生で61.2%だそうです。不

      • 若者(ユース)のセルフアドボカシー(本人主体の権利擁護)

        日本の社会保障制度は、疾病、障がい、高齢、失業、などの社会的課題に対して「公的に助け合うしくみ」になっています。18歳までの子どもについては児童福祉法などによる支援がありますが、若者期の社会保障は薄く、若者のニーズとマッチしていないのが現状です。 生きづらさや困難をかかえる若者にとって社会保障制度がセーフティーネットの機能を果たすためには、ニーズに届くための取り組みが必要です。 若者の意見を反映した若者政策が日本で実施されるためには、どのような取り組みが必要なのか、今回は

        • 子どもアドボカシー

          子どもの権利条約では、子どもが守られる対象であるだけでなく、権利を持つ主体であるとされています。しかし、子どもは社会的に弱い立場であり、その人権は軽視されているのが現状です。 2023年4月にこども基本法が施行され、子ども家庭庁が発足しました。今後は保護される存在というだけでなく、当事者である子どもも声をあげ、意見を表明し、参画しながら課題を解決していくことを目指しています。 今回は、イギリスの子どもコミッショナーについても紹介していきます。今後日本で、どのような形で子ど

        年齢による差別~エイジズム~

          だれもが自らの意志で、選択し生きることができるように⑤当事者の声から

          施設から地域サービスへの転換をテーマに、スウェーデンをはじめとした、海外の取り組みを紹介し、日本の今後の制度、サービスのあり方について考える、シリーズ5回目になります。ご興味ある方は、①、②、③、④もご覧ください。 今回はピープルファースト東久留米が出している「知的障害者が入所施設ではなく地域で暮らすための本」当事者と支援者のためのマニュアル、から当事者の望むくらしと支援について考えてみたいと思います。この本は、2007年6月に発行されたものから増補改訂され、2010年に出

          だれもが自らの意志で、選択し生きることができるように⑤当事者の声から

          だれもが自らの意志で、選択し生きることができるように④当事者視点での支援

          施設から地域サービスへの転換をテーマに、スウェーデンをはじめとした、海外の取り組みを紹介し、日本の今後の制度、サービスのあり方について考える、シリーズ4回目になります。興味ある方は、①、②、③もご覧ください。 1.レッテルをはられることの影響社会では、障がいを持つことは否定的に受けとめられ、知的障がいとレッテルをはられた人々は、社会から隔離されがちで、ともすれば忘れ去られてしまうことも多いと言えます。そして、こうした環境の中で個人の尊厳の侵害さえ起こってしまう現実があるので

          だれもが自らの意志で、選択し生きることができるように④当事者視点での支援

          だれもが自らの意志で、選択し生きることができるように③セルフアドボカシー

          施設から地域サービスへの転換をテーマに、スウェーデンをはじめとした、海外の取り組みを紹介し、日本の今後の制度、サービスのあり方について考える、シリーズ3回目になります。興味ある方は、①、②もご覧ください。 今回は、当事者によるセルフ・アドボカシー活動(自ら権利を獲得し、擁護する力を与えられること〈エンパワーメント〉)について取り上げていきます。すでに、日本でも活動している、ピープルファーストは、アメリカとカナダでその活動をスタートしました。現地でどのように政策や地域サービス

          だれもが自らの意志で、選択し生きることができるように③セルフアドボカシー

          だれもが自らの意志で、選択し生きることができるように②スウェーデンの知的障がい支援

          前回、スウェーデンにおける、施設から地域サービスへの転換の経過をたどりながら、日本の制度の今後について書きました。ご興味のある方は、以下をご覧ください。 今回は、自己決定、自立した生活という面で最も困難な状況にある知的障がいのある人々のために、スウェーデンでどのような施策、地域生活支援が具体的に行われてきたかについて、また、当事者運動についても記していきます。 1.知的障がいのある人に関するスウェーデンの法律 1982年の「社会サービス法」が施行され、個人の自己決定やプラ

          だれもが自らの意志で、選択し生きることができるように②スウェーデンの知的障がい支援

          だれもが自らの意志で、選択し生きることができるように①スウェーデンに学ぶ施設から地域への移行

          長く福祉の分野で仕事をしてきました。すでにある福祉のシステムの中で、利用する人たちのために、できることをと、力を尽くしてきたつもりですが、現実には、システムに課題を感じることもありました。 今回は施設福祉と地域サービスをテーマに、書いていきたいと思います。現在の日本の福祉システムの中では、本人が望み、地域で自分自身で生活したい、と思っても実現できない場合も多いのが現状です。 実現のためには、地域でのサポートシステムが十分に整備されることが不可欠ですが、地域での福祉システム

          だれもが自らの意志で、選択し生きることができるように①スウェーデンに学ぶ施設から地域への移行

          病気や障がいを持つ子どもと家族を描いた絵本

          病気や障がいを持つ子ども、家族の背景は様々です。治療、入院中の困難はもちろん、病気によって子どもを失うことの悲しみは、周囲の人々の想像を超えています。 それでも、その子と家族の歩んだ日々が、私たちに大切な何かを語りかけ、時に教えてくれることもあります。受け取る中身は本当に、人さまざまだと思いますが。今回紹介する2冊の絵本、「はしれ江ノ電ひかりのなかへ」と「6さいのおよめさん」は、そうした子どもたちと家族を描いた絵本です。 読みすすめるうちに、悲しみがあふれてくるのですが

          病気や障がいを持つ子どもと家族を描いた絵本

          医療における子どもの権利と子どもを支えるスペシャリスト

          前回、障がいや病気のある子どものきょうだい児について書きました(以下、前回の投稿を載せますので、ご興味のある方はご覧ください)。海外では入院中の子どもの心のケアのため、様々なスぺシャリスト(専門職)がおり、日本の子ども病院でも、導入が進んでいます。こちらは入院中の子どもだけでなく、きょうだい児、両親についてもケアの対象という視点で関わります。また、国内では病棟保育士が小児医療における保育を支えてきた背景から、医療保育専門士という資格も生まれました。こうした専門職は、病院の多職

          医療における子どもの権利と子どもを支えるスペシャリスト

          障がいや病気のある子どものきょうだい児のそだち

          「きょうだい児」とは障がい、または病気のある子どもたちの兄弟姉妹のことを示す言葉です。 きょうだい児は、ライフステージに応じて困難や葛藤に出会うとされています。一方で家族に障がいのあることを良い経験と感じたり、人生に満足していると感じる人がいるのも事実です。今回は彼らの抱える葛藤や、必要な支援について書いていきたいと思います。 1.障がいのある子が生まれた時の家族のきもち 生まれた子どもに障がいがあるとわかった時、ほとんどの親御さんは混乱するでしょう。障がいについての情報

          障がいや病気のある子どものきょうだい児のそだち

          カフェ色々~みるカフェ~

          2025年11月15日に、日本で初めてのデフリンピックが開催予定です。デフリンピックは聴覚障がいを持つ人のための国際スポーツ大会で、オリンピック、スぺシャルオリンピック、パラリンピックとともに国際オリンピック委員会で認められた大会です。デフリンピックについては、詳しく書いたものがありますので、以下をご覧ください。 デフリンピックを2年後にひかえ、11月15日~26日まで期間限定でデジタル技術を活用して、言葉を見える化し、コミュニケーションをとることができる「みるカフェ」を東

          カフェ色々~みるカフェ~

          カフェ色々~スターバックス サイニングストア~

          スターバックスは様々な社会貢献のための取り組みをしていることで知られています。今回は国立にある、スターバックス サイニングストアでの体験とともにに、障がいを持つ人々のための雇用政策についてつづっていきます 1. スターバックス サイニングストアについてJR国立駅の中央改札を抜けた、すぐ先のnonowa国立の入り口にスターバックス サイニングストアはあります。間仕切りのないオープンなフロアは窓からふりそそぐ光を前面に取り入れて、とても明るい雰囲気でした。 この店舗は、202

          カフェ色々~スターバックス サイニングストア~

          映画「月」を見て思うこと

          先日、気になっていた映画「月」を見る機会がありました。原作の題材となった、やまゆり園事件があまりにも残酷で、躊躇していたのですが、誘われて見に行く流れになりました。 舞台は障がい者施設、そこで入所者の大量殺人事件が起こります。殺人を犯した人物は「意思疎通のできない人間」には価値がないと語ります。 実際の事件では、被告が衆議院議長にあてた手紙の中に、家庭内での生活、社会的活動が困難な重複障害者の安楽死が自分の目標だ、と書かれていたそうです。被告がヒトラーの思想について語って

          映画「月」を見て思うこと

          人と犬の深い深い関係

          人と犬との歴史は、約1万年前にさかのぼるといわれています。この間初めは、猟犬、護衛犬として、その後は軍用犬、作業犬、牧畜・牧羊犬、ペットとして人間と良い関係を築き、パートナーとも言える存在になりました。 今回は、心理、福祉分野で大切な役割を担う、犬たちについて記していきます。特に、盲導犬、聴導犬、介助犬は補助犬と呼ばれ、身体障害者補助犬法に基づき訓練・認定された犬のみが、法に基づく表示をつけることが許されています。 そして、電車に乗る際、駅を利用したり、銀行、郵便局、ホテ

          人と犬の深い深い関係