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アイヌ民族の歴史に思いをはせる③  ~子どもも大人もアイヌ文化について知ることができる本とサイト~


前回、前々回とアイヌ民族の歴史について、そして、ウポポイ(民族共生象徴空間)について記してきました。関心のある方は以下もご覧いただけるとうれしいです。

今回はいにしえのアイヌ民族の人々の生活、文化について知ることができる絵本をご紹介します。自然の恵み、生活に必要な様々な道具までにも神が宿ると信じ、あがめ、感謝をささげる人々の日々の生活、大切に守ってきた言葉や文化などの一端を知ることができます。

彼らの生活空間に引き込まれてしまったような錯覚に陥るのは、美しく、時に神秘的な絵の数々のおかげだと感じます。ぜひ手に取っていただきたく、ご紹介します。

1.ユキエとくま

この本は後世にアイヌ文化を伝えた、知里幸恵さんの生涯をもとにした物語で、イタリアで生み出されました。

熊送り(くまの魂を神の国へ送り返す祭り)の晩にユキエはうまれました。フチ(おばあさん)がふくろうの声色をまねて歌います。「シロカニぺ ランラン ピㇱカン コンカニペ ランラン ピㇱカン」

6さいになり、ユキエは、とうさんかあさんとはなれ、フチとおばさんといっしょにくらすことになりました。その家では、耳飾り、首飾り、刺繡糸が織りなす線など、すべてのものに物語がありました。

学校へ行くと、教室では「アイヌ!アイヌ!」とはやしたてられました。学校では、だれもが日本語を話し、ユキエも文字を書き、読み、話すようになりました。

ある日、東京から「あなたがたの物語をぜひ、きかせていただけませんか」と一人の男の人が訪ねてきました。そして、歌声がやむ前に、文字として書きとめたい。ぜひてつだってほしいと問われます。アイヌの言葉は口から口へと伝わり、生きのび、村にアイヌの言葉を書く人は誰もいませんでした。

それからは昼も夜もやすむことなく手を動かし、風の言葉をひとつひとつ、文字に移し替えていったのです。

フチ(おばあさん)はユキエのために野ウサギ、かえる、おおかみの声色で歌うこともありました。熊送りの日に生まれた、ユキエの生活の中には、ときおりクマが現れ、ユキエがクマと心を通わせる場面はとても幻想的です。

本に登場する来客の男性は、言語・民族学者の金田一京助氏だそうです。知里幸恵さんは祖母の歌を、まずは音をローマ字であらわし、日本語の訳を書きたしていきました。上京後、金田一氏のもとで、最初のアイヌの神の物語(神謡)を神謡集にまとめ、その晩、持病の心臓病のために19歳で亡くなったそうです。彼女の熱意でアイヌ神謡は現代に読みつがれています。

2.パヨカカムイ ユカㇻで村をすくったアイヌのはなし

村はずれに住むアイヌの男は、狩りが下手でした。しかし村のだれよりもユカㇻ(少年英雄物語)がじょうずで子どもたちにかたって聞かせていました。

ある日、妻から聞いて、川岸に行くと、タクッペ(やちぼうずのこと)のようなばけものが水の中にゆらゆら立っています。病気をまきちらす神、パヨヨカムイにちがいないと、神さまにおそなえをし、遠い国に行って自分の新しい国をおつくりください、というと、パヨヨカムイは空高く、どこかへとびさりました。

その夜、ゆめのなかにパヨヨカムイが現れ、「ユカㇻを聞かせてもらったおれいに、たばこいれをあげよう、病気がはやったらこれをお日さまにかざしなさい」と言います。目がさめると、手にはほんとうにたばこいれがありました。

パヨヨカムイに言われたとおりに、夜あけをまち、村長のところへはしり、話をすると村長は「まずしくても、よいこころをもっていれば、神さまが見てくれていた。おまえのユカㇻが村の人たちをすくったのだ」となみだをながしてよろこびました。

絵本の最後には「ユカㇻ」についてさらに詳しく説明が加えられています。作者の萱野さんのいうところの、アイヌの精神文化を知る機会として、ぜひご覧いただきたい一冊です。

3.伝え守る アイヌ三世代の物語

北海道生まれのアイヌ民族ひろ子さんとその子どもで大阪生まれ、大阪育ちのダイキとワカナの物語です。ひろ子さんはアイヌ語の歌を歌ったり、アイヌ料理を通してアイヌ文化を伝える活動をしています。

北海道に住むじいじは民族伝統の木彫りの作品を作る仕事をしています。じいじと過ごす時間の中で、2人は自然の恵みをいただいて、自然とともにくらすアイヌの人たちの知恵を受け継いでいます。

親子はのちに、北海道に移住することを決めます。山には着物の布を織るための繊維になるオヒョウやイラクサなどの植物、糸や布を染めるための草木やアイヌ料理の材料も自生しています。

ひろ子さんは子どものころに近所のおばあさんからアイヌの歌や踊りを教わりました。その踊りをダイキが生まれ育った大阪で疲労することになりました。ワカナは歌を歌います。ひろ子さんは2人の成長を頼もしく思っています。

こちらは絵本でなく、数々の写真によって、現代を生きるアイヌ民族の人々が生活の中で、そして社会でどのように文化を継承しているのかを知ることのできる一冊になっています。ひろ子さんやそのご家族の自身の文化への誇り、継承への強い思いを感じとることができます。

4.公益財団法人アイヌ民族文化財団のキッズページ

こちらはオンラインで読むことのできる絵本、パズル・クイズなどのチャレンジコーナー、ぬりえ、クロスワードなど子どもたちが楽しみながら、アイヌ文化を知ることのできます。

https://www.ff-ainu.or.jp/tale/index.html


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