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障がいや病気のある子どものきょうだい児のそだち

「きょうだい児」とは障がい、または病気のある子どもたちの兄弟姉妹のことを示す言葉です。

きょうだい児は、ライフステージに応じて困難や葛藤に出会うとされています。一方で家族に障がいのあることを良い経験と感じたり、人生に満足していると感じる人がいるのも事実です。今回は彼らの抱える葛藤や、必要な支援について書いていきたいと思います。


1.障がいのある子が生まれた時の家族のきもち


生まれた子どもに障がいがあるとわかった時、ほとんどの親御さんは混乱するでしょう。障がいについての情報が十分にないことが不安につながり、障がいが社会的にネガティブにとらえられているために、子どもの将来、そして家族の将来がどのようになっていくのか、希望を持つことが難しい時期があるかもしれません。こうした、両親の不安、葛藤を間近に感じながら、その影響を受けながら、きょうだい児は育ちます。

2.きょうだい児の愛着形成


下の子が障がいをもって生まれた場合には、年が離れていれば特に、上の子は、両親の愛情を一手に受けてきた期間に、愛着をはぐくむことができ、寂しさや不安を感じた時には、両親に伝えることもできるかと思います。

しかし、子どもですから、母親を取られてしまった気持ちがしたり、甘えたかったりして、泣いたりしてアピールすることもあるでしょう。

一方で障がいを持った子の、下に生まれたきょうだい児は、上の子を中心とした生活が家族の中ですでに出来上がっていること、上の子ほど手がかからないと見られ、おばあちゃんなどに預けられることも多く、愛着を形成することが難しい場合が多いようです。

またついつい我慢してしまう傾向があり、わがままも言えず、親に本当の気持ちが伝わらないまま成長してしまうことも少なくないのです。思春期になって、態度が一変して両親のほうが驚いてしまうということも、めずらしくありません。

さらに、両親もきょうだい児も、親戚、友人、近隣の人々を含む社会において、他者から偏見の目で見られたり、葛藤を抱える関係性になってしまうことも、しばしば生じます。

両親にしてみれば、子育ての大変さに加え、周囲との様々な緊張、葛藤という負荷が加われば、疲れ果ててしまう。そしてこうした家族の疲弊の中で、きょうだい児もネガティブな影響を受けざるをえない現状があるのです。

3.家族が機能不全状態になっておこること


障がいのある子どもが生まれたことが、そのまま家族の機能不全につながることはありません。この出来事によって、家族が混乱したり、家族間、周囲との関係で葛藤を抱えた状態が続いていく中で、このような状況が起こってきます。

そのような中で子どもにどのように影響が出るのか、吉川かおりさんは著書の中で以下のような例をあげています。

・ふれあう・だっこしてもらう体験が得られにくい。話をきいてもらえない
・父母、祖父母が、子の障がいをめぐって緊張関係にある。そのため、双方の感情、会話の橋渡し役や、緊張状態をやわらげるためのつなぎ役をしねければならない
・親が忙しい時に、「おなかがすいた」「遊んで」などと感情をストレートに表現した時に、わがまま、自分勝手ととられてしまう。
・障害のある兄弟のパニックやある行動が、きょうだい児にとって、家庭内の安心・安全を脅かしてしまうことになる
・家事の手伝いをきょうだい児だけがする、障がいを持つ子は許されるが、きょうだい児は許されないという不平等なルールがある
・他者の視線を過度に気にして、障がいのある子がいることで不幸だと思われたくないと、あえて明るく振舞ったり、障がいのことを周囲に隠そうとする
・きょうだい児が、母親のストレスの聞き役になる、または障がいをもつ兄弟の世話をする役割をになう
・両親が疲れ果てていたり、悩んでいたりすることで、子どもがのびのびできない。
・障がいを持つ兄弟や両親を支えるため、進路、結婚などで、自分の希望をあきらめたり、ケアができなくなることで罪悪感を抱いたりする。

4.きょうだい児、両親に必要なケア


このような状況の中で、思春期や大人になって、生きづらさを感じるきょうだい児も少なくないといいます。

一方で、両親もまた、将来への不安、周囲への気遣い、きょうだい児の心配をしつつ何もできない自分を責める、自分の時間、趣味や娯楽を楽しむこともできないまま、必死で介護を続けているという現状もあるのです。

障がいのある子どもたちへの支援に加えて、家族のサポートというのが非常に大切だということを支援にかかわる人々が認識し、両親、きょうだい児のレスパイトケア(休息のためのケア)、精神的なサポート、両親、きょうだい児がそれぞれ集い、気持ちを分かちあえる場などが必要です。

5.きょうだい児の気持ちを描いた絵本

★ぼくのにいに


amazon HPより

庄司あいか著

にいにはしゃべれないし、歩けない、赤ちゃんにいに。でも泣いたらよしよししてあげる。

お出かけの時には、にいにを見た人から「かわいそう」と言われ、ぼくはどうしてかな?と疑問に思う。

にいにが入院して、ママがいなくなり、ぼくは「にいになんて、死んじゃえ」と思った。でも退院して、ホッとした。そしてママに抱きしめてもらってうれしいと思った。

著者の庄司あいかさんが、ご自分の家庭をモデルに書いた絵本です。きょうだい児のきもち、日常の一コマが正直に描かれています。

しょうじさんは、あとがきで、きょうだい児が苦しむのは「周囲の偏見に気づいたとき」だと書いておられます。そして「ただありのまま」を受け入れられる社会になるといいなと語ります。

また、きょうだい児へは愛情を言葉と態度で伝え続ければ、愛情不足も補うことができる。きょうだい児がひどい言葉を言ったときには何も言わずに受け止め、寄り添ってほしいと話しています。

障がいを持つ子を育てている両親、きょうだい児、そして、関心のあるすべての方へぜひ、読んでいただきたい一冊です。


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