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不登校の子どもたちの声が届かない現実


1.不登校の現状


令和5年10月に文部科学省が発表した、令和4年度の調査結果では、不登校の児童数は、ここ10年連続で増加し、過去最高の299,048人になりました。※この調査で不登校とは、何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により児童生徒が登校しない、あるいはしたくともできない状況にある者としています。その数は学年が上がるにつれて多くなる傾向にあります。

このうち欠席日数が90日以上の子どもの割合は、小学校で44.6%、中学生で61.2%だそうです。不登校至る状況について、もっとも割合の高かった3つの要因は以下のようになっています。

【小学校】
①無気力・不安 (50.9%)
②生活リズムの乱れ、あそび、非行 (12.6%)
③親子の関わり方 (12.1%)

【中学生】
①無気力・不安 (52.2%)
②生活リズムの乱れ、あそび、非行 (10.7%)
③いじめを除く友人関係をめぐる問題 (10.6%)

この調査の回答は学校が行っており、当事者の子どもたちの本音がどこまで反映されているかは、見えません。本当の理由を親にも学校にも話せないという場合もあり、実態は不明です。

実際、今年3月25日に公表された、文部科学省の委託調査で、上記の調査で不登校として報告された、子ども、保護者、教師に不登校になったきっかけについて、改めて調査したところ、認識の差が浮きぼりになりました。以下がその調査結果です。

文部科学省委託事業 不登校の要因分析に関する調査研究報告

調査結果で特に教師と児童生徒で結果の差異が大きかったのは、いじめ被害、教職員への反抗・反発、教職員とのトラブル、𠮟責等で、子ども、保護者が教職員、学校に伝えられない、学校が生徒の状況を把握、理解できていないという現状が見えます。

保護者と児童生徒の間での差異が少ないのが、せめてもの救いです。子どもたちが少なくとも家庭内では話ができているケースが多いといえるかもしれません。

不登校の小中学生のうち、学校内外での相談・指導のサポートを受けていない子どもは114,217人で、全体の38.2%にあたります。相談機関や学校外での学びの場についての情報が届くための取り組み、また学びの継続のために、相談とともに子どもたちの状況に応じて、学びの場、居場所につなぐ支援が必要です。

2.文部科学省「COCOLOプラン」

昨年3月、誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対「COCOLOプラン」が発表されました。概要は以下のようになっています。

①学びの多様化学校をすべての都道府県、政令指定都市に設置すること、また居住地によらず通えるよう分教室型も含め全国に300校することを目指す
②校内にもスペシャルサポートルームなどの校内教育支援センターを設置することを各校に求める
③自宅でのリモート授業の受講なども出席扱いとし、成績評価にも反映する
④いじめや教員による暴力、不適切指導などが理由の場合は学級替えや転校の方法も活用すること

3.不登校の子どもたちのための様々な学びの場所

①学びの多様化学校

学びの多様化学校は、不登校の子どもたちに配慮した教育を行う場として設置され、学びたいと思ったときにつながれるよう転入を受け入れたり、個別の配慮がなされています。授業時間数が学習指導要領にとらわれないこと、リモートでの授業参加もOKであること、また、各学校によって様々な個性があることなどが特長です。

令和6年現在、全国で35校(公立21校、私立14校)の学びの多様化学校が設置されており、分教室型も含めて今後も全国に設置される予定です。

②校内教育支援センター(スペシャルサポートルームなど)

登校しても教室に入りづらい子どもたちへの支援の場として、学校内で落ち着いて、勉強・生活ができる環境を整えるとされています。いじめや友人、教職員とのトラブルがあった場合などは、学校の場そのものがストレスとなる可能性もあり、この点は配慮が必要です。

③教育支援センター

教育支援センターは、自治体により設置されており、教育相談や不登校の子どもたちへ居場所や学習支援の場を提供しています。(自治体によっては設置のないところもあります)

④多様な学びの場・居場所

この他、民間によるフリースクールなどが、全国各地にあり、学習活動、教育相談、体験活動などの活動を行っています。

また、夜の時間帯になりますが、夜間中学も学びや居場所の一つです。現在17都道府県に44校が設置されており、様々なバックグラウンド(年齢、国籍)を持つ人たちが学んでいます。

これまでの学校の形にとらわれない、リモートでの学びも含めた、様々な選択肢、が増えることで、自分に合った場が見つけやすくなることを願います。

もちろん、それぞれのペースがあるのですから、焦ることはありません。

4.子どものたちに向けて、そして子どもたちを理解する助けになる絵本

①わたしのココロはわたしのもの:-不登校って言わないで(子どもの気持ちを知る絵本①)

ミクは、ある日教室で、笑わないとおいていかれる、息が苦しいと感じます。ママにも話すことができないまま、いつしか体が重く感じるようになり、もうがんばれない、と学校を休みました。

ママを心配させるダメな子と自分を責め、どこか遠くに行きたいと思うようになります。

パパが病院に行こうと言い出したことで、私は病気じゃない、そっとしておいてと心を閉ざしてしまいます。

その後、おばあちゃんの訪問や、ママから「ミクのペースで大丈夫」といわれたことで、ほっとして少しずつ変化していきます。

学校にいけなくなる理由はそれぞれ、そして心の中の思いは、みな違っていますが、共感できる部分もあるのではないでしょうか。

②きみを守る「こども基本法」ー1

この本は学校にいけない子どもたちへ様々なメッセージを届けています。

一つは、不登校になる子どもたちの背景や気持ちについてわかりやすく伝えているところです。成長するにつれ、「周りと合わせることが苦しくなったり、自分と他人の違いに敏感になる」「自分の意見を持つようになると親や先生と意見がぶつかるようになる」など、このことは実はごく自然に起こることであり、また喜ばしい成長の兆しとも取れ、けっしてネガティブにとらえなくてよいのだと思わせてくれます。もちろん、前出の”わたしのココロはわたしのもの”と同様に、学校にいけない間の子どもたちの気持ちについても触れられています。

もう一つの特徴は、子どもの権利についてわかりやすく記されていることです。子どもにも大人と同様に人権があり、年齢に応じた配慮や保護が必要で、これを保障するために子どもの権利条約が定められています。

子ども基本法では子ども施策について、国や自治体が子ども、また子どもを養育する人々、関係者の意見を反映させることが定められています。子どもたちが自らの権利を知り、意見を言うことができ、そしてそのためにどのような方法があるかを知ることができる機会が、今後はとても大切になると思います。

子ども基本法については、子ども家庭庁が子どもも理解できるようにリーフレットを出していますので、こちらもぜひ、ご覧になってみてください。








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