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ヤングケアラーについて知る①


ヤングケアラー(家事や家族の世話などを日常的に行っているこども)への支援の強化を盛り込んだ、改正子ども・若者育成支援推進法が6月5日の参院本会議で可決、成立しました。今後は、国や自治体が18歳以上の若者も含めたヤングケアラー支援に努めていくこととなります。

ヤングケアラーについて知る①では、ヤングケアラーの定義、成長過程で起こる影響について、また2020年度、2021年度に国が行った調査から、こうした子ども、若者がどのような状況にあるかについて記していきたいと思います。

1.ヤングケアラーとは

子ども家庭庁の示す、ヤングケアラーとは、「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」で、具体的な「家事や家族の世話」は以下のように示されています。

・障がいや病気の家族に代わり家事をしている
・家族に代わり幼いきょうだいの世話をしている
・障がいのあるきょうだいの世話をしている
・目を離せない家族の見守りなどをしている
・日本語が第1言語でない家族や障がいのある家族のために通訳をしている
・障がいや病気のある家族の家計を支えるために労働している
・アルコール、薬物、ギャンブル問題を抱える家族に対応している
・がん、難病、精神疾患等慢性的な病気の家族を看病している
・障がいや病気のある家族の身の回りの世話、トイレや入浴の介助をしている

日本ケアラー連盟のホームページによれば、そのなかでヤングケアラーとは「家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケアの責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている、18歳未満の子ども」のことをいうとあります。

さらに、18歳~おおむね30歳代までのケアラーのことを若者ケアラーと定義づけ、若者ケアラーはヤングケアラーにくらべ、ケアの責任が重くなることがあり、また進学や就職への影響、仕事と介護の両立など、この世代特有の課題が生じると記しています。

2.ヤングケアラーにとっての課題

ヤングケアラーを社会的に支援する必要があると、世界で初めて論文発表したのは、イギリス、ケンブリッジ大学のソール・ベッカー教授で、ケアの子どもへの影響については、以下のように語っています。

・社会とつながる機会や友人関係をはぐくむ機会の制限
・余暇活動の制限
・感情面の問題

 ケアの精神的な影響については、「ヤングケアラー的役割を有する子どもの家族関係と精神的健康の関連ーケア役割、母の養育態度、きょうだい関係に着目して」(九州大学大学院:藤田由起・遠矢浩一)の中で、調査とその結果への考察の中で、以下のように記されています。

・自身の不安や葛藤を抑圧しながら家族のケアに向き合うことで、責任を背負い込む状況になりやすい
・精神的問題を抱える母親のケアを担う子どもについて、母親の下で拘束される窮屈さを感じ、母親に母親らしくふるまうことを求めて葛藤を抱きやすくなる
・きょうだい児は、友人関係構築の際に、きょうだいの世話と友人関係の間で葛藤を抱え、周囲からの兄弟の障がいに対する態度に敏感になる

3.国の調査結果から

厚生労働省は2020年に全国の中高生、2021年に全国の小学6年生、大学生を対象にそれぞれ調査を行いました。その結果について見ていきたいとおもいます。

①ヤングケアラーの数について

全体で「家族の中にあなたがお世話をしている人はいますか」という質問に、はいと答えた人の割合は以下のとおりでした。

小学6年生 6.5%(15人に1人)
中学2年生 5.7%(17人に1人)
全日制高校2年生 4.1%(24人に1人)
定時制高校2年生 8.5%(12人に1人)
通信制高校性 11%(9人に1人)
大学3年生 6.2%(16人に1人)

②ケアをしている相手について

・きょうだいをケアしているのは
小学生 71%
中学生 61.8%
高校生 44.3%

きょうだいの状況としては、最も多かったのが「幼い」という回答でした。一方、定時制・通信制高校生の場合、知的障がい、精神疾患、依存症を抱えるきょうだいをケアする割合が高い傾向にあります。

・父母をケアしているのは
小学生 母親:19.8% 父親:13.2%
中学生 父母:23.5%
高校生 父母:22.4%

父母の状態について、中高生の回答で最も多かったのは身体障がい、続いて精神疾患・依存症でした。

・祖父母をケアしているのは
小学生 祖母:10.3% 祖父:5.5%
中学生 祖父母:14.7%
高校生 祖父母:22.5%

祖父母の状態については、多いものから「高齢」「介護」「認知症」の順でした。

世話をしている人の状況について見てみると、「わからない」という回答をした人は、中高生では0%でしたが、小学生の場合、どの対象の場合も、8.5%~33.3%となっており、理由や状況があいまいなまま、戸惑いや混乱の中でケアをしていることが、うかがえる内容になっています。

③ケアの内容について

・小学生は、多い順に、見守り→きょうだいのお世話や送り迎え→家事(食事の準備、掃除、洗濯)→入浴やトイレのお世話となっています。

・中学生は、多い順に、見守り→家事(食事の準備、掃除、洗濯)→きょうだいの世話や送迎→外出の付き添い、感情面のサポートとなっています。

・高校生は、多い順に、家事(食事の準備、掃除、洗濯)→見守り→きょうだいの世話や送迎→感情面のサポートとなっています。

中高生になると、家事(食事の準備、掃除、洗濯)の負担が増えていることが分かります。年齢があがり、できることが増えていくにつれ、担うケアの種類、負担が増えていくという現状が見えてきます。

④ケアにどのぐらいの時間を費やしているか?


・小中学生とも、ケアに費やす日にちは、半数以上がほぼ毎日と答えています。
・1日あたり、ケアにかける時間の平均は、小学生が2.9時間、中学生が4.0時間、高校生が3.8時間となっていました。

学校に通っていることを考えると、登下校前後の休息や自由に過ごすことのできる時間が非常に限られてしまう現状が見えてきます。

次回は国や自治体の支援策、また、学校や地域の機関、そして地域の市民としての私たちにどのようなことができるのかについて書いていきたいと思います。

※参考文献
・「ヤングケアラー的役割を有する子どもの家族関係と精神的健康の関連ーケア役割、母の養育態度、きょうだい関係に着目して」
(九州大学大学院:藤田由起・遠矢浩一)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/tokkyou/59/4/59_223/_pdf/-char/ja

・図解ポケットヤングケアラーがよくわかる本 飯島章太著 秀和システム




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