マガジンのカバー画像

パン職人の修造 101話〜149話 江川と修造シリーズ

47
独立して江川と店を始める修造。パン職人として、経営者として、一家の主人として。頑張れ修造。
運営しているクリエイター

#イラスト付き小説

パン職人の修造122  江川と修造シリーズ 満点星揺れて

パン職人の修造122 江川と修造シリーズ 満点星揺れて

その日の夕方、誰もいない駐車場で修造はヌンチャクの練習をしていた。

もうすぐ試合なのにあまり練習してないので焦る。

それを見て大坂が飛んで走って来た。

「修造さん、俺も昔空手やってたんです」

「そうなの?」

修造達は急に組み手を始めた。

蹴りを肘で受け止めたり、突きを鉄槌で落として防いだりしてるのを見て、パン粉と安芸川は「ケンカ?ではないですよね?楽しそうに見えます。あははって笑ってま

もっとみる
パン職人の修造121 江川と修造シリーズ 満点星揺れて

パン職人の修造121 江川と修造シリーズ 満点星揺れて

東南商店街にある由梨の両親が経営している着物屋『花装(はなそう)』では、明日の浴衣イベントに参加する為に準備で大忙しだった。

東南駅からは随分離れた大きな街の南会館という所で着物屋が集まって行う『夏の大浴衣市』があるのだ。

由梨もこの日はパンロンドを休んで、浴衣を着て手伝いに行く事になっている。

父親と由梨は車に着物やら小物やら展示用のグッズを沢山乗せて前日準備に出かけた。

「あ、ここはリ

もっとみる
パン職人の修造120 江川と修造シリーズ 満点星揺れて

パン職人の修造120 江川と修造シリーズ 満点星揺れて

ここは笹目駅から少し離れたリーベンアンドブロート

その工房で江川は修造の例の謎のハナウタを久しぶりに聴いた。

おそらくドイツの曲なんだろう。

グーググーグーグーと聞こえてくる。

大坂がパンを焼きながら「これなんの音かなあ」と言っている。

修造は世界大会の技術を駆使してパンスペシオ風の一升パンを作っていた。
息子の為の力作だ。

ああ〜

大地!

もう一歳だ!早いなあ。

ずっとずっと可

もっとみる
パン職人の修造119 江川と修造シリーズ ロストポジション  トゲトゲする空間

パン職人の修造119 江川と修造シリーズ ロストポジション  トゲトゲする空間

それを聞いていた立花が説明する。

「昇進や昇格試験の時に速さを競う所もあるのよ。包餡やドーナツとかパンの成形とか、どちらが早くて綺麗か。和鍵さん、何にする?あなたの得意な事で良いって」

こないだまで味方だった人達はもうとっくに辞めてしまっていない。和鍵の吹き込みのせいで職場の印象が悪くなったのだから。

和鍵は周りのものに助けを求めた。

「こんなの急に言われても出来っこないわよね。無茶言うわ

もっとみる
パン職人の修造118  江川と修造シリーズ ロストポジション  トゲトゲする空間

パン職人の修造118 江川と修造シリーズ ロストポジション  トゲトゲする空間

「那須田シェフ!」

「開店おめでとう修造君」
急に憧れのシェフ那須田が現れて驚いた。

「ありがとうございます」

「そろそろキテると思ってね、やってみると色々大変なことばかりだろう?」

「はい」

「誰でも通る道なのさ。今日は手伝いに来たんだよ、以前手伝って貰ったお返しにね」

「その節は勉強になりました」

修造は今の職場の状態を話しながら仕事をして、那須田は慣れた手つきでクロワッサンの成

もっとみる
パン職人の修造117  江川と修造シリーズ ロストポジション  トゲトゲする空間

パン職人の修造117 江川と修造シリーズ ロストポジション  トゲトゲする空間

その頃

岡田と修造は事務所で話していた。

最近の岡田への信頼は著しい。

岡田は「こんなものを見つけました」と言ってマーケットプレイスの画面を見せた。

「このリボンをよく見てください、グリーンの」

「え?」なんだか見覚えのあるドリップバッグをガン見する。

「あ!うちのリボンじゃないか!このまま売るなんて雑な事するなあ」

「いい様にされてますね」

「だらしなくて恥ずかしいよ全く」

2

もっとみる
パン職人の修造116 江川と修造シリーズ ロストポジション  トゲトゲする空間

パン職人の修造116 江川と修造シリーズ ロストポジション  トゲトゲする空間

「こんな風に映ってるんですね」

「結構映像がはっきりしてますね」

「うん」

「音は出ないんですか?」

「聞こえないな」

「ふーん」姉岡がそういった。

そんな時黒い噂と言うか、変なものを中谷が見せてきた。

「これ見て下さい」中谷のスマートフォンを覗いて店の評価が載ってるサイトの細かい文字列を読んだ。

「あ!」

『リーベンアンドブロートのシェフって奥さんと生まれたての子を置いて外国に

もっとみる
パン職人の修造115  江川と修造シリーズ ロストポジション  トゲトゲする空間

パン職人の修造115 江川と修造シリーズ ロストポジション  トゲトゲする空間

夕方

ゴルフで散々だった修造ががっくりして戻って来た。

工房には江川の姿はなく、他の者が明日の準備をしていた。

「あれ?江川は?」

和鍵が答えた「江川さんなら誰にも挨拶なしで帰っちゃいました」

「えっ、そんな奴じゃないのになあ」

「そうですかね」呆れた様に言う和鍵の言葉に不安がよぎる。

廊下で何度も電話をかけた「でない」

修造は裏口の方を見ながら後悔した。

今日呑気にゴルフに行く

もっとみる
パン職人の修造114 江川と修造シリーズ ロストポジション  トゲトゲする空間

パン職人の修造114 江川と修造シリーズ ロストポジション  トゲトゲする空間

岡田は何枚かA4の紙を渡してきた。

「以前言っていた商品がなくなる件ですが、状態は変わっていません」

「うわ、トータルすると相当な金額だな。こんなにどうするんだろう」

「それで」岡田と中谷は顔を見合わせて頷いて「どうもお客さんじゃないんじゃないのかと」と言った。「レジ閉め後に数を数えて、試しに開店前に数えたら前夜と数が違うんです」

「えっ、てことは」修造は全員の顔を順に思い出していった。

もっとみる