経済・ビジネスに関心がある人の大学選び(志望学部を絞れない人向け)
経済やビジネスに関心があって、大学でもそうしたことを学びたいという人は、どのような学部を選ぶでしょうか。乱暴に結論付ければ、経済に関心があれば経済学部、ビジネスに関心があれば経営学部や商学部、ということになるでしょう。
※経営学部と商学部は中身は(一部の大学を除き)同じであると理解して問題ありません。以下を参照してください。
経済学と経営学・商学の違いは?:NHK高校講座を例に解説|正力綾士 (note.com)
ところが、現実はそう単純でしょうか。
経済学と経営学(あるいは商学)の違いを正確に理解している高校生はどれくらいいるでしょうか。または、自分の関心が経済にあるのか、ビジネスにあるのか、判別できているでしょうか。
大学に入って学んでみて、やっとこれらが分かった、という人が少なくないのが実情です。特に、経済学がどのような学問なのかは高校生には正確に理解されていないので、実態とは異なる誤解に基づいて経済学を敬遠するということもよく起きます。
高校3年生の時点で、自分の適性が経済学部にあるのか、経営学部・商学部にあるのか、はっきりわかっている人は進学したいところに進学すればよいですが、ここからは、迷いを抱える人向けに、第3の選択肢を示してみたいと思います。
第3の選択肢とは、「大学に進学した後に、経済を学ぶか経営を学ぶか選べる学部に進学しよう」というものです。
大学進学後に重点的に学ぶ分野を選べる学部がある
具体的に一体どのようなことかというと、大学1年次(または2年次)までは経済学や経営学・商学の基礎的なことを一通り学び、それ以降の学年で自分の専門としたい分野を選べるような学部に進学する、ということです。こうすれば、それぞれの学問分野についてある程度理解してから、自分が本当に関心を持ったものを選ぶことができるので、高校3年生の時点で闇雲に選ぶよりもよほど満足がいく学びができます。
有名大学を例にとると、慶應義塾大学商学部・明治大学商学部・早稲田大学商学部がこのタイプに該当します。経営学・マーケティング・会計学・経済学などの幅広い授業が展開され、3・4年生の時にどの分野に重点を置いて学んでいくかは、学生が自由に選ぶことができます。
(※どの大学の商学部でも経済学が専攻できると勘違いしないでください。大学ごとに商学部で扱う科目の範囲は異なります。例えば、同じく有名大学でも関西大学や関西学院大学の商学部では、経済学は専攻できなかったり、経済学の関連科目が全然充実していなかったりします。志望校の情報をよく確認しましょう)
このように、経営学・商学系の学部であっても、経済学の授業が非常に充実している大学も存在します。他にも、経済経営学科のように両方を併記してある学科も、同じようなシステムになっている可能性が高いです(※学部ではなく学科の名称が重要)。「経済学と経営学の両方を学べる」というのは、大学のパンフレットやWEBサイトなどで謳い文句として明記してあると思うので、そうしたアピールをしている大学を探してみましょう。
経済学か経営学か、どちらかを選べないという人は、このような大学に進学することを勧めます。自分の適性と進学先とのミスマッチを減らすことができます。
ただし、経済学と経営学の両方に授業時間を割かなければならない分、専門を選ぶまでに多少の「寄り道」をしていることになります。繰り返しになりますが、自分のやりたいことが決まっているなら「寄り道」をすることなく、よりディープかつ効率的に経済学を学びたければ経済学部(経済学科)に、直に進学しましょう。
逆に、国立大学を中心に、「経済学科」なのに経営学系の授業が多く展開されているところもあります。これらの学科のスタンスとしては、「経営学を専攻することもできるけれど、まずは経済学をきちんと学んでくださいね」というところが少なくないと思います。経営学を学ぶ上でも経済学の知識はあった方が良いとは思いますが、経済学を学びたくない場合は、事前に注意が必要でしょう。志望校のカリキュラムやコース・専攻といったシステムがどうなっているか、よく確認してから受験しましょう。
ただし、経済学部や経済学科と名乗っていても、「大学によっては学べない分野」というものも存在します。下記の記事を参考にしてください。
大学選びの注意点:一部の経済学部でしか学べない科目| (note.com)
学説史を学べない経済学科は要注意
経済学科を名乗っているにもかかわらず、「経済学史」(経済学の歴史、経済学説史、経済思想史などと呼ばれることもある)の授業がない大学は、経済学教育にあまりやる気を感じられないのでお勧めしません。「国公立大学ならそんなことはないだろう」と思うなかれ。地方の国公立大学ではこうした科目がない大学が散見されます。はっきりいって、そうした教員の陣容が整っていない大学は、二流以下といってよいでしょう。
何でも学べるからといって総合政策学部へ安易に進学することはお勧めしない
話のついでに言及しておきます。上記のように、複数の学問を学びたいというニーズを突き詰めると行き着くのが、総合政策系の学部です。総合政策系の学部は、「何でも学べる」ことが魅力の一つです。
しかし、「自分の目指す将来像」と「目標実現のために必要な学問的知識の範囲とその学習順序」を明確に描けていない限りは、こうした学部への進学はお勧めしません。というのも、こうした学部では分野横断的に様々な授業が展開され、学生がその中から自由に選べるというつくりになっています。しかし、特に目標を持たない学生は、脈絡なく授業を履修するので、結局のところ「つまみ食い」のような浅い学習しかできないケースが出てしまいます。豊富な科目メニューから学生自身が自律的に履修計画を組み立てるので、学問体系をよく理解しないまま履修すると、本来必要な基礎学習が疎かになることもあります。そんなことになるくらいなら、カリキュラムに制約がある学部を選んだ方が、特定の学問分野を積み上げ式に学んでいけるので、有意義な学びになると思います。
これは、PCを自作するか、市販モデルを買うかという選択に似ています。自分にとって最適なPCのパーツがわかっている人は、自分でパーツを一つ一つ選んで組み上げた方が良いPCになるでしょうが、それが良くわかっていない人はPCメーカーが販売している一般向けの市販モデルをそのまま受け入れた方がよほど無難な選択といえるでしょう。総合政策系の学部は、実に「玄人向け」の学部なのです。
高校で学ぶ内容を経済学と経営学に分類してみると・・・
経済学と経営学・商学の違いは?:NHK高校講座を例に解説|正力綾士 (note.com)