【Red Flag🚩#5】日本学術会議について田村智子議員の国会質疑が神ってたので要点まとめ

タイトルのとおりです。10/８に行われた参議院内閣委員会での閉会中審査における、日本共産党の田村智子議員による質疑の要点と私見をまとめてお伝えします。

なお、私は既に２回、日本学術会議への人事介入問題を記事にしていますので、先にそちらをご覧になったほうが問題点がどこにあるかを理解しやすいと思います。

過去の記事では、難しい法律論は敢えて避けていたのですが、それだと事の本質の理解に支障があるので、この記事で併せて説明したいと思います。

✅私の過去の記事　その１　その２

✅田村智子議員による質疑動画30分

✅質疑と答弁の全文書き起こし（上西充子氏による）

※以下、質問者は田村智子議員、主な答弁者は大塚幸寛内閣府大臣官房長です。（それ以外の答弁者である場合は都度明記しました。）

☆質問１　任命可否の判断基準はあるのか？

✅10月5日、菅総理は、総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から、今回の任命についても判断したと述べている。総合的、俯瞰的な活動を確保する観点で、任命の可否を判断する基準があるということか？

→（「ある」とは断言せず。）

具体的内容につきましては、これは人事に関することですので、お答えは差し控えさせていただきます。

☆質問２　「形式的任命」を否定するのか？

✅これね、基準があるなんて言ったら、学問の自由に関わるから言えないでしょう。あったら大変なことになりますよね。
平成30年11月13日、内閣府日本学術会議事務局作成とされる文書が、今回の任命拒否の根拠となった考え方を整理したものだとして示されています。
推薦通りに任命すべき義務があるとまでは言えないと考えられるというのが結論なんですけど、その下に但し書きの扱いで、「内閣総理大臣による会員の任命は、推薦を前提とするものであることから、形式的任命と言われることがあるが」と記述されているんですね。
ということは、形式的任命であるということを、否定するということなんでしょうか？

→1983年の答弁も、この平成30年の文書も、いずれも憲法の第15条を前提としたもので、その点において変更はない。
従って、その任命権者たる内閣総理大臣が、推薦のとおり任命しなければならないというわけではない、という考え方も、一貫して存在している。

✅※アヤ先生の解説💕

憲法15条１項には、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」とあります。

菅義偉政権側の法的主張はこういうものです。

憲法15条１項が、国民が公務員を選定・罷免する権利を有する旨を定めている

 　　↓

日本学術会議の会員も公務員である。

　　↓

よって、任命権者である内閣総理大臣は、その任命に責任を負わなければならないのであり、責任を負えないような場合にまで、推薦者全員を必ず任命しなければならないというわけではない。この解釈は1983年当時から変更していない。

…この後の質疑で明らかになるように、かなり無理のある法解釈です。

☆質問３　憲法15条１項に関する認識

✅そしたらね、（形式的任命であるということを）否定できないということなんですよね。否定できないんですよ。
昨日の質問通告のときに法制局にも問い質したところ、「形式的任命は否定していないが、裁量がある」という説明をされた。法制局からその考え方を示す文書があると、答弁があると、言われたのでその文書を入手した。
1969年7月24日、衆議院文教委員会での高辻法制局長官の答弁である。
この中に、憲法15条1項というのが出てくる。ただしこれは、国立大学の学長任命の解釈についての答弁であって、日本学術会議の任命についてのものではない。その中にはこのように書いてある。

「大学の自治と国民主権との調整的見地において考えてみますと、単に申し出がありました者が、何らかの理由で気に食わないというようなことではなくて、そういうことで任命しないのはむろん違法であると思いますが、そうではなくて、申し出があった者を任命することが、明らかに法の定める大学の目的に照らして不適当と認められる、任命権の終局的帰属者である国民、ひいては国会に対して責任を果たすゆえんではないと認められる場合には、文部大臣が、申し出のあった者を任命しないことも、理論上の問題として、できないわけではない」

ここで憲法15条1項が示されている。この考え方に立ったということであれば、任命されなかった6名は、明らかに日本学術会議法の目的に照らして、不適当であると、総理大臣が判断した、憲法15条1項に基づいて。これしか総理の裁量の余地はないことになる。官房長、それでよろしいですか。

✅※アヤ先生の解説💕

要するに、1969年の（国立大学の学長任命に関する）答弁文書の内容を本件に当てはめれば、憲法15条１項を根拠に任命拒否ができるのは、「推薦者をそのまま任命することが、一見して明らかに日本学術会議法の目的に照らして不適当であると認められるような、極めて例外的な場合に限られる」ことになるが、今回の菅義偉首相の判断はそういうことなのか、という問いです。

→（問いに正対した答弁はなし）

☆質問４　明らかに不適当だという根拠は？

✅明らかに不適当であるという理由を示すべきですよ。いかがですか。

→繰り返しになるが、これは人事に関することですので、お答えは差し控えさせていただきます。

☆要求１　文書で示せ！

✅憲法15条1項、国民主権に関わる問題です。明らかな理由を、この委員会に文書で示すことを要求します。

→（水落敏栄内閣委員長より、後刻、理事会で協議する旨が示される）

☆質問５　1983年政府答弁を覆す行為では？

✅（1983年の質疑に出てくる）滝川事件、これは戦前、京都帝国大学の滝川教授の著作が発行禁止処分となり、文部大臣が学長に滝川教授の辞職、休職を要求し、教授会が断固として反対したにも関わらず、文部大臣の監督権を根拠に休職処分とされた事件です。

✅1983年当時、「形式的任命」を確認する質疑は何度も繰り返された。なぜか。
当時、政府自民党から、日本学術会議は偏向している、政府の方針に反する内容を国民にアピールしたことは遺憾である、などの攻撃があり、学術会議の体質改善と称して、会員の公選制を廃止し、推薦に基づく任命制が提案されたという経緯があるからなんです。
任命制をとることで、滝川事件のように、人事を通じた監督が行われ、日本学術会議の独立性、学問の自由が脅かされるのではないか。この危惧から、何度も質問があり、そのたびに政府は、そういう心配はないと。形式的任命という答弁を繰り返したんです。
同じ趣旨の答弁は、まさに何度も何度も繰り返されています。
官房長。形式的任命だから、推薦された者は拒否しない。これが政府の答弁です。今回の任命拒否は、1983年政府答弁を覆す行為ではありませんか？

→（質問２とほぼ同じ答弁。憲法15条１項が根拠。必ずしも推薦のとおりに任命しなければならないということまでは1983年当時においても言及されていない。）

☆質問６　任命拒否できるとする解釈を示す文書の存否

✅違います。1983年の会議録は、推薦に基づき総理大臣が任命する。それは形式的任命、形式的発令行為であり、推薦された全員を任命する。拒否はしない。一貫した政府答弁です。
国会会議録というのは、国会と国民に示された、条文解釈そのものです。

✅法制局に聞きます。逆に、推薦された者を任命拒否することがあり得るという、日本学術会議法についての法解釈を示す文書はあるんですか。

→内閣法制局木村第一部長による答弁。要するに「ない」と回答している。

☆要求２　あると言うなら文書を出せ！

✅（もしあると言うのであれば）その政府答弁書を本委員会に出してください。よろしいですか、提出してください。

→（水落敏栄内閣委員長より、後刻、理事会で協議する旨が示される）

☆質問７　学問の自由との関係

✅（1983年の中曽根総理の答弁は）政府の行為、総理の任命は、形式的行為、形式的任命である。だから、学問の自由独立は保障される。逆の言い方をすれば、形式的でなく、裁量権を持って任命の適否を判断すれば、学問の自由が保障されなくなるという答弁ですよ。
憲法23条に、学問の自由が規定されている。だから、これまでは形式的任命、推薦の通りに任命が行われてきたということではないんですか？

→憲法23条もあるが、憲法15条もあるから…の繰り返し。問いに正対した答弁はない。

☆田村智子議員の見解まとめ

✅憲法15条1項を持ち出せば持ち出すほど、日本学術会議と6人の方を侮辱することになりますよ。やめたほうがいいですよ。

✅（1983年当時）質問者は、学問の自由ということを口にしてないんです。中曽根総理自らが、学問の自由があるから学術会議には独立性がある、だから形式的任命だと、結びつけて、明確に答弁をしているんです。

✅中曽根答弁は、「総理に任命の裁量権はない。形式的任命であり、任命拒否はしない。それが学問の自由独立の保障である」と言っている。これ以外の解釈が、どうしてできるのか。

✅憲法15条1項を持ち出してきた1969年の高辻法制局長官の答弁は、理論上はあり得るけれども、実際にはまず起こり得ないという内容の答弁なんですね。
これ、大学紛争が起こっている時で、国立大学の学長の任命をめぐって、かなりの大激論になるんですよ。それでも法制局長官は、かなりもう形式的なんだと、明らかに不適当で、どうしてこんな人が学長になるんだというような人が上がってこない限りは任命するっていう、そういう答弁で一貫してるんですよね。だから15条1項は、もう持ち出さないで、って言ってるんですよ。
国民はみんな、今回の６人も含めて全員を任命すべきだっていう意見のほうが、今、そういう運動、どんどん起こっているじゃないですか。このね、全く不適当な人物を任命しない裁量権がある、そういう議論じゃないんです。

✅先ほど指摘したように、1950年代から60年代、日本学術会議は原子力潜水艦の寄港に反対したり、原子爆弾実験に反対をし、核兵器廃絶を求めるアピールをするなど、政府の見解と異なる活動をして、その日本学術会議への攻撃が現実にあったんですよ。
だから、任命はあくまで形式的であり、推薦のままに任命すると。つまりは推薦されたのに任命拒否するような裁量は、政府にはない。これが繰り返し繰り返し確認されたということなんですよね。

✅この日本学術会議については、形式的任命とは異なる対応を始めたのは2016年からだと報じられています。
2016年欠員補充の際に、学術会議が示した候補者案に難色を示し、その結果、補充自体が見送られる。17年、105人を超える推薦名簿を提示するように求め、調整を行った。18年、会員補充に難色を示し、補充が行われなかった。20年、総会議決を経て推薦された105人のうち、6人を初めて任命しなかった。
これは安倍政権が、立憲主義を踏みにじる安保法制を強行し、これに多くの学者が憲法違反だとの見解を示して以降のことです。

※アヤより…このくだりは、前回の私のnoteで詳しく触れています💕

✅また2017年には、日本学術会議は軍事研究に対する声明を発出しています。これはね、予算の出所が防衛省というのがおかしいってことを言ってるだけで、学問の自由に関わることを言ったわけじゃないんです、予算の出所を問題にしたんです。

✅学術会議をめぐる歴史的な経緯を見ても、こうした学者や学術会議の動きと、今回の6人の任命拒否を切り離して考えることはできません。
学問の自由が脅かされている。それは科学者だけでなく、国民全体の言論の自由をも脅かす道に繋がるんですよ。
政府の方針に賛成の意見も批判的意見も、科学的知見から自由に行われる、それが学問の自由であり、言論表現の自由であり、民主主義の根幹なんです。
大変重大な問題です。官房長官および総理の出席による国会質疑を求めて、質問を終わります。

☆まとめ

✅日本学術会議法に関して、「内閣総理大臣に、会議が推薦した者について任命を拒否する裁量があり得る」と法解釈した文書は存在しない。

✅国立大学の学長任命に関して、憲法15条１項を根拠として任命を拒否できる場合があるとする解釈を示した答弁文書は存在する（1969年）。ただしこれは、（日本学術会議法に当てはめるのであれば）誰がどう見ても明らかに学者として不見識な人物を会議が敢えて推薦してきたなど、そのまま任命することがかえって国民を害することが一見して明らかであるような、極めて例外的な場合に限られる。当然、今回任命を拒否された６名はこの場合に該当していない。

✅1983年に「学問の自由」を持ち出してきたのは中曽根総理（当時）の側であった。「任命は形式的にすぎない。会議が推薦してきた者は全員任命する。拒否はしない。これにより学問の自由は保障される」という旨が繰り返し確認されている。

…１点めが致命的でしょう。文書がないなら終わりです。文書の存する1983年の答弁内容がすべて。任命拒否は許されません。

国民は立法府の構成員たる国会議員しか、直接選ぶことはできません。1983年当時、行政府たる政府は何度も何度も国会に対し「任命は形式的。推薦されたら全員任命する。」と説明してきて、だからこそ立法したわけです。

それを勝手に、国会審議も通さずに行政府による解釈変更だけで真逆の結論を導くことなど断じて許されません。それは国会の立法権侵害であり、ひいては国民の権利の侵害であります。三権分立の破壊です。

ぜひ、今後とも野党が一丸となってこの問題を追及してほしいですし、私たちも声を上げ続ける必要があると思います。ファシズムを許してしまうかどうかの瀬戸際に立っています。

すばらしい質疑をなさった田村智子議員と共産党に心よりの敬意を表して結びとします。このすばらしい質疑を、民放各局もNHKもフルで放送しないのはまったくおかしい話だと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました🙇‍♀️またねー🧡

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