日本学術会議任命拒否問題 2020年10月8日参議院内閣委員会 田村智子議員質疑文字起こし

質疑映像(国会パブリックビューイング)


●水落敏栄内閣委員長
田村智子さん。

●田村智子議員
日本共産党の田村智子です。
日本学術会議が新たな会員として推薦した105人のうち6人を、菅総理が任命拒否した。これは日本学術法に反し、憲法にも抵触する重大な問題だと考えます。
私は加藤官房長官の出席を要求いたしましたが、理事会で与党の了承を得られませんでした。やむなく本日は、大塚官房長と法制局に質問いたします。
日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信のもと、行政、産業および国民生活に科学を反映浸透させることを目的として、政府から独立して職務を行う特別の機関として設立されました。職務として、科学に関わる事項で、政府に勧告を行うことができるなど、法に定められています。
新型コロナ感染症のパンデミックのもとで、私達は科学的知見が行政にとっても、国民生活にとっても、どれほど重要かということを、現在進行形で経験しています。科学の追求と誠実さを持って、科学者が活動し、発言することが、今まさに求められています。
今回の任命拒否は、日本学術会議のみならず、科学の成果を享受する国民にとっての大問題です。
まず確認いたします。10月5日、菅総理は、総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から、今回の任命についても判断したと述べていますが、総合的、俯瞰的な活動を確保する観点で、任命の可否を判断する基準があるということですね。

●水落敏栄内閣委員長
内閣府大塚官房長。

●大塚幸寛内閣府大臣官房長
お答えをいたします。ただいま委員からもご紹介ございました今般の任命、10月1日に行ったものでございますが、8月31日に出されました学術会議からの推薦書、これに基づきまして行ったものでございます。
この会員の任命につきましては、憲法そして日本学術会議法の規定に基づきまして、任命権者たる内閣総理大臣がその責任をしっかり果たしていくという一貫した考え方に立った上で、日本学術会議に、その個々の会員の専門分野の枠にとらわれない、広い視点に立って、今、委員からもご紹介がございました、総合的、俯瞰的観点から活動を進めていただくために、任命権者である内閣総理大臣が、この法律に基づいて任命を行ったものでございます。
その総合的、俯瞰的という話でございますが、これ自体は、元々は平成15年の総合科学技術会議の意見具申によっているものでございまして、そこには、日本学術会議は、新しい学術研究の動向に柔軟に対応し、また科学の観点から今日の社会的課題の解決に向けて提言したり、社会とのコミュニケーション活動を行うことが期待されていることに応えるため、総合的、俯瞰的な観点から活動することが求められている、となっておりまして、こうした、まさしく提言を踏まえ、総合的、俯瞰的観点からの活動を進めていただくために、任命権者である総理が、この法律に基づいて任命を行ったものと承知をしております。

●水落敏栄内閣委員長
田村智子さん。

●田村智子議員
日本学術会議法には、会員の推薦の基準は、優れた研究または業績がある科学者、としています。ところが加藤官房長官は、専門領域での業績のみにとらわれない総合的、俯瞰的活動という観点から判断したと、記者会見で述べておられる。
そうすると、法に定めのない基準がなきゃおかしいんですね。これ、総理の選考基準を明確に示してください。
活動について述べたその文書じゃないんですよ。総理の選考基準を明確に示してください。

●水落敏栄内閣委員長
大塚官房長。

●大塚幸寛内閣府大臣官房長
繰り返しで恐縮でございますが、まさしく総合的、俯瞰的な観点から活動していただくために、任命権者である総理がこの法律に基づいて任命を行ったものと承知をしております。
その具体的内容につきましては、これは人事に関することですので、お答えは差し控えさせていただきます。

●水落敏栄内閣委員長
田村智子さん。

●田村智子議員
これね、基準があるなんて言ったら、学問の自由に関わるから言えないでしょう。あったら大変なことになりますよね。
平成30年11月13日、内閣府日本学術会議事務局作成とされる文書が、今回の任命拒否の根拠となった考え方を整理したものだとして示されています。資料でも、抜粋してお配りしました。
推薦通りに任命すべき義務があるとまでは言えないと考えられるというのが結論なんですけど、その下に但し書きの扱いで、内閣総理大臣による会員の任命は、推薦を前提とするものであることから、形式的任命と言われることがあるが、と記述されているんですね。
ということは、形式的任命であるということを、否定するということなんでしょうか?

●水落敏栄内閣委員長
まず、日本学術会議福井事務局長。

●内閣府日本学術会議福井仁史事務局長
日本学術会議の事務局長でございます。元々この文書、学術会議事務局の方で、推薦のあり方について検討する過程で作成した文書でございますので、文意については私の方からお答えするのが宜しいかと思います。
形式的任命と言われることもあるが、という表現でございますが、これはその下の文章、注にもございますように、他の名簿によるとしている法律上の用例や申出に基づく法律上の要件との比較において用いているものと考えておりまして、特にあの、形式的任命を否定する、いわゆるその、逆接の接続詞ではなくて、単純接続と言われる接続詞だというふうに考えております。
以上でございます。

●水落敏栄内閣委員長
田村智子さん。

●田村智子議員
官房長、お答えください。形式的任命という、この解釈を維持しているのか、否定しているのか、端的に。

●水落敏栄内閣委員長
大塚官房長。

●大塚幸寛内閣府大臣官房長
形式云々は、たどれば1983年の、昭和58年の答弁にあるかと思いますが、このときの答弁も、それから今、福井の方から触れました、この(平成)30年の文書も、いずれも憲法の第15条を前提としたものでございます。ここから変わってございません。
従いまして、その任命権者たる内閣総理大臣が、推薦の通り任命しなければならないというわけではない、という考え方も、一貫して存在しております。
1983年の答弁におきましても、形式的な発令行為、との発言がなされているものの、この、必ず推薦の通り任命しなければならない、というところまでは、言及をしておらないところでございます。

●水落敏栄内閣委員長
田村さん。

●田村智子議員
形式的任命を否定しているんですか。

●水落敏栄内閣委員長
大塚大臣官房長。

●大塚幸寛内閣府大臣官房長
1983年の答弁も踏まえてございます。

●水落敏栄内閣委員長
田村さん。

●田村智子議員
そしたらね、否定できないということなんですよね。否定できないんですよ。あとでやりますけれどね。
昨日の質問通告のときにも、聞いたらね、形式的任命は否定していないと。だけど裁量があるんだっていう説明をされたんです。法制局が。
で、私、それは矛盾するんじゃないの、というふうに聞きましたらね、法制局からその考え方を示す文書があると、答弁があると、言われましたので、その文書を昨日夜、送っていただきました。
資料ではちょっと間に合わなかったんですけど、1969年7月24日、衆議院文教委員会での高辻法制局長官の答弁なんですね。
これはその会議録の6ページのところが一番まとまっているんですけども、この中でね、憲法15条1項というのが出てくるんですよ。ただしこれは、国立大学の学長任命の解釈についての答弁であって、日本学術会議の任命についてのものではありません。しかしこれが、考え方を、この答弁に基づいているんだろうと私もわかりましたので、ちょっと紹介をいたします。
その中では、大学の自治と国民主権との調整的見地において考えてみますと、単に申し出がありました者が、何らかの理由で気に食わないというようなことではなくて、そういうことで任命しないのはむろん違法であると思いますが、そうではなくて、申し出があった者を任命することが、明らかに法の定める大学の目的に照らして不適当と認められる、任命権の終局的帰属者である国民、ひいては国会に対して責任を果たすゆえんではないと認められる場合には、文部大臣が、申し出のあった者を任命しないことも、理論上の問題として、できないわけではないと。
ここで憲法15条1項が示されてるんですよ。この考え方に立ったということであるならね、法律は違うけれども、任命されなかった6名は、明らかに日本学術会議法の目的に照らして、不適当であると、総理大臣が判断した、憲法15条1項に基づいて。これしか総理の裁量の余地はないことになりますが、官房長官、それでよろしいですか。

●水落敏栄内閣委員長
大塚大臣官房長。

●大塚幸寛内閣府大臣官房長
お答えを申し上げます。ただいま委員がご紹介されました、その議事録の詳細の部分を、今この段階できちっと承知をしておりませんが、少なくとも私どもとしては、この任命権というものが、たどっていけば、憲法第15条を前提としており、その公務員の選定罷免権、これが国民固有の権利であるという考え方に立ちまして、個別法において、日学の場合はこの日学法に、7条に推薦に基づいて任命をするという規定があり、それは、任命権者たる総理大臣が推薦の通り任命しなければならないというわけではないということだというふうに、これは法制局とも確認しておりまして、これは任命制を導入した時から、あくまで私どもとしては一貫しているというのが、お答えでございます。

●水落敏栄内閣委員長
田村智子さん。

●田村智子議員
また憲法15条1項を持ち出されました。憲法15条1項。公務員を選定し、およびこれを罷免することは、国民固有の権利である。
だからね、形式的任命と、この憲法15条との関係どうするかっていうので、法制局の長官の答弁は紹介したんですけれどもね、明らかに、明らかに不適当であると、国民が、国民が納得しなければ、こんな判断つかないことになるんですよ。
じゃ皆さん、6人が任命されなかったことについて、明らかに、この6人が任命されたら、日本学術会議法に違反すると思いますか。日本学術会議法の目的に照らして、日本学術会議がまともな活動ができなくなると、そう説明できる方が、この国会議員の中におられるでしょうか?
法制局長官は、憲法15条1項に基づいて、罷免しないという、あ、任命しないという判断、これは国民国会に対する責任、そういうことを総理もおっしゃっている。
だけど国民の中から、任命されないのは当然だ、明らかだ、それは不適当だ。その理由を示せる人は、私は誰もいないと思うんですよね。国会議員の方で示せる方、いますか。
憲法15条1項を持ち出すのは、やめた方がいい。やめるべきです。不適当であるという理由を示すべきです。官房長、いかがですか。

●水落敏栄内閣委員長
大塚官房長。

●大塚幸寛内閣府大臣官房長
もともと、任命権も日本学術会議法に明定をされているものでございますし、それをたどっていけば、憲法15条の、いわゆる公務員の選定罷免権にたどり着くというふうな認識でおります。
そうしたもとで、具体的な法律が定められ、今回の総理の任命権の明定に至っていると思っておりますので、こういったご説明をする際に、憲法から引用してご説明を申し上げることは、決して誤りではないと思っておりますし、こうした説明につきましても、法制局とも十分ご相談の上、この場でこういう説明を繰り返しさせていただいているところでございます。

●水落敏栄内閣委員長
田村さん。

●田村智子議員
まず、明らかに不適当であるという理由を示すべきですよ。いかがですか。

●水落敏栄内閣委員長
大塚官房長。

●大塚幸寛内閣府大臣官房長
繰り返しでございますが、任命はどうしてもその、人事と絡むところでございますので、人事のところの詳細につきましては、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。

●水落敏栄内閣委員長
田村さん。

●田村智子議員
憲法15条1項、国民主権に関わる問題です。明らかな理由を、この委員会に文書で示すことを要求します。

●水落敏栄内閣委員長
後刻、理事会で協議します。田村さん。

●田村智子議員
形式的任命ということについて、見ていきたいと思います。
これは1983年、日本学術会議法の会員について、学者による選挙制度を廃止し、推薦に基づく内閣総理大臣の任命とする、というですね、この日本学術会議法改定法案の審議で、政府自身が繰り返した言葉です。参議院の会議録、資料でもつけました。
これを見ますと、最初に形式的任命という言葉を使ったのは、後に公明党国民会議の会派に属された高木健太郎議員です。
1983年5月10日、参議院文教委員会会議録7ページ。会員は総理大臣の任命制によるということでございますが、学術会議から推薦してきた会員は、これを形式的任命である、そういう言葉は使えないにしても、最大限尊重して任命するということでなくてはいけないと。
続けて、滝川事件、これは戦前、京都帝国大学の滝川教授の著作が発行禁止処分となり、文部大臣が学長に滝川教授の辞職、休職を要求し、教授会が断固として反対したにも関わらず、文部大臣の監督権を根拠に休職処分とされた事件です。この滝川事件を引いて、そのような過ちを繰り返さないようにと、こういう求める質問でした。
これに対して、内閣総理大臣官房総務審議官は、選挙の場合には立候補制度であるから任命を必要としないが、学協会推薦制の場合には、任命行為が必要となる。したがって、形式的任命権にとどめておかなくてはならない、とする学術会議がまとめた分析を、わざわざ読み上げて、全く形式的任命であると考えている、と答弁。
さらに、210名出てくれば、これはそのまま総理大臣が任命する。210名出るとか、何とかであれば問題外ですが、210名超えるって意味ですね、そういう仕組みにはなっておりません。そういう意味で、私どもは形式的任命というふうに考えており、法令上も、従ってこれは形式的ですよという規定していると、形式的という言葉を繰り返すんです。
高木議員は、この答弁を当時の担当大臣である総理府総務長官に確認していますが、では丹羽長官、どう答えたのか、官房長、お答えください。

●水落敏栄内閣委員長
大塚大臣官房長。

●大塚幸寛内閣府大臣官房長
お答え申し上げます。委員がお配りになられました、この7の3の議事録の2段目、高木健太郎委員のご質問に対する国務大臣丹羽兵助、当時の大臣のお答え、この部分を指しているものと理解をいたしますが、読み上げます。
せっかく高木先生からのご注意であり、要請でございますし、当然のことでございますから、この場で責任のある大臣として、長官として、今、事務当局から答えましたように、守らしていただくことを、はっきり申しあげておきたいと思います。
以上でございます。

●水落敏栄内閣委員長
田村さん。

●田村智子議員
形式的任命を確認する質疑は、これ以後、何度も繰り返されます。なぜか。
当時、政府自民党から、日本学術会議は偏向している、政府の方針に反する内容を国民にアピールしたことは遺憾である、などの攻撃があり、学術会議の体質改善と称して、会員の公選制を廃止し、推薦に基づく任命制が提案されたという経緯があるからなんです。
任命制をとることで、滝川事件のように、人事を通じた監督が行われ、日本学術会議の独立性、学問の自由が脅かされるのではないか。この危惧から、何度も質問があり、そのたびに政府は、そういう心配はないと。形式的任命という答弁を繰り返したんです。
83年5月12日、参議院文教委員会会議録15ページ、社会党粕谷照美議員、学術会議の独立性というものが侵されやしないだろうか、こういう心配を持つものですから、何度も何度も念押しをしている。内閣官房参事官の答弁、内閣総理大臣が形式的な発令行為を行うというふうにこの条文を私どもは解釈をしておる、この点につきましては、内閣法制局におきます法律案の審査の時におきまして、十分その点は詰めたところであります。
同じく11月24日、これ会議録23ページ、我が党の吉川春子議員への丹羽総理府長官の答弁。推薦していただいた者は、拒否はしない、形だけの任命をしていく。
同じ趣旨の答弁は、まさに何度も何度も繰り返されています。
官房長。形式的任命だから、推薦された者は拒否しない。これが政府の答弁です。今回の任命拒否は、83年政府答弁を覆す行為ではありませんか。

●水落敏栄内閣委員長
大塚大臣官房長。

●大塚幸寛内閣府大臣官房長
繰り返しで恐縮ですが、今、ご答弁、ご紹介いただきました昭和58年当時の答弁も、それから今般、2年前でございましょうか、平成30年の文書も、繰り返しですが、いずれも憲法の第15条を前提としていること、これは当時の改正当時からも前提となっていたことでございます。
形式的な発令行為との発言がなされていることは十分承知してございますが、必ず推薦の通りに任命しなければならないということまでは、言及もされてないところでございます。

●水落敏栄内閣委員長
田村さん。

●田村智子議員
違います。83年の会議録は、推薦に基づき総理大臣が任命する。それは形式的任命、形式的発令行為であり、推薦された全員を任命する。拒否はしない。一貫した政府答弁です。
国会会議録というのは、国会と国民に示された、条文解釈そのものです。
法制局に聞きます。逆に、推薦された者を任命拒否することがありうるという、日本学術会議法についての法解釈を示す文書はあるんですか。

●水落敏栄内閣委員長
内閣法制局木村第一部長。

●内閣法制局木村第一部長
はい、お答えいたします。私どもとしては、平成30年に、今回作成の説明資料でございますけれども、それについて当局に意見を求められました際に、ご指摘のその国会議事録のほか、昭和58年の日学法改正時の法律案審議録の中に総理府作成の想定問答集がございます。それにつきましては確認をいたしております
そういう意味で言いますと、今、委員がご指摘になられましたような、義務的任命であるのかどうかという点について、明瞭に記載したものというのは、私が知る限り見当たりません。
ただし、先ほどもご言及ございましたような、高辻長官以来の答弁の積み重ねの上に立ちまして、当然そういう解釈のうえに立脚して、今回、あるいは昭和58年のその法改正以来、一貫した考え方として成り立っているものというふうに理解をしております。

●水落敏栄内閣委員長
田村さん。

●田村智子議員
では、その政府答弁書を本委員会に出してください。よろしいですか、提出してください。

●水落敏栄内閣委員長
後刻、理事会で協議します。田村さん。

●田村智子議員
これ、ないんですよね。任命を拒否していいっていう、そういう解釈したものはないんですよ。高辻法制局長官の答弁だけなんですよ、今のお言葉だと。
高辻法制局長官の答弁というのは、極めて限定的で、明らかに不適当と。全く違いますよ、今回のと。
形式的任命は、学問の自由の保障そのものに関わると、中曽根総理大臣が明確に答弁もしています。5月12日、会議録34ページ、前島英三郎議員、自民党で郵政大臣を務めた八代英太議員の本名ですね。
今まで、選挙によって選ばれてまいりました。これはやっぱり大変重要な特質でありまして、この原則が守られなければ、本会議の存在理由もまたあり得ないというふうな気がするんですけれども、今後この学術会議は、例えば他の諮問機関のような形に変わっていくのでしょうかと質問したことに、では中曽根総理はどう御答弁しているのか。官房長、お答えください。

●水落敏栄内閣委員長
大塚大臣官房長。

●大塚幸寛内閣府大臣官房長
お答えを申し上げます。今、ご紹介がございました58年の文教委員会での前島委員の質問に対し、当時の中曽根総理大臣でございますが、政府が行うのは、形式的任命にすぎません。したがって、実態は各学会なり学術集団が推薦権を握ってるようなもので、政府の行為は形式的行為であるとお考えくだされば、学問の自由独立というものは、あくまで保障されるものと考えておりますと、答弁をされておられます。

●水落敏栄内閣委員長
田村さん。

●田村智子議員
政府の行為、総理の任命は、形式的行為、形式的任命である。だから、学問の自由独立は保障される。逆の言い方をすれば、形式的でなく、裁量権を持って任命の適否を判断すれば、学問の自由が保障されなくなるという答弁ですよ。
憲法23条に、学問の自由が規定されている。だから、これまでは形式的任命、推薦の通りに任命が行われてきたということではないんですか、官房長。

●水落敏栄内閣委員長
大塚大臣官房長。

●大塚幸寛内閣府大臣官房長
お答え申し上げます。憲法23条に定められた学問の自由、これは広く全ての国民に保障されたものであって、特に大学における学問研究およびその成果の発表、教授が自由に行われることを保障したものであるというふうに認識をしてございます。
他方で、これも憲法第15条第1項の規定に基づく公務員の選定罷免権、これが国民固有の権利であるという考え方からすれば、任命権者たる総理大臣が推薦の通りに任命しなければならないというわけではございません。
独立性云々ということもございますが、あくまでも職務の独立性というものは保障されており、この任命云々によって規定とは別物であるということもご紹介をさせていただきたいと思います。

●水落敏栄内閣委員長
田村さん。

●田村智子議員
15条1項を持ち出せば持ち出すほど、日本学術会議と6人の方を侮辱することになりますよ。やめた方がいいですよ。
この会議録の32ページ粕谷議員ですね、の質問にも、中曽根総理は学問の自由について触れているんですけども、いずれもですね、質問者は、学問の自由ということを口にしてないんです。総理みずからが、学問の自由があるから学術会議には独立性がある、だから形式的任命だと、結びつけて、明確に答弁をしているんです。
先ほどの内閣府日本学術会議事務局作成とされる文書を見てください。先ほど指摘した但し書きには、憲法23条に規定された学問の自由を保障するために、大学の自治が認められているところでの文部大臣による大学の学長の任命と同視することはできないとあるんですね。国立大学の学長も政府による任命、政府に裁量権はなく、大学が選出した学長を形式的に任命する。
それは学問の自由を保障するためということなんです。中曽根答弁は、日本学術会議も同じだということを言ってるんですよ。総理に任命の裁量権はない。形式的任命であり、任命拒否はしない。それが学問の自由独立の保障である。これ以外の解釈が、どうしてできるのかと思いますけど、法制局、なにか答弁できますか。

●水落敏栄内閣委員長
木村第一部長。

●内閣法制局木村第一部長
ご質問につきましては、一義的にはやはり省庁からご答弁いただくことが適当だとは思いますけれども、あえて申し上げますと、当然その法のその適用は、その憲法に適合すべきことは当然であります。それは23条のみならず、15条についても言えることだろうと思っております。
そもそも、日本学術会議の会員の任命は、日本学術会議法7条2項に基づき、適正に行われるべきものであることは当然でありまして、このことが学問の自由を制約することにはならないというふうに考えております。

●水落敏栄内閣委員長
田村さん。

●田村智子議員
15条1項のね、それを持ち出してきた高辻法制局長官の答弁、ぜひ皆さん読んでみてほしいんですよ。これ、理論上はあるけれども、まず有り得ないって答弁なんですね。
これ、大学紛争が起こっている時で、学長の任命をめぐって、かなりの大激論になるんですよ。それでも法制局長官は、かなりもう形式的なんだと、明らかに不適当で、どうしてこんな人が学長になるんだというような人が上がってこない限りは任命するっていう、そういう答弁で一貫してるんですよね。だから15条1項は、もう持ち出さないで、って言ってるんですよ。
国民はみんな、任命すべきだっていう意見の方が、今、そういう運動、どんどん起こっているじゃないですか。このね、全く不適当な人物を任命しない裁量権がある、そういう議論じゃないんです。
先ほど指摘したように、1950年代から60年代、日本学術会議は原子力潜水艦の寄港に反対したり、原子爆弾実験に反対をし、核兵器廃絶を求めるアピールをするなど、政府の見解と異なる活動をして、その日本学術会議への攻撃が現実にあったんですよ。
だから、任命はあくまで形式的であり、推薦のままに任命すると。つまりは推薦されたのに任命拒否するような裁量は、政府にはない。これが繰り返し繰り返し確認されたということなんですよね。
今ね、この日本学術会議については、形式的任命とは異なる対応を始めたのは2016年からだと報じられています。
2016年欠員補充の際に、学術会議が示した候補者案に難色を示し、その結果、補充自体が見送られる。17年、105人を超える推薦名簿を提示するように求め、調整を行った。18年、会員補充に難色を示し、補充が行われなかった。20年、総会議決を経て推薦された105人のうち、6人を初めて任命しなかった。
これは安倍政権が、立憲主義を踏みにじる安保法制を強行し、これに多くの科学者が憲法違反だとの見解を示して以降のことです。
また2017年には、先ほども質問でありました、日本学術会議は軍事研究に対する声明を発出しています。これはね、予算の出所が防衛省というのがおかしいってことを言ってるだけで、学問の自由に関わることを言ったわけじゃないんです、予算の出所を問題にしたんです。
学術会議をめぐる歴史的な経緯を見ても、こうした学者や学術会議の動きと、今回の6人の任命拒否を切り離して考えることはできません。
学問の自由が脅かされている。それは科学者だけでなく、国民全体の言論の自由をも脅かす道に繋がるんですよ。
政府の方針に賛成の意見も批判的意見も、科学的知見から自由に行われる、それが学問の自由であり、言論表現の自由であり、民主主義の根幹なんです。
大変重大な問題です。官房長官および総理の出席による国会質疑を求めて、質問を終わります。