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詩 大切なものたち 記憶の中で

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形象化と現実は、少しズレていて、本当の出来事より印象に残ったりします。
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2023年8月の記事一覧

詩)八月になると

詩)八月になると

あの頃
八月といえば 大牟田の実家
カタカタカタ
モーター音のする扇風機が回る縁側
ざっくり 包丁で切り分けられた
お盆の上の西瓜

顔と同じくらいの西瓜にかぶりつき
足をぶらぶらさせながら
ぷっぷっと種を飛ばす

その日も暑い日だった
それはなんの前触れもなく
〈あゝそうだった 
ヒロシマのピカもナガサキのピカも両方見たよ〉
父がそう話した
〈そうそう 
あのヒューヒューという焼夷弾の音 
八月

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詩)三軒茶屋 ちゃんぽん長崎

詩)三軒茶屋 ちゃんぽん長崎

 

真っ赤に燃える日差し 三軒茶屋駅前のマックに若者が群れている不思議な光景を横目で見ながら 長崎ちゃんぽんを食いにいく

カウンターしかない席 隣の親父(僕もオヤジ)は発泡酒片手に爆発しそうな量のチャーハンをかっ込んでいる お洒落な帽子がかっこいい
僕の頼んだちゃんぽんはまだ来ない たまらずビールを注文

山本寛斎さん残念だったね しょっちゅう来てたのにね 雑誌、取材に来た? 街中華とかいう番

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詩)8月6日に向き合う

詩)8月6日に向き合う

詩は短い
つきつめた文字
震える
考える
どうしても
すすめない

考える
そうすると
また
すすめない
書けない



今日
自分は死んで
そのあと静かに
何もない世界

何もない
ただの無生物である世界

見ようとした
ああ ずっとずっと
このまま

そう思い
少し
そうだなあ

納得する



書く
ことは
そういうことだ

思い
また
書き始める

死者~記憶
8月6日
人であ

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8月の詩(2)

8月の詩(2)



たこ 高畑耕治

こんな島国にすんでいながら
祖母には国境がない
みえない国境をひろげるため
南の海に散った
祖父を参りに 東京の
神社にいったあと
いなかにかえりもうたんぼをはなれない

海と空はむすばれていたから
いねをうえる祖母が空をみあげると
雨つぶをおとす雲に
乳房の汗をあらいながす祖父がいた
たんぼで育てられ
あぜみちであそびながら
おさない母は父親のおぼろなおもかげを
夕暮れの風

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