詩)8月6日に向き合う
詩は短い
つきつめた文字
震える
考える
どうしても
すすめない
考える
そうすると
また
すすめない
書けない
今日
自分は死んで
そのあと静かに
何もない世界
何もない
ただの無生物である世界
見ようとした
ああ ずっとずっと
このまま
そう思い
少し
そうだなあ
と
納得する
書く
ことは
そういうことだ
と
思い
また
書き始める
死者~記憶
8月6日
人であったことさえ
影さえも奪われた
いったい歳月は
なんのために過ぎたのだろう
まだ死者にもなれぬものたち
あの時 8月の暑い広島で
すでに陽射しは炎天下
勤労学徒の学生の一日が
忙しく始まろうとしていた
わたしはそこにいて
汗が額を伝う
その日 そこにわたしもいる
生きている
その頭上に
虚ろな人工の閃光
また
僕は書き始める
なぜこんなことになったのか
加害者であり被害者である
そのことを問い続ける
生があるかぎり
今日があるのだから
死者にもなれなかったあなたのために
今
8月6月を書くこと
向きあうこと
2022年に詩集を発行いたしました。サポートいただいた方には贈呈します