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ICONIC / アイコニック

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アイコニックシリーズをまとめました。
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記事一覧

ICONIC / アイコニック 番外編

ICONIC / アイコニック 番外編

 2060年初頭、それまで「非人道的」だと言われ続けてきたクローン人間の制作が打って変わって推奨されるようになっていきました。そして2085年現在、クローンの制作をする大企業が次々現れ、全人口の3割ほどをクローン人間が占める状態にあります。これはこれからクローン人間を購入しようと検討中のアナタ、今現在のクローン人間市場を詳しく知りたいと思っているアナタのための特集です。是非、ご参考に。

ーヴァー

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ICONIC 番外編② 「GorldEdge社」紹介

ICONIC 番外編② 「GorldEdge社」紹介

 2061年に国際条約でクローン人間の開発が認められて早二十数年が経った今現在でも、クローン人間開発業界にてトップに君臨し続ける大企業が存在します。それが、「GorldEdge社」です。
 GorldEdge社は2069年に京都府にて創業しました。同社はその高品質•高性能なクローン人間開発が大きく認められ、わずか2年で世界的な大企業に成長し、その名声•信頼は現在に至るまで一度も損なわれておりません

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ICONIC 番外編③ 「TECHNO KAISER社」紹介

ICONIC 番外編③ 「TECHNO KAISER社」紹介

 みなさんこんにちは。日本で世界最初のクローン開発が始まり、それが海外に広がり、そして世界的な産業として根付いてはや三十年。22世紀ももう目前にまで近づいてきましたね。さて、クローン開発も歴史が深くなりつつある昨今、海外でも様々な新興企業が名を挙げ始めています。それでもなお、クローン開発業界でトップに君臨し続ける、かの有名な「GorldEdge社」に肩を並べる我らが帝王、「TECHNO KAISE

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ICONIC 番外編④「スーパークローン・NFA」紹介

ICONIC 番外編④「スーパークローン・NFA」紹介

 昨今のクローン人間業界を騒がせていたスーパークローン、「Never Fade Away」こと通称「NFA(ナファ)」が先日ついにGorldEdge社よりリリースされました。先日のリリース会見の情報やその他スペック情報などをもとに、今回はこのクローンの素晴らしさを存分に説明させていただきます。

 スーパークローン「NFA」は「TECHNO KAISER社」、「Hell Dogs社」、「Somer

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ICONIC / アイコニック ①

ICONIC / アイコニック ①

「遺伝子組み換えによるクローン人間の人口増加」
「才能を持って生まれる科学の子•クローン人間」
「遺伝子組み換えの未来/彼らは人類なのか?」

 今から数十年前、それまでは「非人道的だ」と叫ばれていた遺伝子組み換えによる人間のクローン制作が打って変わって「人類の未来」として奨励されるようになった。日本はもちろん、世界各国の研究所が優れたクローンの制作を開始し、クローンの制作を主とする企業も現れた。

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ICONIC / アイコニック ②

ICONIC / アイコニック ②

  私立帝明高校、冬月の通う高校だ。総生徒数4502人、内クローン人間が2003人。府内有数のマンモス校で、数々の有名難関大学への進学率が非常に高い。が、実績は輝かしくとも校内の様子はまるで地獄である。クローン生徒と純身生徒の対立、それによるイジメ、喧嘩は日常茶飯事。教職員は見て見ぬふり、自殺者も少なくない。しかし表面上は優秀な生徒の通う非常に綺麗で清潔な高校だ。入学したばかりの新入生が落胆するの

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ICONIC / アイコニック ③

ICONIC / アイコニック ③

 一限目の授業が始まった。国語だ。クローン相手に授業をするのが億劫なのか、それとも自らが軽蔑した目で見られていることに気が付いているのか、担当の教員は投げやりな態度で授業を進めていく。生徒に順番に音読をさせ、必要最低限の知識、文法を説明する。しかし不思議なことに、こんな授業でも50分を十分使うのだ。それも、チャイムが鳴ると同時に終わるようになっている。こんな感じなので最初のうちは彼もクローンかと疑

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ICONIC / アイコニック ④

ICONIC / アイコニック ④

 騒がしいカフェテリアの中に入った俺たちは、人混みをかき分けながら注文の受付口へ向かった。
「おばちゃーん!」
先に進んでいた武村が叫んだ。受付カウンター付近の三メートルは人が多くどう足掻いてもそれ以上近づけないため、ここから叫んで注文するのがいつものことだった。問題は、注文が受付の人に聞こえるかという点だ。
「はーい!」
どうやら武村の声は聞こえたらしい。
「カレープレートひとつ!あと和食セット

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ICONIC / アイコニック ⑤

ICONIC / アイコニック ⑤

 昼食を済ました俺たちは、未だ混雑しているカフェテリアからなんとか脱出した。教室までの道のりは長い。
「中辛はどうだった?」
「二度と食べたくねぇ」
「だから言ったのに。“学食の中辛なんて大したことない”、だったっけ?」
そんな冗談を言いながら、俺たちは上階へとつづく階段に差し掛かった。
「もうすぐ発売のTHT、なんかいいのあるか?」
機嫌取り、ではないがあからさまに拗ねている武村を元気づけようと

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ICONIC / アイコニック ⑥

ICONIC / アイコニック ⑥

 学校を出てしばらく歩き、最寄りのシティライン駅に入る。武村のほうが一駅早く降りるため、そのあとの家の最寄駅までの時間は非常に暇である。俺はこの時間に読書をしている。
 本や小説に苦手意識を持つクローンや純身がいるらしいが、俺はその考えにいまいち共感できない。確かに本は文字だらけで一見するとなんの面白みもない紙切れの集まりのようだ。しかし、その中には様々な世界が広がっており、その素晴らしさは表現の

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ICONIC / アイコニック ⑦

ICONIC / アイコニック ⑦

 1時間ほどの昼寝をした俺は軽い頭痛に襲われ、クローン用の頭痛薬を服用する羽目になった。才能の開発よりも頭痛を根絶する機能を開発してくれ、と思う。
 購入者の夫婦のうち、執事の車に乗って帰ってきたのは女性、俺の立場からするに母親のほうだった。執事いわく父親のほうは泊まり込みで働くことになったらしく、帰ってきていないそうだ。
 母親は執事の作った野菜スープを一杯飲むと、すぐに寝室に向かい眠ってしまっ

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ICONIC / アイコニック ⑧

ICONIC / アイコニック ⑧

 朝、眠たい目を擦りながら俺はシティラインに乗っていた。一駅一駅進む毎に乗客が増えていき、二駅もすれば満足に自分の空間を確保することさえままならなくなった。息が詰まりそうな電車に揺られながら、学校の最寄り駅に早く着くことを願う。このままこの群衆の中にいれば、窒息死するのも時間の問題だ。
 人混みをかき分けながら電車を降り、ホームの階段を下って改札口を出る。あとは二十分ほどかけて徒歩で学校へ向かうだ

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ICONIC / アイコニック ⑨

ICONIC / アイコニック ⑨

「ヘルドッグスの閃光だって⁉︎」
「しっ!声がデカい!」
 昼食を持ってきてくれた武村にさっきの騒動を話してやると、やはりこのTHTに飛びついた。
「いや、俺も何かのSNSで見かけたことあるくらいの知識しかないからさ。詳しく教えてくんない?」
「『閃光』…ヘルドッグス社が造った第十八作目のTHTだ。高度武装シリーズの一つ『KATANA』では三作目にあたって、その前の作品『乱舞』や『桜吹雪』に比べて

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ICONIC / アイコニック ⑩

ICONIC / アイコニック ⑩

 翌日、俺はいつも通り学校に行った。朝には武村とも昨日の話についてあまり触れず、THT関連の話を滔々と続けただけだった。
 一限はクローン科だった。
「それまで主流だったヒューマノイドがクローン人間に取って代わられたのは何故か。えぇ〜、佐々木」
「ヒューマノイドに搭載されていた学習プログラムの制御ができなくなったからです」
 その通り、と言いながら先生はホワイトボードに板書を始めた。ノートの紙にシ

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