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ICONIC / アイコニック 番外編

 2060年初頭、それまで「非人道的」だと言われ続けてきたクローン人間の制作が打って変わって推奨されるようになっていきました。そして2085年現在、クローンの制作をする大企業が次々現れ、全人口の3割ほどをクローン人間が占める状態にあります。これはこれからクローン人間を購入しようと検討中のアナタ、今現在のクローン人間市場を詳しく知りたいと思っているアナタのための特集です。是非、ご参考に。

ーヴァールハイト誌記者:元木


①クローン開発企業について

最高品質のクローン開発。こだわり抜いた設計・制作。
ゴールドエッジ社

 ゴールドエッジ社は言わずと知れた高級クローン開発の代表企業です。それもそのはず。2069年の創業当時から常にクローン開発業界のトップを走り続け、その品質も性能も他社を圧倒します。ここまでの高品質を保ち続けられるのはなぜなのでしょうか。これは数刊前、ゴールドエッジのクローン開発部研究者代表 山蔵博士にお話を伺ったものの抜粋になります。

ーここまでの品質を保ち続けるのは大変難しいことだと思われますが、どのようにして開発を行なっていらっしゃるのでしょうか。

山蔵博士「我々開発部は、常に“一番”を目標にクローン開発を行なってきた。他社がクローンに与えられない才能をいち早く与えるために日々遺伝子操作技術の開発•発展を繰り返し、そして完成に満足をしてこなかった」

ー“完成に満足しなかった”とは、どういうことですか?

山蔵博士「我々は常に高みを目指す。クローン開発の山はまだまだ上がある。山登りでたかが二合目に到着しただけで“さあ、帰ろう”とはならないでしょう?我々はまだ登って行ける。誰よりも早く頂上に辿り着かなければならない。そのために、我々は今いる場所に満足してはいけないのだ」

ーなるほど。では、三年前、ゴールドエッジ社は新たな試みとして“オーダーメイド•クローン”のサービスを開始することを発表しましたが、開発部はどのように思っていらっしゃるのでしょうか。

山蔵博士「実は、その企画を提案したのは私なんだ」

ー山蔵博士が。

山蔵博士「ああ。他社がまだ提供できないサービスとしての魅力はもちろん、技術的なチャレンジとしても非常に話題性のある内容だった。もちろん、開発やサービスの設定には四苦八苦したが、現在このサービスを行なっている企業は当社のみ。当社のブランド的魅力を強めるサービスになった」
ヴァールハイト:4月号

 このように、ゴールドエッジ社の開発部は常に高みを目指し、クローン開発に取り組んできました。これこそが、ゴールドエッジ社のブランド力を強めている秘訣なのです。
 このインタビューにも書かれていましたが、3年前の2082年、ゴールドエッジ社は新たなサービスとして“オーダーメイド•クローン”を開始しました。このサービスでは、クローンの顔、最終成長時点での身長をあらかじめ設定することができ、またお好みの才能を与えることができます。才能の数は12個で、世界に一つだけのあなたの望む最高のクローン人間が作れます。

現在ゴールドエッジ社で販売されているクローン人間
○オーダーメイド•クローンサービス
 設計•制作・・・8000万円〜
○エピックグレードシリーズ
 第五世代・・・6000万円〜
 第四世代・・・4500万円〜
 第三世代:改良種・・・4500万円〜
○スーパーグレードシリーズ
 第五世代・・・5000万円〜
 第四世代・・・5000万円〜
○アルファグレードシリーズ
 第五世代・・・3000万円〜
 第四世代・・・3000万円〜

ぜひお近くの正規販売店へ!


安心の高性能。最新モデルが魅力の大手開発企業。
テクノ•カイザー社

 テクノ•カイザー社は世界的にも有名なクローン開発企業の一つです。クローン人間はエピックグレードシリーズからハイグレードシリーズまでのいわゆる“トップグレード”はもちろん、皆様もお求めやすいノーマルグレードシリーズやコモングレードシリーズの“ローグレード”まで取り揃えています(クローン人間のグレードについては後記)。
 テクノ•カイザー社は昨年、2世代前の超高性能クローン“NEXUS”シリーズの改良種の販売を開始することを発表しました。最新種であるNEXUS後継機は高性能THT開発企業で知られるアルファードの自立式思考回路 DRTS800を初期搭載しており、他社のクローンに比べ自我の発達が人間に近くなっています。

 テクノ•カイザー社 期待の新作•NEXUS後継機は数世代前のNEXUSを基に制作されたクローン人間です。このNEXUSは数年前、あのゴールドエッジ社のクローン人間と負けず劣らずの性能で非常に高い評価を得た伝説の機種です。元々テクノ•カイザー社はあまり有名ではなく、クローン開発業界では上位に入り込んでいましたが、売上のほとんどは高性能のTHTが占めていました。しかしNEXUSを開発、リリースするとその高性能•かつゴールドエッジ社よりも比較的求めやすい価格からテクノ•カイザー社はクローン開発企業として一躍有名になりました。そんなNEXUSを改良した新機種:NEXUS後継機は発売から一年が経ちましたが未だ販売台数は右肩上りです。また、NEXUS後継機はハイグレード仕様として、高性能クローン人間の代名詞•カイザーシリーズの名前を冠した“カイザーシリーズ M64/NEXUS後継機“を来月リリースすることを発表しました。この機種にはアルファードの最新自立式思考回路 DRTS1000が初期搭載しており、様々な思考用THTと馴染みやすいように脳が設計されています。

現在テクノ•カイザー社で販売されているクローン人間
○エピックグレードシリーズ
 カイザーシリーズ テクニシャンMk.6・・・5000万円
○スーパーグレードシリーズ
 カイザーシリーズ テクニシャンMk.3・・・4000万円
○アルファグレードシリーズ
 カイザーシリーズ ネオ改良種・・・3500万円
○ノーマルグレードシリーズ
 テクノ•カイザー/ネオ・・・1600万円
 テクノ•カイザー/クロック・・・900万円
○コモングレードシリーズ
 テクノカイザー/ナイト・・・800万円

ぜひお近くの正規販売店へ!


ローグレードをメインに販売。クローン開発の世界的大企業。
セブンス社

 購入希望者に寄り添った価格設定と、安心の性能で世界的に支持されている大企業•セブンス社は、主にローグレードの販売をしています。あえてクローン開発規格で下位のシリーズを開発することで、低価格での提供を可能にしているのです。与えられる才能の数は先程紹介した二社のクローン人間に比べ少ないですが、どれも精度の高いものになっています。
 セブンス社は“ポッシブル”シリーズが有名ですが、現在新作の開発を行なっていることを発表しました。開発中のクローン人間はポッシブルシリーズの価格にできるだけ近づけながら、最新のTHTに馴染みやすい構造にし、与えられる才能の数を増やすことをセブンス社は明言しています。

 ポッシブルシリーズは現在世界中で稼働しているクローン人間の半数近くを占めているヒット商品です。ローグレードでありながら非常に高性能で、才能の精度もとても高くなっています。ゴールドエッジ社も才能開発ではセブンス社の開発部と共同研究したほど、その性能には定評があるのです。そんなセブンス社の新作は現在非常に注目されており、我々編集部も最新情報が入り次第読者の皆様に伝えていこうと思っています。

現在セブンス社で販売されているクローン人間
○ノーマルグレードシリーズ
 ワークアシスタント Type:5・・・600万円〜
 ワークテック・・・500万円〜
 ファミリーテック・・・500万円〜
○コモングレードシリーズ
 ニューファミリー・・・400万円〜
 ホームメンバー・・・350万円〜


我らが番人、安心のボディーガード設計。
ヘルドッグス社

 ヘルドッグス社は元々対人用武装THTを開発している企業でしたが、四年前に自社のTHTをより使いこなす性能をもつクローン人間をリリースしました。現在、このクローン人間にしか換装ができないTHTも販売することが決定しており、更なる技術発展が期待されています。

 自社ブランド•ソウルキーパーシリーズの特徴といえば、専用THTが用意されていることでしょう。ヘルドックス社の対人THTは非常に高性能で、世界各国の軍隊が公式使用しているほどです。許可(免許)さえ取れば中に銃や刀が入っている高度武装タイプのTHTを民間人が持つことができる地域もあります(現時点で日本では一般人が換装することは許されていません)。そんなヘルドッグス社の対人THTですが、実は他社のクローン人間では最高出力でのパフォーマンスはできないのです。これはヘルドッグス社の提供するTHTを制御するには、それに特化した遺伝子操作を行わないと脳の処理が追いつかないためです。外部の脳内THTを追加しても、完全に使いこなすことはできません。そのためヘルドッグス社は自社のTHTを存分に使いこなせるクローン人間の開発を始めたのでした。そうして完成したヘルドッグス社のクローン人間は、なんと現在提供されているTHTのさらに高性能なバージョンですら、最高出力で扱うことができることが明かりました。
 現在販売中のクローン人間•ソウルキーパーは他社のクローン人間を圧倒する対人THTの制御性能•活用性能をもっています。是非、警備企業の社長は雇用の御検討を。

現在ヘルドッグス社で販売されているクローン人間
○エピックグレード
 ソウルキーパー/Size:4・・・6500万円〜
○スーパーグレード
 ソウルキーパー・・・4000万円〜
 ヘルドッグ=オーバー・・・4500万円〜


ハイグレード?ローグレード?エピックシリーズってなに?そんなあなたのために、クローン人間製造規格をご説明致しましょう。

 現在、世界共通で“クローン人間製造規格”が適用されています。規格は全部で五種類あり、上位三つのグレードがハイグレードと呼ばれ、残り二つのグレードがローグレードと呼ばれます。詳細は以下の通り。

○ハイグレード
・エピックグレードシリーズ
・スーパーグレードシリーズ
・アルファグレードシリーズ
○ローグレード
・ノーマルグレードシリーズ
・コモングレードシリーズ
出典:国際クローン開発制御機関情報部

 クローンの性能や価格に応じてグレードが決まります。そのため、ハイグレードのクローン人間は非常に高価な商品になっています。しかし同時にハイグレードは高い性能と才能の数がローグレードを圧倒します。安価で、かつ高性能なクローン人間のご購入がお望みなら、セブンス社のノーマルグレードシリーズ:ファミリーテックがおすすめです。

THTの規格はあるのか?THTのご購入を検討していらっしゃるそんなアナタのために詳しくご説明しましょう。

 THTにももちろん規格がありますが、名称は先程の名前とほぼ同じで、“グレード”が“ギア”に変わるだけです。詳細は以下の通り。

○ハイギア
・エピックギアシリーズ
・スーパーギアシリーズ
・アルファギアシリーズ
○ローギア
・ノーマルギアシリーズ
・コモンギアシリーズ
出典:国際クローン開発制御機関情報部

 こちらもハイギアの方が性能がよく、また価格が高くなっています。購入•換装をご希望の方は、お近くの正規販売•換装手術店へ。


まとめ

 今月のヴァールハイトのクローン人間トピックは「クローン人間と開発企業について」でした。来月には「THTと開発企業」について皆様にお届けしようと思います。それでは、また来月号で。

取材•編集:元木記者

注)この作品はフィクションです。それっぽく書いてますが、おそらく日本に“ヴァールハイト”という名前の雑誌はありません。多分。あったらすみません。

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