恋愛エッセイ : 世界で最も売れた日本の小説となった人間失格 / 大人とは裏切られた青年の姿であると言った太宰治

世界一売れた漫画と言うと、誰もが知ってる通り
日本の漫画家 尾田栄一郎さんのワンピースだ。
世界で最も売れた小説は日本の小説ではないが
世界で最も売れた日本の小説は数年前までは
黒柳徹子さんの、窓ぎわのトットちゃんだった 
2位が、夏目漱石さんの、こころ
3位が、太宰治さんの、人間失格だった。
ところが、ここ数年の間に人間失格の売上数が伸び
1千万冊を超えて、世界で最も売れた日本の小説となったそうだ。
僕は高校1年生の時に人間失格を読み、衝撃を受け太宰治さんのファンになった。今から50年近く前だ。

人間失格はここ数年で売上数を伸ばした。
最初は韓国のZ世代女子の間で何故か大人気となり
ここ5年間、韓国でベストセラーになっているという。もともと韓国の世界文学全集には太宰治さんの人間失格と夏目漱石さんのこころは入っていた。
結局韓国では、今年の始め、LOST 人間失格という
ドラマまで作られた。
韓国では女性を中心に何故ここまで人間失格が評価されたのだろう?

アメリカでも2年ほど前から人間失格が人気となり売れ始めた。きっかけは、伊藤潤二さんがコミカライズした人間失格が話題になったことと、文スト
文豪ストレイドッグスのなかに太宰治さんが登場し人間失格という必殺技をみたいなものまで持っていたことだ。
アメリカでは1948年に、NO LONGER HUMAN
という英語タイトルで、ドナルド・キーンさんが
英訳された人間失格が発売されていたが、これを
きっかけに増刷することになった。
アメリカで太宰治さんの小説が話題となり、特に
人間失格が1番人気になった。

結局、中国等その他の国でも話題となり、累計発行部数が1千万を超え、1千200万冊とも言われる様になり、世界で最も売れた日本の小説となった。

日本と同じ様に、人間失格の評価はどの国でも
大絶賛かその逆だったそうです。 

確か人間失格だったと思うのですが、もしかしたら違う小説かもしれませんが、主人公が女性と心中するのだが、男の方だけが一命を取り止める。
警察でその男を取り調べる担当者が、その男を見て
「これはお前が悪いんじゃない、お前を産んだお袋が悪いんだ。」
と言う。
つまり、女の人にモテる容姿にその男を産んだ母親が悪いと言った。
それほど太宰治さんはイケメンさんでもあったそうです。

東大のフランス語学科の学生さんだった太宰治さんは、18歳の時、初めて関係を持った女性と恋に落ちますが、その女性の裏切りによって破局します。
そして、自殺未遂等の自己破滅型で自堕落な生き方が始まります。その一方で作品を発表し続けていきます。
太宰治さんが1番愛した女性と言われているのが、
奥様だった石原美知子さんでしたが、この他に、
きちんとした形(?)の愛人の女性が2人いました
また、それ以外にもこういう女性がいらっしゃって 
その女性達と5回以上心中しますが、何故か太宰治だけが一命を取り止めることになります。
自分の苦しさを吐露した人間失格を完成させた年、38歳となっていた太宰治さんは、最後の愛人であった山崎豊栄さんと。
小説を書くのが嫌になったのでしにます
という言葉を残し心中して亡くなりました。

この太宰治さんが大嫌いな小説家の方がいました。
川端康成さん、谷崎潤一郎さんと並び、戦後を代表する作家と言われている三島由紀夫さんです。

人間失格を発表する前年、当時37歳だった太宰治さんは、母校である東京大学に講演に行きます。
その時に太宰治と同じく東京大学のフランス語学科の学生さんだった21歳の三島由紀夫さんは、太宰治さんと会うなり、
「僕は太宰さんの文学はきらいなんです。」
と言い、太宰治さんは笑って答えたそうです。

何故 三島由紀夫さんは太宰治さんが嫌いだったのでしょう?
その理由はこんな風に伝えられているみたいです。
小説家なのに芥川賞を受賞しようという野心を持っていて、しかも賞金も欲しがっているから
田舎者が分不相応な役割を演じようとしているから
小説に書いてはいけないことを書いているから。

確かに太宰治さんは芥川龍之介さんを尊敬していて
芥川龍之介さんの文学の継承者になりたいと思っていた。また、当時、太宰治さんは苦しい生活を余儀なくされていて、賞金が欲しかったのも事実だったそうです。
また、太宰治さんは津軽の出身ですが、話す言葉に
訛が残っている等のコンプレックスを持っていたそうです。
小説に書いてはいけないこと書いている、だそうですが、それは三島由紀夫さんにとってだと思います
太宰治さんは、自分が辛いこと、苦しいこと、
人前では当時言えないような恥ずかしい弱音まで
小説に書いています。常に美学のようなものを追求していた様な三島由紀夫さんには許せなかったことかもしれないと思います。

ある時、三島由紀夫さんは師である川端康成さんに 
太宰治さんのことを散々批判したそうです。
これに対して川端康成さんは、こう言ったそうです
「三島、お前がそれだけ太宰を批判するということは、お前は太宰に負けているということだぞ。」
これに対して三島由紀夫さんはこう答えたそうです
「はい、先生、私は確かに太宰に負けています。」
三島由紀夫さんという方は、潔く男らしい方だと思います。後に起こる三島事件はさて置き、
僕はこの言葉で三島由紀夫さんもファンになり、 
三島由紀夫さんの本も読み始めました。

太宰治さんの文学、特に人間失格とい小説に対して好きな人と嫌いな人に分かれます。
僕はこのことに関しては単純に
僕の様に太宰治さんの文学が必要な人は太宰治さんが好きだが、三島由紀夫さんの様に必要としていない人は太宰治さんが嫌い、だと考えています。

大人とは裏切られた青年の姿である
と言った太宰治さんは、こんな言葉も残している

とにかくね。生きているのだから、インチキをやっているのに違いないのさ。  

そこで考えたのは道化でした。
それは自分の人間に対する最後の求愛でした。

太宰治さんは恋愛に関する名言を沢山残している。

人は本当に愛していれば、かえって愛の言葉など
白々しくて言えなくなるものでございます。

人間は恋と革命のために生まれて来たのだ。

恋愛とはなにか。私は言う。
それは非常に恥ずかしいものである。

私は少なくとも恋愛はチャンスではないと思う。
私はそれを意志だと思う。

愛は、この世にしました存在する。きっとある。
見つからぬのは、愛の表現である。その作法である

駄目な男というものは、
幸福を受け取るに当たってさえ
下手くその極みでいるものである。

嫌悪感を感じる言葉もあると思う。だが、不思議と
心に残る言葉ばかりだと思う。
だからこそ、多くの女性に愛されたのだと思う。

僕は三島由紀夫さんの本も読み始めた。
潮騒を読んだ後、金閣寺を読んで驚いた。
内容もさることながら、その美しい文体にだ、
まさに頭の良い人が書いた文章どころか、天才の書いた文章だと思った。
芥川龍之介さんの文学を継承するという意味においては、僕は三島由紀夫さんに軍配が上がると思う。

1969年5月13日、三島由紀夫さんは東大全共闘が待ち構える駒場キャンパスに単身乗り込み、
1000人の学生達を相手に、時には暴力を使ってでも旧体制を打倒しなければならない、という持論を展開し、白熱した議論を行なった。

翌年、1970年11月25日、三島由紀夫さんは
盾の会のメンバー5人と伴に、陸士自衛隊市ヶ谷駐屯地に行き、憲法改正のための自衛隊の決起を呼びかけた後、東大で1000人の学生達の前で仰った様に割腹自殺し45歳で亡くなった。

三島由紀夫さんの小説にも、死という概念が常に存在している。
そういった意味では太宰治さんと共通点もあったと思う。

それ以後、太宰治さんのような作家も、三島由紀夫さんの様な作家も日本には現れていない。

人間失格、まだ読んでいない若い人たちに、
ぜひ読んで欲しいと思う。

最後になりましたが、人気作家の椎名誠さんの 
文壇でのニックネームをご存知ですか?
自殺を禁じられた太宰治、だそうです。









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