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散文の仲間

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ジブラルタル峻が綴る、理性や科学の外側のテクスト。
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2024年1月の記事一覧

散文:自動販売機2024/01/26

散文:自動販売機2024/01/26

 自動販売機がある。
 僕はコインを投入し、アサガオというボタンを押した。風邪薬のようなカプセルがスっと落ちてきた。拾い上げて水無しで服用する。ゴクリ。言葉と想念が頭の中を濁流のように駆け巡る。

 おおお。こういうやつか。その流れに身を任せる覚悟をした。

 目を固く閉じた。流れはまだ止まらない。

 言葉の流れが止まった。終わったのだろうか。よし。次はヒマワリのボタンを押すことにしよう。

散文2024/01/23

散文2024/01/23

 カムチャツカ半島を丁寧に剥がし、プレパラートに載せる。
 万能ねぎが語り出すロバスト性は次第にブロッコリー現象を伴うさつまいもに移行する。ナポリタンはんこに付着したジンテーゼは6億光年の彼方からのビート板だった。それを知らぬ者はいない。
 うまさ際立つうま塩コーヒーの背後でラッキーチュロスは貧窮問答歌を高らかに歌う。
 言うまでもないことだが、四角柱の大群は、ユーラシア大陸横断に成功し、その後で

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小説:虹色の括弧(404文字)

小説:虹色の括弧(404文字)

「上手ひねり飛車送り」を豪快に決めて、あたりめを炙る。
 第96代の調査によると、官費の大半は、瑕疵の隠蔽にあてられている。虹色の括弧はまだ閉じられていない。生木を剥がすかのようでそれでいて悲しくはない心情は、降り積もる牡丹雪に埋没する。
 土俵際の魔術師は最強魔法ニフラムを詠唱し、むしろダルメシアンの群れを呼び寄せてしまう。緩い犠牲と稀なピーチメルバを水槽に入れる。反抗的な冠に短刀を突きつけて、

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小説:半呼吸体とは(421文字)

小説:半呼吸体とは(421文字)

 常識を片目で見る。あるいはできる限り遠くに置く。あいつはそういうことをやっているのだろう。

 スクランブル交差点を渡り切った呼吸体は、イヤフォンのボリュームを上げた。
 正解は誰かのルールにおいての正解であり、絶対的ではないのよ、と三叉路を通り過ぎたペンペン草が喋る。
 ルートの記号を7個集めて、オオトカゲに願う。するとどうだろう。旧邸の鍵が見つかり、みりんで味付けされた縦横無尽体が振る舞われ

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小説:101回目のハンマーナックル(297文字)

小説:101回目のハンマーナックル(297文字)

 朝の日差しをくしでとかす。
 ロッカールームには沈丁花が咲き誇る。

 101回目のハンマーナックルが炸裂し、古代史の副党首が八宝菜を炒めはじめる。
 頑丈なオーロラ。それを美しいとアブラゼミはいつでも吟じる。高音、高音、低音、高音。その声をドミノにして、101人のエキストラが挑む。
 試みの結果は常に二進法に絡め取られてしまい、アフリカゾウが静かに横切るだけのことだ。

 4人バンドの編成はた

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小説:透明な猫(374文字)

小説:透明な猫(374文字)

 誰も持たない道具を使う。それはピッケルの先端を納豆巻きにすることであり、幕末のヒキガエルの鳴き声にフランジャーを掛けて仕上げるものだった。
 遥か遠くに見えるミートパイは、あっけなく情報戦に埋もれ、パラダイムのキャップに嵌め込まれたチゴイネルワイゼンとともに祝杯を上げる。
 漬物石で覆われたエレクトーンがひとりでに鳴り響き、ウーロン茶はそのときだけ、複製物ではないよという表情を浮かべる。
 ミシ

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駄菓子の真実(418文字)

駄菓子の真実(418文字)

 隠れマルコフ作戦を偏微分する。額縁の友達は「それは妥協じゃなくて挑戦だよ」と言う。そのセリフを第五象限にプロットしたまま暮らす。
 
 時間と握手をする龍が、予定調和にかじりつき、真夜中色のアジサイが咲き続けることになる。
 感情という言葉をナノテクノロジーで解体し、まだ問われていない素子に代入する。

 駄菓子の真実を過冷却し、動的粘弾性を計測する。誰も認めようとしないのは承知しているが、パレ

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小説:全て裏表紙の取れた百科事典だと気づく

小説:全て裏表紙の取れた百科事典だと気づく

 花壇を横切ったら、沼にはまった。ちょうど圧壊したのだ。濃霧の中を進むことに慣れていたはずなのに。それを中央分離帯だった頃のテントウムシが嘲笑う。
 ブラスターを打つ。ダブルスチールを遂げる。人情を嗅ぎ分ける。綿棒をぶっきらぼうに折り曲げる。特別なノーマルを食べる。知覚的信念のかさぶたを剥がす。全て裏表紙の取れた百科事典だと気づく。

 カウンター攻撃に対するプトレマイオス朝エジプトはコロボックル

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