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夜の詩シリーズ

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#イラストレーション

夜の詩「特別な夜がきた」

夜の詩「特別な夜がきた」

月の輝く特別な夜がきた

プレゼントを買いに外へ出たら

街はいつもよりキラキラしていて

人はいつもより荷物をたくさん抱えてた

右手にはケーキの箱

左手にはプレゼントの紙袋

顔には嬉しそうな笑みが広がっていたよ

今日という特別な夜には

みんなの頭に大切な誰かの顔が浮かんでる

みんなの心に幸せを願う気持ちがあふれてる

まるで誰かが誰かを想う糸で 世界が繋がっているみたい

そんな風に

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夜の詩「バイバイ」

夜の詩「バイバイ」

中学校のグラウンドが 

オレンジ色の陽に染まってる

校舎の影がそこに伸びて

運動部の子らが走ってゆく

校門をくぐった帰り道

澄んだ空気を吸い込んだら

君の声が聞こえたよ

ファイト オー! と高らかに

吐く息しろく 空にのぼった

一緒になった帰り道

無言で離れて歩いた夕暮れ

君はずっと うつむきかげんで

あの時 なにを思っていたの

バイバイが言えなかった私は

記憶のなかで

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夜の詩「旅路の置き手紙」

夜の詩「旅路の置き手紙」

急に寒くなったねと

言う私に うなずく母の

目じりの皺が優しげだった

きっと いつまでも感謝するでしょう

あなたの子供でいられたこと

もう何もかも嫌になったと

言う私を 叱った父の

拳が固く握られていた

きっと いつまでも覚えているでしょう

あなたの力強い声を

きっと きっといつまでも

忘れることはありません

夜の詩「空と海と陸の、地続きのその果てに」

夜の詩「空と海と陸の、地続きのその果てに」

都会の夜が空を暗くする

ビルの隙間に ほんのわずか

見える星は一つか二つ

ぶ厚いスモッグの層にはばまれ

ああ もしも星の数だけ命があるなら

この場所からでは どうしたって

億千万の人々の 

燃える命の息づきが

そこに そうして在るだなんて

想像することができない

私たちはただ 日々に追われる

食うため 生きるため

体力と時間の限界を超えて

何かを求めずにいられぬその性(サ

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