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ちょうど400円、ポケットに入っていた【ビジネスマン part2】

アケミとは取引先の50周年の記念パーティーで出会った。ひと目で俺はこの人に恋をするとわかった。彼女は聡明で、美しく、その程度と言ったら、普通の男の持つ尺では到底図りきれないものだった。付き合ってその感覚は更に増していった。この人を正しく評価できるのは俺しかいないとどんどんわからされた。だからもう、プロポーズするしか他なかった。
プロポーズを受けた時の彼女の笑顔は、今で見たどんな光景よりも美しかった。ウエディングドレスを着た彼女を見た時などは、この景色を見るために今までの人生があったのだと思うほどだった。

俺は彼女が自由に働いている姿がとても好きだったが、彼女はあっさりと仕事を辞めた。俺がバングラディシュにいても、オーストラリアにいても、仕事から戻ればアケミがいるのは本当に素晴らしい事だ。本当に。
彼女はウォール街で働いていた知識を活かし、株式投資などでお金を増やしながら、家計管理と家事を殆ど完璧にこなしている。それはもう完璧に。俺は仕事に比重をかけていたのもあって結婚するまでは家計管理に関してかなり放置してきたところがあったので、綿密に管理してくれているのは正直かなり助かっていた。しかしだ。購入したものが全て把握されている緊張感は否めない。チョコレートヌガーひとつでさえ見落としたりはしないだろう。こうなるとわかっていたから、仕事を辞めて欲しくなかった、わけじゃないけど。
だからこの400円は確実に俺のタバコに変わらなければない。この400円には俺がここに来るまで朗々と俺の頭を巡っていたアケミへの贖罪の念が詰まっている。これは女神の目を欺いてなんとか捻出した奇跡の400円なのだ。

それにしてもこんなにも鈍臭い少年が、俺の目の前にこのタイミングで現れるなんていう悲劇があって良いのだろうか。アケミにタバコをやめて欲しいと言われた時の絶望は凄かった。タバコは俺の旧友だ。アケミと結婚した時はすべてを失ってもいいと思えた。しかし旧友である彼のことを説得するには時間がかかるのだ。俺にはまだ彼が必要だ。許せアケミ。そして少年よ。

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ビジネスマンpart2は以上です!

こんにちは!げんまいの中の人小出です!
文章のなかでチョコレートヌガーが出てくるんですが、これはスニッカーズですね。なんか海外っぽいお菓子の方がそれっぽくなるかなと思って書きました笑 実際世界をまたにかけるビジネスマンが何食べてるか知りません

ちなみに、敢えてチョコレートヌガーと書いたのはコンプラ的な問題ではなくスニッカーズって書くよりチョコレートヌガーの方がおしゃれな感じがするかなと思ったからです笑
初めはそこをコーヒーヌガーとしていたのですが、調べてもチロルチョコしか出てこないし、流石に気取り過ぎかなと思ってやめました。

日本風にするとなんですかね、やっぱチョコパイとかですかね?

次回part3でビジネスマンは完結です!
お楽しみに!

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