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WEEK 10: アメリカの「共同親権」制度 - ダディ、もう日本人でいちゃ、ダメなの? / NYCで「実子連れ去り」の被害にあった子供たち

CHAPTER 24: INVESTIGATION 


 月曜日

 ニューヨーク市で裁判所で原告か被告になった場合は、市の裁判所ホームページに登録すると、自分の裁判に関しての全ての記録が見れます。

 自分の受信箱があり、そこに保護命令が申請された、保護命令が延長された、といったメッセージが届きます。
 そのメッセージが来ると、登録したメアドに、裁判所からメッセージが来てますよと、受信箱のリンクがメールで送られてきます。
 現時点でわたしの受信箱に届いたメッセージは、母親が申請した保護命令、わたしが申請した保護命令、その後にわたしが申請した理由開示命令、その申請書にサインしたページ、そして、お互いに申請した保護命令が、一回目の審理の後にそれぞれ延長されたという通知。
 この六つだけです。
 
 火曜日

 母親に弁護士がついたとの連絡がなかったので、最高裁に、たくさんの証拠(Exhibits)を添付し、母親の「問題点」を明記した理由開示命令(Order to Show Cause)を申請しました。

 水曜日

 放課後、学校で子供たちをピックアップ。
 地下鉄の駅に向かって歩いているときに、先週末は〇〇というホリデーだったので「〇〇は何をやったの?」と長男に聞いたら「何もしてない」と答えました。
 本当に何もしてなかったのか、それともどこかに行ったけど口止めされているのか。
 どちらにせよ、子供には酷な質問だと気づきました。
 聞かなければよかった。
 後悔しました。

 木曜日

 登校中のことです。
 突然、長男がこう言ったんです。
 「〇〇(次男)は今、デイケアに通っているんだよ」
 びっくりしたので「え!?毎日?」と聞いたら、長男は、色々と説明してくれました。
 平日の月曜日から金曜日まで朝8時ぐらいからデイケアに入れている。
 放課後、母親と二人で次男を迎えに行く時もあれば、母親が次男をピックアップしてから、学校に長男を迎えにくることもある。
 〇〇という駅で降りて橋の方に歩いていくと、3軒デイケアが並んでいてその真ん中。
 通い始めて、今日でもう八日目になると教えてくれました。

 その時に考えました。
 次男がデイケアに入って一週間ちょい経ってから、わたしにこのことを言ってきた。
 言おうと思っていたけど、ただ単に忘れていたのか。母親に言うなと口止めされていたのか。次男が心配だから、長男自身の判断で言わなかったけど、遂にわたしに打ち明けてしまったのか。
 一生懸命、デイケアの場所をわたしに説明したのは、なぜなのか?

 あれだけ次男をデイケアに預けることに関しては、弁護士を通じて反対したのに、決行されたことに怒りを感じましたけど、それよりも、なぜ、長男が一週間も経ってから、これをわたしに言ってきたのか。
 そちらの方が気になりました。

 普通、デイケアに子供を入れると費用がかかります。
 けどネットで調べたら、どうもシェルターとかシングルマザーとかのために、市が発行しているデイケア・バウチャーというのがあり、それを使えば無料で子供をデイケアに預けられる制度があるそうです。 
 ならこのデイケア・バウチャーを受けてくれるデイケアを探せばいい。New York Cityのホームページで調べたら、そのリストが載ってました。
 〇〇駅の近くには6軒ある。
 3軒並んでいるデイケアはない。

 それなら現場に行って確認するしかないと思いました。
 どのデイケアに預けているのかを突き止めても、実質、最高裁の審理までは何もできないと弁護士には言われました。
 けど折角長男があれだけ細かく教えてくれたので、探さないといけないと思ったんです。

CHAPTER 25: STAKEOUT


 金曜日

 午前7時半過ぎに、〇〇駅の近くに行ってみました。
 昨晩、橋の近くにあるデイケアを色々と調べ、一番可能性の高そうな所に目星をつけ、そこから順番に確認していくことにしたんです。
 このやり方なら、一週間もあれば探せるだろう。
 朝はまだ冷え込むので、スタバで暖かいコーヒーを買い、デイケアの入り口から20メートルほど離れた、アパート・ビルの入り口に腰かけました。 
 人生初めての「張り込み」です。
 このデイケアの向かえには小学校もあるんで、交通整理係の女性数人が、車を止め、子供たちを誘導しています。
 こんな所に座ってデイケアの方をじーっと眺めていたら、不審者に間違えられるかも。
 そんな心配をしているうちに、大きな失敗に気づきました。
 コーヒーを飲んだせいか、トイレに行きたくなったんです。
 そうか、刑事さんは、だからいつも二人組なんだ。けど探偵さんはそんなことないのでは。
 そんなことを考えたり、前にどこかの本で読んだ、腰の上あたりにあるはずの、尿意を抑えるツボを押したりして、なんとか我慢しました。
 1時間半「張り込み」ましたけど、母親と次男は現れませんでした。
 
 土曜日

 わたしは家で仕事をしているので、週末でも仕事で気分を紛らわすことができます。

 それでも子供のいない週末は、あ、今子供たちは何をしてるんだろう。
 いい天気だから、公園とか行ってるのかな。
 そんなことを、ふっと考えることが、よくあります。
 
 家にずっといると滅入るから、散歩に出たりもしますけど、わたしの住んでいるエリアは学校がたくさんあるせいか、大半の住民は「家族」です。
 どうしても長男や次男と同じ年齢の子供たちをよく見かけるので、散歩するときは、地下鉄でダウンタウンまで足を延ばすことが多くなりました。

 それならついでに、これから張り込みをする予定の5軒のデイケアの下見に行こう。
 長男は、デイケアが3軒並んでいると言ってたけど、ただ単に、入り口が三つあるデイケア、または小学校や中学校が近くにあるデイケアかもしれない。
 とりあえず橋に近いデイケアから、順番に回って行こう。

 やっぱりGoogleマップで見るのと、実際に現場に行くのとでは、全然違いました。この日、1軒目に行ってみたデイケアの1ブロック手前に、もう一軒のデイケアがあったんです。そして、すぐ近くにアパートの入り口があり、その隣がプレイグラウンドだったんです。
 これならデイケアが3軒並んでいると、長男が思ってもおかしくない。

 ここに違いない。
 確固たる根拠があった訳ではないんですけど、直感でした。
 月曜日の朝は、このデイケアを張り込もう。
 今度はまずトイレに行き、飲み物はなしで。
 

 To be continued…..(続く)

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