「探究について」~対談part3~
おもちゃクリエーター 高橋晋平 さんと対談をさせていただきました。
前回の記事「探究について」対談part2からの続きです。
※「探究について」対談part1が最初の記事になります。
よろしければ、最初からお目通しいただけますと幸いです。
Part3では、探究についてを晋平さんが具体的にお話しくださっています。『1日1アイデア』の著者でいらっしゃる晋平さんだからこそ、その視点には大変興味深いところです。
発想が生まれるところはどこから?
何を基準に考えてみるといいのだろうか?
そんな部分へのヒントになると嬉しいです。
これらを一緒に考えていただけましたら幸いです。
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晋平:探究って、結局は「自分」という人間の探究なんですよね。僕だって小学校の頃、別に天気のことを知りたいとか、水質を知りたいなとか、思っていた訳ではないんですよ。
科学みたいなことに漠然と憧れていて、カッコいいなと思っていて、自由研究をしている自分が好きで、いずれプログラミングが好きだということが分かって、ゲーム開発に興味を持って……という流れで育ったんですよね。探究活動とは、例外なく自分を探究するためだと、僕は思っていますね。
上の子が低学年のときに、自由研究を何にしようかという話になって、僕から「心の観察をしよう!」と提案したんです。「毎日何が起きて、心で何を思ったかを記録せよ。」みたいな。
当時小学3年生だった娘がそれをやって、別に何も感じなかったかもしれないですけど、自分を探究するという活動をしてみて欲しかった。
探究学習で、住んでいる地域のSDGsに貢献する探究テーマを設定しよう、みたいにガイドされることがありますよね。テーマは何でもいいんですが、「その探究活動を通して、私はこれが好きなんだ!」ということに気づくのが、僕が本当に欲しい結果なんですよね。だから、僕が全国の学校でやっている探究の授業は、必ずそのオチにたどり着く仕掛けになっているんです。
探究のテーマは、「自分の欲求を叶える方法」がいいです。自分の欲求を見つけて、それを満たすにはどうしたらいいのかを考えると、それがそのままテーマになります。
たとえば、眠れないんだったら眠れる方法を探究すればいいし、いつも落ち込みやすいんだったら、何に対して一番落ち込むのかを調べればいいし……みたいな感じです。
自分が開発したカードゲーム「アンガーマネジメントゲーム」もまさにそれの結集ですよね。何が起きたら一番イラっとするかを、遊びながら、笑いながら発見するっていうゲームで、かなりヒットしています。
その商品開発自体がまさに僕にとっての探究だったんですよね。自分がイライラしにくくなりたかったんです。探究のテーマ設定は、下手すると、自己探究と距離が遠いものになってしまったりします。
川端:そうですね。子ども達にとっても、やらされ感があるとなんとなくやる気が失せてしまいますよね。そんな中、高校生の探究活動が始まる時は、生徒達と言うより、先生達の方かびっくりしたんじゃないかと思っています。「文科省は生徒に何を求めているんだろう?」みたいな感じだったと思うんですよね。
どういった視点で探究に向き合わせるかということも、課題設定と併せて先生方も模索されていらっしゃるのではないかと思っています。生徒自身の問いについては本当に多々ありますから。
晋平:自分の悩みごとが解決するとか、そういうことですよね。ご一緒したあれと同じですよね。flier book camp。
人生が嬉しくなるテーマを設定したら、もはや勝手に回るだけなんだということです。
川端:そこが本質的な部分でとても大切だと思います。文科省のホームページの中に「総合的な学習(探究)の時間」というものがあるんですけど、そこに「今、求められる力を高める総合的な探究の時間の展開(高等学校編)」というページがあるんです。そこには、実践的な内容も事細かに記載されているのですが、実際に現場ではそう簡単にはいかない。
晋平:なるほど。
川端:とりあえずやってはみるものの、うまくいかなくて教員・生徒共に悩んで、私みたいな人が呼ばれるみたいな感じになるのだな、と思うんです。それを今ここで話していたとしても、どれだけの人が分かるかなというか、我が事のように合点いくのかなっていうところも、まだまだ難しいところかと思っているんです。
晋平:けれど絶望的でもなく、時間とか会話でだいたいのことは解決するんですよね。何でも実験からしか始まらないということを、voicyとかでも僕はよく言ってますけどね。何か適当にやってみたら、「あれ?楽しいぞ!」みたいな感じで、実際はそんなもんじゃないかなと思うんですよね。
自分だって偶然の産物でしかないわけで。たまたま秋田県に生まれて、たまたまコロコロコミックを読んだらミニ四駆とかゲームボーイとかが載っていて、たまたまそれに人一倍ハマったからこの職業を選んだだけなんですよね。そういった意味で、自分を見ることができるって大事ですよね。
川端:自分のその興味がどこに向いてるのかというところを知ることも、それすらも分からないと悩んでる人たちが多いような気がするので、「探究活動」というものが、そこに向き合う時間だと考えてもいいのかもしれないですね。
晋平:特に中・高の授業のリクエストでは、SDGsの文脈を入れて欲しい、社会課題を解決するテーマにしてほしいとか、地方創生とか、色々なオーダーを頂くんです。もちろんそのオーダーには応えるカリキュラムを作るんですが、その結果、自分のことを知れる結果にはたどり着いて欲しいんですよね。
社会の誰かを助けたいと思うのと同時に、自分も幸せにするために、自分をお客さんとして見ながら、活動をしてみて欲しいんですよね。
川端:他者と共に、自分自身も……ってことですよね。
晋平:そうです、そうです。それが分かって探究なんだと。それが分かって初めて社会で役に立てる行動の爆発力が生まれるはずなんですね。
川端:確かにそうですよね。それが分からないと、本来自分が持てる力は、なかなか出ないと思いますね。
晋平:はい。
川端:そこがなくて結局やらされ感でしかないから、本当の力というか、ベクトルが全部そっちに向いていかない感じになってしまうんですよね。だって好きなことって、だまっていてもついつい夢中になってやるじゃないですか。大人も子どもも時間を忘れて。やっぱりそこじゃないかなと思いますね。
今日はお忙しい中、探究のみならず子育てのお話しにいたるまで、色々お話しをしてくださって、本当にありがとうございました。
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