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16.受診勧奨の落とし穴

最初に

産業保健活動において受診勧奨する機会はとても多いです。健診結果などから、血管疾患のリスクが高い方に対して受診勧奨を行い、病院を受診してもらい治療につなげるというのはとても重要ですよね。しかし、ここには多くの落とし穴がありますので説明をしていきます。

なお、精神疾患(メンタルヘルス不調)でも受診勧奨することはありますが、この記事では主に、健康診断受診後の受診勧奨を想定して書いていきます。

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よくある受診勧奨の落とし穴 illustrated by @hanalife2

言われるがまま受診という落とし穴

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言われるがまま受診したので、本人も受診理由がわかっていない外来の一コマ

当然かもしれませんが、病院受診には本人の主体性が重要です。原則論としても「自己決定権」は尊重されるべきですし、産業保健現場における受診勧奨においても、「受診する」という行為は自分で決定するべきことです。しかし、産業保健現場では、受診勧奨を半ば強制的に受診させているケースも珍しくありません。そして、産業保健職自身が半ば強制的に受診させていることに気がついていないこともあります。自身が行なっている受診勧奨が対象者にとってどのような位置付けなのかを考えてみることが非常に重要です(従業員さんとの面談自体も、半ば強制的に呼び出していますよね)。また、受診勧奨というものは受診させることがゴールではありません。受診した先の、意識変更や行動変容、健康状態の改善が必要です。だからこそ、受診勧奨の際には、本人に主体性を引き出し、自己決定としての受診が実現できるように努力する必要があります。

腹落ちなき受診という落とし穴

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産業医に受診しろと言われたので受診する方の外来の一コマ

産業医が労働者に「必ず受診してください」と伝えた場合、結果的には多くの労働者が受診はしてくれますが、本人が受診の必要性について納得・腹落ちせずに嫌々・仕方なく受診するケースもまた往々にしてあります。産業医から指示されたから受診しましたというケースです。しかし、本人が自分の健康上の問題を理解することもなく、産業保健職が受診を指示したから受診するといったケースでは、本人の意識・行動変容は伴いません。そして、その先には通院・内服の自己中断が起こりえます。特に、高血圧や糖尿病のように症状の出ない病気については、通院・内服のメリットを感じにくく、時間やお金のコストだけがかかりますので、通院・内服の中断が起きがちです。本来の目的である血管疾患のリスク低減のためには内服の継続が必要です。なんとか受診につなげたとしても、通院・内服の中断が起きては元も子もありませんよね。だからこそ本人が納得(腹落ち)した上で受診する必要があるのです。本当に受診が必要な方には、なぜ受診が必要なのか、どの項目がどれくらいの異常なのか、改善すべき生活習慣は何か、将来的に働くことにどう支障をきたすのか、などを根気強く手間暇かけて説明し、本人が受診する理由を納得する(腹落ち)というプロセスが極めて重要です。その際には、受診したくない理由をヒアリングすることも有効です。本人の「自分は受診が必要な異常所見がある」ということについて納得感を醸成しながら、受療行動や、適切な行動変容につなげることが大切です。

*個人的には「納得」よりも、「腹落ちする」という言葉が好きです。納得というと、なにやら説得しているような感じがするからです。腹落ちのほうが、より主体的に理解したような表現のように感じます。

受診の功罪の落とし穴

 受診勧奨すればよい、受診したらよいことだらけ、と思っている方がいるかもしれませんが、病院を受診することによるデメリットもあることに注意が必要です。特に、産業保健職の受診勧奨には強制力が働いてしまう(介入)からこそ、受診のメリットだけではなく、デメリットも知るべきです。デメリットとしては、以下の6つが挙げられますが、実際にどのようなデメリットが発生しているかは、受診勧奨して受診した従業員から、実際の受診の感想を聞いてみるのも有効だと思います(不満たらたらの方も実際にはとても多いんですよね)。
①時間的負担
受診する本人の貴重な時間を使って受診するわけですから時間的負担がかかります。悲しいかな、病院受診は、さくっと終わることは少なく、数時間から半日程度かかることもあります。人によっては貴重な有給休暇を使って受診する方もいます。
②経済的負担
当たり前ですが病院を受診するとお金がかかりますよね。受診代、再検査・精密検査代で、数千円は一般的にかかるでしょう。場合によっては1万円近くかかることもあります。受診報告書を提出させている場合には、病院によっては書類代が請求されることもあります(高いところは5000円もかかります。「病院 書類作成費用」で検索してみてください)。
③病院への抵抗
病院を受診しても本人がメリットを感じられなければ、病院に対してマイナスのイメージを抱くことがあります。このことは、本当に病院受診が必要になったときに病院受診してくれなくなる、受診しても無駄だ、という考えに陥らせるリスクがあります。受診しても2時間待って3分診療で帰されたというのはよく聞く話です。病院嫌いをつくっているのは受診勧奨のせいかもしれません。
④産業保健部門への不信感
病院を受診しても本人がメリットを感じなければ、「なぜ自分は受診させられたのか」と産業保健部門に対して不信感を抱いたり、憤慨したりする懸念があります。わざわざ時間とお金を負担して受診したのに、「別に受診する意味がなかった」と外来で言われることもあります(本当によくあるんです泣)。だからこそ、病院を受診する意義を本人に丁寧に説明し、腹落ちしてもらう必要があるのです。
⑤過剰診療
検査や治療はときに過剰診療や不安感につながる懸念があります。放射線曝露や医療事故に遭うリスクもありますよね。便潜血陽性からの大腸カメラ、胸部X線検査の陰影からの胸部CT検査などが挙げられます。これらは全て医療側の問題だと思うかもしれませんが、受診勧奨した側には責任がない、ということにはならないんですよね。過剰診療を生むのは安易な軽率な受診勧奨だったりします。No More thoughtless Jushin kansho
⑥レッテル
病院を受診することは、「病気」というレッテルを貼ることにもなりかねません。もちろん診断を下すのは外来の医師ですが、受診勧奨自体にも、似たような意味があります。血圧や血糖に関しては脳・心臓疾患のリスクに直結しているのでまだいいと思いますが、健診項目によっては、本当に受診するべきか、受診したことが本人にとってハッピーになるどうかは分かりません。例えば、AST、ALT、γGTP、LDLコレステロール、中性脂肪、尿酸といった項目です。生活習慣に対する治療薬の多くは、結果的には数十年にわたり長期的な服薬することが多いですよね(もちろん就労環境の変化や生活習慣改善により治療薬が不要になる方もいますが)。つまり、受診勧奨して病院受診した結果として、その方が数十年に渡って薬を内服することになるのです。エビデンスのない薬や、血管疾患には直結しない薬をダラダラと服用している方も見かけることがあります。ただの感冒症状に不必要な抗生剤が処方されているケースもありますが、あれも不要な受診勧奨の副産物だと思います。医療現場では高齢者のポリファーマシーが問題になっていますがそれおと同じですよね。
*「インフルエンザ対策の落とし穴」でも不必要な受診勧奨について書いています。

受診でヘルスリテラシー向上の落とし穴

 病院を受診することでヘルスリテラシー(いわゆる健康意識)があがるのではないかという期待を持っている方もいます。また、病院で再検査・精密検査することで「健康度」が上がるのではないかという期待もあるかもしれません(「健康度」なんて概念はそもそもないのですが、漠然と病院を受診することで健康になると捉えている方がたまにいます)。しかし、悲しいかな、病院を受診したところでヘルスリテラシーは上がらないでしょう。多くの場合、受診勧奨されて受診する方は、なぜ受診する理由が腹落ちしておらず嫌々受診しています。受診勧奨されずとも自分が受診するべきかどうかを理解して、自分から進んで・望んで受診した場合とは全く状況は異なります。むしろ、主体的に健康管理しなくなる懸念すらあります。つまり、産業保健部門から受診勧奨・呼び出しされないから大丈夫なんだと勘違いしてしまうこともあるのです。健康支援をしたいはずだったのに、過保護な介入により本人の主体性を奪ってしまったり、管理するための受診勧奨に陥ることもあるのです。受診勧奨して受診報告させて、というやり方をしている場合には、特にそういう懸念に注意してください。

薬が処方されないという落とし穴

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産業保健職が「治療薬が必要」と受診勧奨したのに、主治医から「治療薬は不要」と言われてしまう外来の一コマ

 健診結果から「治療薬が必要な所見です」と伝えて、労働者を病院の受診に繋げたとしても、病院では薬が処方されないことも往々にしてあります。これは臨床ガイドライン通りに受診勧奨をしても、薬が処方されないといったことがあります。もちろん外来で行われる保健指導(食事療法や運動療法、禁煙指導、禁酒・節酒指導など)も立派な治療とは言えるのですが、本人からすれば、せっかく病院を受診したのに、「薬剤は不要→まだ病気ではない」という考えになってしまいます。このように産業保健職が「治療薬が必要」という見解と、主治医の「治療薬は不要」という見解とが異なってしまうこと(見解の齟齬)は労働者からすれば混乱しますよね。そして、産業保健職に対して不信感を抱いてしまうこともあるのです。だからこそ、受診勧奨の際には、薬剤が処方されない可能性も念頭に置き説明したり、主治医にお手紙で判断材料(経年的な健診データや自宅血圧データなど)を提供したり、当該疾患に詳しい病院に紹介するといった工夫が必要になります。特に血圧が高い方の場合には、健康診断の値だけではなく、家庭や職場で血圧測定をしてもらい、血圧が高いことを見極めてから受診勧奨することも有効です。産業医と主治医の間に齟齬が生じないように「診断と治療の落とし穴」にもご注意ください。
 なお、過去に経験したり聞いたことがあるのは、血圧が180を超えていても薬が出なかった、血糖が300を超えていても経過観察になった、LDL260なのに大丈夫という返事がきた、ということもあります。便潜血陽性で消化器科を受診したのに、便潜血の再検査をして帰されたということもあります。さすがにこれだけの異常値なんだから薬が出るだろうと思っていても、治療が開始されない可能性がありますので注意してください。後述の「生活習慣病に熱心な医療機関と連携する」というのは、こういうことも起きるからだと思います。

「要治療」判定の落とし穴

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要治療と判定されているのに、外来では治療不要といわれてしまう

 受診勧奨する健康診断の数値の重篤度が低い(リスクが低い)ときに陥るのがこの落とし穴です。健診結果から、健診機関の基準に沿って「要治療」と判定されていても、実際には薬剤治療の必要性が高くない場合があります。その場合には、せっかく受診したにも関わらず、外来で大丈夫と言われてしまい、その後の受療行動に影響が出てしまいます。つまり、本人からすれば、同じ「要治療」判定で大丈夫と過去に言われた経験を引きずってしまい、その後大きく悪化したときにも「まだ受診はしなくてよいんだ」という勘違いを引き起こします。「前にも血圧が高くても大丈夫だと言われたのに、今年の異常でも同じようにまだ経過観察と言われるに違いない」といったことが起きるのです。
 これは、ある種の行動変容や治療意欲の惰性感(イナーシャ)と呼ばれます。受診勧奨の際には丁寧な説明とともに、リスクが高い人にしっかりと絞るということも重要です。

勧奨度合いの落とし穴

 同じ受診勧奨といっても、その勧奨度合いは言い方ややり方で異なります。例えば以下のようなものがあり、上から下にトーンは弱くなっていきます。

 強制  :受診しないと就労は許可できません
 ほぼ強制:~~までに必ず受診してください
 お願い :受診してください
 推奨  :受診した方がよいと思います
 任意  :気になるのであれば受診してみてください

また、受診後面談や受診結果報告などの「フォロー」を設定するかどうかでも勧奨度合いが変わってきます。脳・心血管疾患発症の予見性が高い場合や、業務に起因する異常・悪化が疑われる場合には、安全配慮義務に関わりますので強いトーンの受診勧奨になり、受診結果や治療効果の確認のフォローが必要です。一方で、そうではなく法定外項目や、自己保健義務の範疇である場合には弱いトーンの受診勧奨になります。受診することは手間・コストもかかりますし、過剰診療に繋がる懸念もあります。なんでもかんでも強いトーンで受診勧奨することは、過介入となりえます。産業保健職自身がどのような度合いで勧奨しているのかということは意識する必要があります。

健診目的無視の受診勧奨の落とし穴

 「健診の目的の落とし穴」にも書いている通り、職域の健診の一番の目的は「働けるかどうかを判断するため」です。そのため、受診勧奨も、「働けるかどうかを判断するための受診勧奨」であったり「安全に働くための受診勧奨」が目的となるべきです。そのため、「健康意識を高めるための受診勧奨」、「もっと健康になるための受診勧奨」、「早期発見のための受診勧奨」とすることは本来の目的からずれているということになります。もちろん、それらは、結果的には安全に働くことにはつながりますが、それを主目的にすることはやりすぎになる可能性があります。つまり、健診結果が要精密検査や要再検査、要治療という異常所見だからといって、なんでもかんでも受診勧奨することはやりすぎになりやすいと言えます。産業保健職としての受診勧奨は、まずは「働けるかどうかを判断するための受診勧奨」であったり「安全に働くための受診勧奨」を目的としましょう(もちろん、リソース次第で幅広く受診勧奨することはありですが、優先順位が常に意識する必要があります)。

文脈無視の受診勧奨の落とし穴

 皆さんが行っている受診勧奨はどの文脈で行っていますか。安全配慮義務の文脈でしょうか、それとも自己保健義務の文脈でしょうか。前者であれば、「安全に働けるかどうか」でしょうし、後者であれば「健康を維持・増進するため」です。皆さんはそのことを認識していますでしょうか、言語化できているでしょうか、さらに、受診勧奨する対象者はそのことを認識していますでしょうか。ただ異常所見だから受診勧奨するということでは、文脈無視の盲目的で闇雲な受診勧奨と言えますのでご注意ください。安全配慮義務に関わるレベルを考える上で参考となる数値は「就業制限の落とし穴」をご参照ください。

管理のための受診勧奨の落とし穴

産業保健職が行う「従業員の健康管理」として受診勧奨を行う際に、陥る落とし穴として、「管理のための受診勧奨」があります。これは、対象者のメリットや科学的根拠を基に行うのではなく、企業としてルールだから行っている受診勧奨です。例えば、健診機関の判定(要治療・要精密検査判定)を全てそのまま適用して、受診勧奨を行ったり、特に使う目的もないのに受診報告を提出させたり、といったものです。そして、このやり方の場合には、説明も不足してたり、本人の主体性や、腹落ちを無視していることがほとんどです。もし、この記事を読んでくださっている方が担当する企業で、そのような受診勧奨を行っている場合には、できるだけ早くそのような受診勧奨を止めていただきたいと私は考えます。前述してきたとおり、管理を目的にした盲目的な受診勧奨は不幸をつくりえます。産業保健職が関与することで、有効な受診勧奨を行っていただきたいと切に願っております。

法定外項目の受診勧奨の落とし穴

 職域健診は、労働安全衛生法に定められた健康診断であり法定健診と呼ばれ、これらの項目は法定項目です。

労働安全衛生法に基づく 健康診断を実施しましょう ~労働者の健康確保のために~

一方でそれ以外の項目として、血液検査(Cre、BUN、アルブミン、尿酸、白血球、血小板など)や、胃部X線、眼底検査、腹部超音波検査、がん検診(便潜血、PSA、婦人科検査、腫瘍マーカーなど)、感染症(HBV、HCV、HIV、梅毒など)は法定外項目です。これらの検査は、そもそも労働者が安全に働くために行っている検査ではなく、あくまで会社や健康保険組合が独自に福利厚生として行っている検査であり、本来は任意検査です(本人の受診義務はない)。つまり、労働安全衛生法に定められた健診項目(法定項目)ではなく、「働けるかどうかを判断するため」の検査ではないわけです。一方で私たち産業保健職は、これらの法定外項目の結果についても受診勧奨を行うことがほとんどだと思います。さて、ではこれら法定外項目に対する受診勧奨はなんのために行うのでしょうか。端的に言えば、これは自己保健義務のためであり、健康の維持・増進のためです(つまりは福利厚生)。そのため、特に本人の受診に関する自己決定権、任意性が重要であり、企業として会社のルールで受診させる・安全配慮義務という大義名分で受診させる(半強制的に受診させる)、ということにはならないものになります。しかし、実際にはこのあたりはごっちゃになっていることが多いと思います。本来は、あくまで企業として口出しできるのは、安全に働けるかどうかの文脈に限られます。受診することも功罪がありますし、本人の時間的・経済的負担もあるものですので、法定外項目の受診勧奨については、これらのことを分かった上で行ってください。
こちらの記事もご参照ください:
がん検診の落とし穴
安全配慮義務の落とし穴
健康情報の落とし穴 」(有料記事)

科学的根拠なき受診勧奨の落とし穴

 残念ながら、ほとんど全ての健診項目は無症状者に対するスクリーニング検査をすることで、その疾患による死亡率を下げるという科学的根拠はありません。心電図による心筋梗塞、脳ドックによる脳卒中は代表的なものです。科学的根拠のない検査を受けて、その検査で異常所見があるから受診勧奨することが対象者にとってプラスになるかどうかは誰にも分からないのです(むしろマイナスになることも)。腹部超音波検査のような侵襲性のない検査であっても、精密検査を受ければ侵襲的な検査が待っているかもしれません。受診勧奨は無侵襲だと思うかもしれませんが、不必要な検査に誘導すればそれは侵襲的です。検査の結果、偽陽性や偽陰性となるかもしれず、その結果としてその人を不幸に陥らせる可能性もゼロではないのです。受診勧奨することが本当にその人にプラスになるのだ、もしくはメリットとデメリットを考えてメリットが大きいのだ、ということが説明できなければならないとすら思います(非常に難しいですけどね)。「地獄への道は善意で舗装されている」という言葉があるように、善意で受診勧奨しているんだ、ということだけではダメで、受診勧奨した先にメリットがあること、地獄ではないことを合理的に説明できる必要があります。そして、自分のしている受診勧奨が、実は地獄に誘導しているのかもしれないという内省が必要だと思うのです。少し言葉がキツいと感じるかもしれませんが、予防医学は命に関わっていないからと楽観的で安易な軽率な受診勧奨をしている方も多いので、あえてキツめな言葉を選びました。
参考:「がん検診の落とし穴」「産業保健活動の侵襲性を考える

「生活習慣病」の落とし穴

 私たちが何気なく使う「生活習慣病」という言葉は、ときに高血圧や糖尿病といった病気が全て生活習慣に起因し、本人のだらしない生活のせいだ、本人が怠けているからだ、というミスリードを招きます。詳細は、以下の記事に譲りますが、産業保健職が日々何気なく使う言葉にも落とし穴が潜んでいることが知っておくとよいと思いますし、受診勧奨の際にも注意してください。

おまけ

 私たち産業保健職は、労働者にアプローチするという非常に重要な役割を担っており、それは血管疾患やがん疾患の予防や早期発見などに貢献することができ、とてもやりがいのある仕事だと思っています。産業保健活動は健康診断を軸に展開することも多いでしょうし、受診勧奨も頻繁に行われます。しかし、多くの労働者にとって(労働者以外もそうだと思いますが)、病院を受診することは、予想以上にハードルは高いものです。忙しい、面倒くさいという理由だけではなく、病院そのものに対し心的距離感を持っている方もいます。安易な受診勧奨は、前述の通りマイナスの結果(デメリット)を引き起こす可能性があります。だからこそ、産業保健職という専門家が介することで、受診勧奨の対象者を見極めていき、企業や労働者双方の利益を最大化する必要があるのだと思います。

参考資料

労災疾病臨床研究「主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究」では受診勧奨の10か条が報告されていますのでご紹介します。

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上記を私なりに少しだけ言い換えると次のようなものです。受診勧奨のヒントとしていただければ幸いです。
1ハイリスクの見極め
2未受診理由のヒヤリング
3医療機関の選定
4受療継続性の確認
5薬物療法のタイミングの見極め
6安全配慮義務
7粘り強く
8本人から引き出す
9受診後もフォロー
10実現可能性の確認

参考資料2

第1回 第4期特定健診・特定保健指導の見直しに関する検討会 資料
資料2-2 予防・健康づくりに関する大規模実証事業(特定健診・特定保健指導の効果的な実施方法に係る実証事業)

健康診査・保健指導における健診項目等の必要性、妥当性の検証、及び地域における健診実施体制の検討のための研究
健診項目文献レビュー
特定健康診査・特定保健指導の職域文脈での対応に資する文献調査

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