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エッセイ

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#冬

明るくて、少しだけ寂しい

明るくて、少しだけ寂しい

北国の冬の夜は明るい。

皆が陽気という意味ではない。
光が明るいのだ。

それは、あたり一面を真白に覆った雪のせいだ。

流れる車のヘッドライトは、真白な道路に光のウェーブをつくり出し、テールランプはゆらゆらと路に揺れている。
信号の光、街の灯が、その白に眩しく反射し、街行く人々の服装がダーク系の色が多いのと対象的に、街はなんだか明るく華やぐ。
いつもの街、いつもの路がまるでステージの上みたいに

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真夏には冬を思うのです

真夏には冬を思うのです

暑い。
あぁ、今は夏なんだから当たり前か。
やっぱり夏ってこんな暑かった、よな…

今日もまた、暑い一日だった。

茹だるような夏の一日。
そう、あの日も。
まあ、そんな思い出の夏も、もちろんあるにはある。

でも不思議と、夏の最中に夏の記憶を思い出すことは少なかったりする。
暑ければ暑いほど。
今日も、こんな暑さの中で懐かしく思い起こされるのは、あの冬の、あの日のことだったりするのだ。

今こう

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女雪と男雪

女雪と男雪

雪は、降る月によって女性の雪、男性の雪とその表情を変える。

11月の初雪から12月にかけての雪は、女性の雪だ。
ふわりふわりと舞い落ちる雪は、なにかこの街に住む人々に微笑み掛けてくれているようだ。
子供たちがはしゃいで外に駆け出せば、ニコニコと見守る母親のように。
時に、寂しげな男の肩に優しく舞い落ち、そっと癒してくれる。楽しげに着飾る女性には、連れだった友達のように楽しげに舞い落ちるのだ。

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冬はやさしく告げられる

冬はやさしく告げられる

この街には雪が降る。
そしてこの街の秋の終わりと冬の始まりは、初雪が告げる。

毎年11月も近づきこの時期になると、地元TV局の番組では、頻繁に初雪の話題がニュースとなる。普段の会話でも、やれ峠に雪が降っただの、雪虫を見ただのと話題にあがることが多い。
北の街で暮らしていると、雪は生まれた時から身近な存在だ。
そんな人々にとっても、この初雪だけは、毎年どこか新鮮な驚きと嬉しさがあるものだ。
年甲斐

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