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嘘つきの始まり物語

昔々あるところに、
小さな女の子がいました。
 
女の子はせ目がちで、
いつも浮かない顔。
 
小学校に上がるまでは活発で、
意思表示をハッキリする子でした。
 
でも今は…
人の顔色をうかがい、
おびえながら生活しています。
 
小学校に上がると女の子は、
毎日、日記をつけさせられてました。
 
でもクラスには…
他に日記をつけてる子はいません。
 
毎日書いて…
翌日、先生に提出ていしゅつ
 
すると先生から、
ひと言コメントがえられ、
ハンコが押され戻ってきます。
 
学校から帰ると、
両親がそれをカバンから取り出し、
満足気まんぞくげながめます。
 
女の子に…
ひと言も声を掛けることなく…。
 
女の子は日記には、
起きたことしか書きません。
 
テストでした。
虫がいました。
花が咲いていました。
ドッチボールをしました。
 
気持ちはそこには書きません。
 
いえ、書けません。
 
だって…
学校や同級生が嫌とは書けません。
 
ましてや…
両親が怖くて大嫌いなんて書いたら…
 
でも、ある日の晩。
 
女の子は布団の中で泣きました。
こらえきれなくて泣きました。
 
「学校…いぎだぐないよーー!
 もうヤだよーー!
 死にだいよーー!」
 
そしてその声を…
偶然、両親が聞いてました。
 
翌日。
 
学校に両親がいました。
担任の先生と何か話をしています。
 
その日の午後。
 
先生は女の子が嫌だと思ってることを、
クラスのみんなに伝えました。
 
そして翌日…
女の子は益々、学校が嫌いになりました。
 
状況じょうきょうは…
前よりもっと悪くなりました。
 
女の子は思います。
 
大人は誰もがたよれるわけじゃない。
 まずは…
 自分が強くならないといけないんだ

 
そうやって…
大人になった女の子。
 
ある日。
 
本棚の奥から、
当時の日記を見つけます。
 
何を書いたか、
すっかり忘れていた女の子。
 
(あの頃…
 あのつらかった日々…
 私はどんな気持ちで…)
 
日記を開き…
読み進めます。
 
でもそこには…
ウソしか書いてありませんでした。
 
うれしくなかったこともうれしく。
たのしくもなかったこともたのしく。
 
悲しかったこと…
苦しかったことは…
1文字もありませんでした。
 
そして現在、女の子は…
フィクションホラ話の女王と、
呼ばれるようになりましたとさ。
 
おしまい。
 

このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。 

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