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〜第1章 営業成績がトップになっても、 なんで給料が上がらないんですか?〜▷給料が安いので、辞めることにしました

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【前回までのお話】
〜第1章 営業成績がトップになっても、なんで給料が上がらないんですか?〜
営業成績はトップなのに、なんで給料が上がらないんですか?
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▷▷社長から「贈る言葉」

4月になり、新しい年度になったものの、僕のやる気は、回復の兆しも見えず、会社にいても毎日ただただボーっとすごしていました。
「外回りに行って来まーす」と言いながら、車に乗り込もうとすると、またもワイパーに紙が挟んであります。紙にはこう書いてあります。
「目先のことばかりでなく、3年後の自分をイメージしてみないか?」

またか。どうやら僕は、自己啓発書にあるような説教をメモに書き残していく変なヤツにつきまとわれているようです。しかも、やたらと僕の字を真似るのがうまいので、もしかして身近な人なのかも。僕の成績を妬む同期か?
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それにしても、「今」に不満たらたらなんだから、3年後なんて見えるわけがないのに。もう、やる気もなくなっちゃったし、辞めよっかな。
思い立ったら行動に移すのが早い僕は、辞表を書いてスーツの内ポケットに入れま した。文面はテレビドラマでよく見ていた、お約束の「一身上の都合により~」。
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ただ、「最後に、入社式以来、会ったことがない多摩地域にある店舗を束ねる豊丸自動車西東京の加藤社長に、この思いを伝えてみて、それでどうにもならなきゃ直属の上司である所長に辞表を出そう」と思って、社長のいる本社に乗り込んで行きました。

加藤社長は二代目で、父親が創業したこの会社を継ぎました。もともと父親が創業した車の修理工場だった会社を、豊丸自動車の販売会社へと大きく成長させた実績もあり、それなりにわかる人なんじゃないかという、淡い期待も少し持っていました。
社長室の扉をノックして、ゆっくりと扉を開けると、柔らかそうな革張りのソファーに深く腰をかけ、加藤社長はそこにドスンと座っていました。

「お、お忙しいところすみません。多摩営業所の古屋と申します。お話しした いことがあり、お、おうかがいさせていただきました」
「突然、どうしたんだい?」

緊張していただけでなく、加藤社長の威圧感にも圧倒され、あまりうまくしゃべれませんでしたが、加藤社長に「なぜ、こんなにがんばったのに給料が8000円しか上がらないのか」という理由について、勇気をふりしぼってストレートに聞きました。
すると、ゆっくりと加藤社長は話しはじめました。

「古屋くんと言ったね。キミはがんばっているようだが、うちにきてまだ1年 だ。会社というのは約40年間、働く場所だ。その中でわずか1年のがんばりを、すぐに評価するほど会社は甘くない。会社人生は短距離走ではなく、長距離走。 持久力が大切だ。そして、もうひとつ言っておこう。もちろん、キミにはずっ とこの会社でがんばってほしいと思っている。けれども、今のキミのそれは『うぬぼれ』だよ。頭を冷やしなさい」
 「......」
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僕は直感的に「この人に話しに行ったのが間違いだった」と感じました。「そうですか。わかりました。ありがとうございました」と形だけのお礼を言い残して、そのまま本社をあとにし、自分の営業所へ車を走らせました。
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▷▷いつか何処かで

自分の営業所に到着すると、すぐに所長のもとへ行き、辞表を提出しました。所長にはいろいろとお世話になったので感謝していましたが、「この会社で、一生飼い殺されるのは嫌だ」という思いのほうが勝りました。翌月の末付けでの退職をお願いし、辞表を受け取ってもらいました。

僕が退職届けを出したことは、なぜかあちこちに筒抜けになっているようで、僕のもとへ、いろんな上役の方が来ました。理由はひとつ、引き止めるためのようです。
上役の方には恩義を感じていましたし、嫌いなわけではなく、むしろ好きでしたから、申し訳ない気持ちとともに、1人ひとりに丁寧にお詫びをしました。
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そのようななか、黒木先輩も僕のもとに来ました。僕は入社してからずっと黒木先輩に憧れていたので、僕のために時間をつくってくれたことが何よりもうれしかったです。
黒木先輩とは、あの居酒屋で話した以来で、ふだんはなかなか話せる機会がなかったので、僕は少し緊張していました。
黒木先輩は、怒っているのか、悲しんでいるのか、よくわからないけれど、鬼のような形相で言いました。

「辞めんなよ! おまえみたいな営業のセンスがあるやつは、もったいねえよ。センスはあるけれど、おまえ、まだコスペのいい働き方もわかってねえし。そこが、本当にデキる営業マンとそうじゃない営業マンとの大きな違いになる。まだまだ教えたいことが俺にはたくさん残ってる。それに、この営業所に嫌なところがあるなら、一緒に俺らで変えようぜ! 天下取ろうぜ!」
「コスペ......(コスパとコピペが混じっちゃっているのかな)」

黒木先輩は拳を握りしめて、目を見開いて僕を見つめています。
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正直、黒木先輩に認めてもらえたのはうれしかったです。しかし、僕が求めているものは給料が増えること。
だから、「一緒に俺らで変えようぜ!」「天下取ろうぜ!」という、黒木先輩のものすごく熱い言葉は、僕の心にまったく響きませんでした。だって、辞める理由は、給料が不満だからで、営業所が嫌いとかではないのですから。

黒木先輩に丁重にお断りしたところ、先輩は若干イラついていたようです。しかし、さすがはスゴ腕の営業マン。脈なしと思ったのか、そそくさと帰って行きました。

自分の机に戻ると、1枚のメモが置いてありました。メモにはこう書いてあります。
「1年目は会社からの投資を受けている状態だよ。あと3年はがんばれ!」

また、変な自己啓発チックなメモだ。僕は「やれやれ」とため息をつきながら、メモをゴミ箱に捨てました。
そうして僕は、がんばっても評価をしてくれない会社に見切りをつけました。目指すはもっと給料のいい場所を! もっと自分の実力を認めてくれる場所を! ここではないどこかに、きっとあるはずだ!

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▼次回
第2章 売れば売るほど給料が もらえるなんて最高です!
偶然見つけた社員募集のチラシ
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【この本のもくじ】

まえがき●2020/1/6配信●
第1章 営業成績がトップになっても、 なんで給料が上がらないんですか?
給料払ってんだから、もっと仕事しろよ ●2020/1/7配信●
研修中も給料をもらえるなんてラッキー! ●2020/1/8配信●
初任給をもらったけれど、いろいろ引かれて手元に残ったのは●2020/1/9配信●
値引きをしたら、いきなり売れました●2020/1/10配信●
商品の原価を知ってびっくり!●2020/1/13配信●
待ちに待った「ボーナス」だけど、思っていた額と違う●2020/1/14配信●
営業成績はトップなのに、なんで給料が上がらないんですか?●2020/1/15配信●
▷給料が安いので、辞めることにしました●2020/1/16配信●

第2章 売れば売るほど給料が もらえるなんて最高です!
▷偶然見つけた社員募集のチラシ
▷「歩合制」って最高!
▷がんばっても売れません ~会社のブランド力にはお金がかかっている~
▷何度目かのアポイントではじめての契約 ~会社は社員に先行投資をしている~
▷もっと給料を上げてもらうには、どうすればいいんですか?
▷会社に貢献したら、出世しました
▷「僕の稼ぎでみんなを養っているんだ」という錯覚 ~損益分岐点売上を超えないと会社にお金は残らない~
▷決算書で「ここだけは見ておくべきところ」
▷まさか自宅が火事で全焼するとは

第3章 落ちるところまで落ちたら、見えてくること
▷お金がないので借金をしました
▷給料は安くても安定している会社 vs 稼げば稼ぐほど給料が上がる会社
▷「自分の足で歩く」という生き方
▷給料はだれが決めている?
▷社員の給料を上げたくても、上げられないワケ
▷一番実績を出している社員が、給料が不満で辞めてしまいました

第4章 「お金」が原因で失敗した 過去の自分のために書いたノート未来から 来た僕から、過去の僕へ
▷1 会社は、給料以外にも社員に還元している
▷2 「数字の読み方」を知ると、世界が変わる
▷3 「給料が上がるしくみ」は、業界や会社によっても違う
▷4 「どんな稼ぎ方をしたいか」という自分の軸を持つこと
▷5 お金で解決できることも多いが、「劣等感」はお金で解決できない
▷これから新しい未来をつくり上げるキミへ

あとがき 古屋悟司

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