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〜第1章 営業成績がトップになっても、 なんで給料が上がらないんですか?〜▷給料払ってんだから、もっと仕事しろよ

【前回までのお話】
まえがき

▷▷そしてだれもいなくなった

「給料払ってんだから、もっと仕事しろよ! そういうのを給料泥棒って言う んだ!」

僕は社長として、今日の終礼で、思わず大声を張り上げました。

理由は、スタッフのやる気が伝わってこない仕事ぶりからです。何度教えても、仕事の覚えが悪く、ずっと溜まっていたイライラが爆発したのです。

まったく、あいつらときたら、もらうものは一人前にもらっておきながら、ちっとも仕事をしない。僕がどれだけ朝早く起きて、夜遅くまで仕事をして、必死になって稼いだ金で給料を払っているのかを、まったく理解していないんだ。

僕は古屋悟司。数年前に脱サラし、安売りの花屋を開業して、年商1億円程度の規模まで拡大させたのに、なぜだか儲からない。従業員たちの働きもイマイチだし、関係もあまりうまくいっていない。このままだと先行きはちょっと不安です......。

翌日、いつものように朝5時に起きて、商品である花を仕入れに市場へ行ったあと、その花を積み込み、 10時ごろに会社に到着しました。

あれ? なんか会社の中が暗いな? まったく、あいつらときたら、電気もつけていないのか。会社に入る自動ドアの前に立っても、ドアが開きません。電源が入っていないみたいです。

「チッ! 何やってんだ! まったく......」

僕は舌打ちをしながらドアに手をかけると、カギも開いていない。会社の中をのぞくと、真っ暗で、だれもいません。

この瞬間、何が起きているのかを僕は悟りました。従業員全員が、だれひとり来ていない。どうやら、昨日の僕の終礼の話を聞いて口裏を合わせたかのように、全員で辞めたようです。

「クッソ マジかよ! どうなってんだ!」

▷▷バ ッ ク・ト ゥ・1 9 9 3

僕は茫然としながらも、とりあえず喫茶店にでも行って冷静にならなくてはと思い、会社の前の道路に出ました。すると、猛スピードで1台のレクサスがこちらに走ってきます。レクサスは、僕の目の前で急ブレーキをかけ、タイヤをけたたましく鳴らしながら止まりました。

中から薄汚れたつなぎの服を着た、見知らぬおじさんが降りて来て、息を切らしながら僕に話しかけてきました。

「ハアハア。キミが古屋くんだな? ハアハア。探したよ。じつはキミの未来 が大変なことになっているんだ!」

「だれですか? 未来がなんとか言ってるけど、スタッフがみんな辞めちゃっ て、今この瞬間、すでに大変なんですよ! てか、なんで僕の名前を知ってい るんですか?」

「いいから、このジロリアン号に乗って! さあ、行こう!」 

「はあ? 行くってどこへ? 何言ってるかさっぱりわからないんですが」

 「これは私がつくった車型のタイムマシンだ。ちなみに、『ジロリアン号』は私がラーメン好きなことから名づけた。さあ、『ジロリアン号』に乗って過去に行くんだ!」

「はあ? タイムマシン? ジロリアン号? 何、言ってるんですか?」

僕はいきなり腕をつかまれ、車の中へ無理やり押し込まれました。外に出ようにもカギが外側からかかっているようで、まったく開きません。僕は頭のおかしいおじさんに、今まさに誘拐されそうになっています!

「よし、1993年4月5日にタイムトラベルだ!」

おじさんはそう叫ぶと、ラジコンのコントローラーのようなもののボタンをカチャカチャと押しました。車はガコガコと音を立てながら、すごいスピードで急加速。まわりの景色が真っ暗になったと思ったら、またすぐに明るくなりました。

「着いた! 1993年だ!」 

「は? まだそんな寝言みたいなこと、言ってるんですか」

 「あれを見なさい! あそこにいるのがサラリーマン時代のキミだ!」

僕は車の窓越しに、おじさんが指差す方角に目をやると、たしかにサラリーマン時代の僕がいます。

「え? ウソ?? 本当に1993年に来たの?」

にわかに信じがたいことですが、僕の目の前には、同僚と談笑しながら歩いている僕がいるんです。

「少しは信じてきたかい? キミの未来は、過去の積み重ねで出来上がってい るからね」

「ていうか、あなたはだれなんですか?」 

「私は、『お金と幸せの関係』について研究している博士だ。『会計ドクター』とも言われているので、まあ『ドク』とでも呼んでくれ。タイムスリップを事業とした『人生やり直しま専科』という会社をやっている。

2030年にキミの母親から、キミの人生をなんとかしてほしいと依頼を受けた。未来のキミは、会社をつぶして自己破産。さらにはホームレスになってしまっているんだ。それでキミの母親がなけなしの金を払って、私に依頼をしたというわけだ。すぐには信用できないかもしれないが、これは事実だ。諸悪の根源がどこにあるのかを突きとめながら、過去をなんとしてでも変えなくてはならない。その手伝いをしに来たというわけさ」

どうやら、目の前に広がる景色も、過去の僕も、全部本物らしい。こんなことが本当にあるのか? 

半信半疑のまま、とりあえず、僕は自称「ドク」に言われるがまま、過去の自分を遠くから追いかけることに。

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【次回】
第1章 営業成績がトップになっても、 なんで給料が上がらないんですか?
研修中も給料をもらえるなんてラッキー!
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【この本のもくじ】

まえがき●2020/1/6配信●
第1章 営業成績がトップになっても、 なんで給料が上がらないんですか?
▷給料払ってんだから、もっと仕事しろよ ●2020/1/7配信●
▷研修中も給料をもらえるなんてラッキー! ★次回★
▷初任給をもらったけれど、いろいろ引かれて手元に残ったのは
▷値引きをしたら、いきなり売れました
▷商品の原価を知ってびっくり!
▷待ちに待った「ボーナス」だけど、思っていた額と違う
▷営業成績はトップなのに、なんで給料が上がらないんですか?
▷給料が安いので、辞めることにしました

第2章 売れば売るほど給料が もらえるなんて最高です!
▷偶然見つけた社員募集のチラシ
▷「歩合制」って最高!
▷がんばっても売れません ~会社のブランド力にはお金がかかっている~
▷何度目かのアポイントではじめての契約 ~会社は社員に先行投資をしている~
▷もっと給料を上げてもらうには、どうすればいいんですか?
▷会社に貢献したら、出世しました
▷「僕の稼ぎでみんなを養っているんだ」という錯覚 ~損益分岐点売上を超えないと会社にお金は残らない~
▷決算書で「ここだけは見ておくべきところ」
▷まさか自宅が火事で全焼するとは

第3章 落ちるところまで落ちたら、見えてくること
▷お金がないので借金をしました
▷給料は安くても安定している会社 vs 稼げば稼ぐほど給料が上がる会社
▷「自分の足で歩く」という生き方
▷給料はだれが決めている?
▷社員の給料を上げたくても、上げられないワケ
▷一番実績を出している社員が、給料が不満で辞めてしまいました


第4章 「お金」が原因で失敗した 過去の自分のために書いたノート未来から  来た僕から、過去の僕へ
▷1 会社は、給料以外にも社員に還元している
▷2 「数字の読み方」を知ると、世界が変わる
▷3 「給料が上がるしくみ」は、業界や会社によっても違う
▷4 「どんな稼ぎ方をしたいか」という自分の軸を持つこと
▷5 お金で解決できることも多いが、「劣等感」はお金で解決できない
▷これから新しい未来をつくり上げるキミへ 


あとがき 古屋悟司

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