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〜第1章 営業成績がトップになっても、 なんで給料が上がらないんですか? 〜▷研修中も給料をもらえるなんてラッキー!

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【前回までのお話】
〜第1章 営業成績がトップになっても、 なんで給料が上がらないんですか?〜
給料払ってんだから、もっと仕事しろよ


▷▷一番稼げる会社はどこだ?

ドクにされるがまま、1993年に連れて来られたわけですが、当時の景色に触れて、過去の自分の姿を見ながら、僕もだんだん就職前後の記憶がよみがえってきました。

日本中が浮かれていたバブル景気。そのピークのころ、僕は大学に入学しました。

僕は私立大学に通っていたのですが、附属の小学校からの進級組はみんなお金持ち。そんな友達たちは、親にスポーツカーを買ってもらって乗り回し、ブランドもののバッグを持っているのは当たり前。中には、学生のくせにロレックスの腕時計をしているヤツさえいました。

僕も友達に負けじと、ルイ・ヴィトンの財布を持っていました。原宿の露店で買ったニセモノですが......。 「お金を持っている人間が偉い」。そんな価値観の上に、すべてが成り立っているよ うに、僕は感じていました。

お金持ちの家に生まれた友達が、ただただうらやましかった。お金がない。ただそれだけで、なんだか彼らに負けている気がしてならなかった。だから、「就職したら、 人の何倍もお金を稼ぎたい」。ずっとそう思っていました。

僕は大学を卒業して、豊丸自動車西東京という、大手自動車メーカーの販売会社(豊丸自動車と資本関係はなく、メーカーが卸した車を販売する代理店)の営業マン として就職することにしました。僕が勤務する多摩営業所は、多摩地域に10か所ある店舗のひとつです。

「自動車の販売会社の営業はノルマが厳しい」。そんな噂も聞いていました。だから、 大学の友達の間ではあまり人気はありませんでした。人気の職種は、上場企業で、給料が高く、クリエイティブな仕事。

でも、僕の場合は会社を選ぶ基準がちょっと違っていて、ポイントは「稼げるかどうか」でした。さらに、「出世のゴールが、社長になれるかどうか」。ここがかなり重要な部分でした。

まずふつう、就活生は会社に入れるかどうかを考えます。だから、「社長になれる かどうか」なんて考えないと思います。でも、僕にとっては、そのことがとても重要 なことだったんです。

理由は、「社長が一番、給料が高い(はず)」と、ずっと思っていたから。実際に、 就職活動中の面接では、「この会社は社長まで出世できますか?」なんて聞いていた くらいです。

自動車の販売会社は、車を1台売ると、月給以外に歩合給が支給されるしくみにな っています。「たくさん車を売ることができれば、新入社員でも稼げそう」というこ とから選びました。

大きな会社だと社長までは出世できない気がしていたし、自動車の販売会社くらいだと、会社の規模として「これくらいなら僕も社長にまでなれる」と感じたことも大きかったです。

さらに、僕は学生時代に、飛び込み営業のアルバイトの経験が少しだけありました。そこで、そこそこ実績も出せていたから、面接の段階で優秀と判断されたみたいです。

何より、僕が面接でした質問に対して「出世のゴールが社長」という確約ももらえたので、入社しようと決めたわけです。言ってみれば、お見合いで相思相愛になったカップルみたいなものです。

「ボーっと見ているんじゃない! 今、目の前にいる過去のキミを、なんとか しないとならんのだ!」

「なんとかするって言っても、どうやって?」 

「過去のキミに、見つからないようにしながら、気づきを与えていくんだ。見つかってしまったら、タイムパラドックスが起こってしまって、今のキミも、過去のキミも両方、存在しなくなってしまうかもしれないからだ」

「えええ! そんな......」 

「まあ、タイミングを待つしかないようだ。見つからないようにしながら、過去のキミの生き方を変えるんだ!」

 「変えるって......。どうやって 」

 「メモをこっそり置いて、気づきを促すのが定番だな」 

「メモ?」

「そうだ。こっそりメモを置くんだよ」

「うーん。と言ってもなあ」

 「とりあえず陰に隠れて、見守ろう。あっ、そうだ! 光を当てると透明人間になれる懐中電灯があるから、念のために使っておこう。あと、未来では使えないが、過去の時代のちょっとしたカギならば開けられる『万能キー』も用意しておこう」

ドクは懐中電灯をポケットから取り出して、自分と僕を照らしました。すると、声はするのにドクの姿が見えません。なんだか『ドラえもん』の世界みたいで、夢か現実かまだよくわかりません。ベタですが、ほっぺたをつねってみると、イテテテテ。どうやら現実のようです。

▷▷意気揚々と入社したけど仕事はパシリ

自動車の販売会社の営業マンとして僕はやる気マンマンで、「一気に先輩たちをご ぼう抜きして出世してやる!」と意気揚々と入社したはいいけれど......。仕事らしい 仕事は全然させてもらえません。基本的には、先輩のパシリです。

「おい! 納車前の車洗っとけ!」 

「はい!」

車を洗ってるだけで、どんどん汗が吹き出てきます。

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「終わりました!」

「そしたら、展示車を外に移動させておけ! ダッシュだ!」

 「はい!」

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ダッシュで走って行って、展示車を移動させます。ほんと体育会系な会社で、先輩に逆らうことなんて許されません。でも、「早く僕 も車を売りたい......」。そう言えば、午後からは、待ちに待った新人研修です。

会社が所有している研修センターで、車の販売に関する研修を受けるんです。あちこちの営業所に、散り散りになってしまった同期の仲間たちとも会えます。何より、実際にまだ車は売っていないけれど、研修中は仕事をしているような気分になれました。

パシリではもちろん自分のスキルが磨かれている気はしませんが、研修は自分の成長を少なからず肌で感じます。

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研修では、車を売るために必要な基本的な知識や、車を売るためのテクニックの講義を受けるんです。1日も早く車を売りに出かけたかったので、僕は食い入るように学んでいました。大学時代、こんなにも一生懸命に学んだことがないくらいにノートをとったり、復習したりと、むしろ勉強が楽しくてしかたがない。

今日は、営業のスキルのひとつとして、「おうむ返し」というものを教わりました。 これは、話につまってしまったときや、相手に共感を示す態度を示したいときに、お客様が言った内容を、同じように自分の口から相手に伝えるテクニックだそうです。

お客様「今は買うつもりないんだよねぇ」

販売員「そうですよねぇ。今は買うおつもりはありませんよねぇ」

お客様のセリフを復唱することで、次の話題をその間に考え、さらには「私はあなたを理解しています」ということを、潜在意識に訴えかけるべく態度で示すのです。

さまざまなテクニックをひとつずつ丁寧に教えてもらい、参加者同士でロールプレイングをしました。「研修で学べば車が売れるようになる!」。

のどから手が出るほど ほしいノウハウの数々を教わるというのは、心が踊るくらい楽しく、時間はあっという間にすぎていきました。

大学は、お金を払って教えてもらう場所でしたが、「会社はお金をもらいながらスキルを磨く」ことができるんです! 会社ってすごい場所だなあと思いました。

月に2回の研修の日は、教えてもらっているにもかかわらず、それで給料ももらえるんです。なんてラッキーなんだ!

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【次回】
第1章 営業成績がトップになっても、 なんで給料が上がらないんですか?
初任給をもらったけれど、いろいろ引かれて手元に残ったのは
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【この本のもくじ】

まえがき●2020/1/6配信●
第1章 営業成績がトップになっても、 なんで給料が上がらないんですか?
給料払ってんだから、もっと仕事しろよ ●2020/1/7配信●
▷研修中も給料をもらえるなんてラッキー! ●2020/1/8配信●
▷初任給をもらったけれど、いろいろ引かれて手元に残ったのは★次回★
▷値引きをしたら、いきなり売れました
▷商品の原価を知ってびっくり!
▷待ちに待った「ボーナス」だけど、思っていた額と違う
▷営業成績はトップなのに、なんで給料が上がらないんですか?
▷給料が安いので、辞めることにしました

第2章 売れば売るほど給料が もらえるなんて最高です!
▷偶然見つけた社員募集のチラシ
▷「歩合制」って最高!
▷がんばっても売れません ~会社のブランド力にはお金がかかっている~
▷何度目かのアポイントではじめての契約 ~会社は社員に先行投資をしている~
▷もっと給料を上げてもらうには、どうすればいいんですか?
▷会社に貢献したら、出世しました
▷「僕の稼ぎでみんなを養っているんだ」という錯覚 ~損益分岐点売上を超えないと会社にお金は残らない~
▷決算書で「ここだけは見ておくべきところ」
▷まさか自宅が火事で全焼するとは

第3章 落ちるところまで落ちたら、見えてくること
▷お金がないので借金をしました
▷給料は安くても安定している会社 vs 稼げば稼ぐほど給料が上がる会社
▷「自分の足で歩く」という生き方
▷給料はだれが決めている?
▷社員の給料を上げたくても、上げられないワケ
▷一番実績を出している社員が、給料が不満で辞めてしまいました


第4章 「お金」が原因で失敗した 過去の自分のために書いたノート未来から  来た僕から、過去の僕へ
▷1 会社は、給料以外にも社員に還元している
▷2 「数字の読み方」を知ると、世界が変わる
▷3 「給料が上がるしくみ」は、業界や会社によっても違う
▷4 「どんな稼ぎ方をしたいか」という自分の軸を持つこと
▷5 お金で解決できることも多いが、「劣等感」はお金で解決できない
▷これから新しい未来をつくり上げるキミへ

あとがき 古屋悟司



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