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〜第1章 営業成績がトップになっても、 なんで給料が上がらないんですか?〜▷値引きをしたら、 いきなり売れました

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【前回までのお話】
〜第1章 営業成績がトップになっても、なんで給料が上がらないんですか?〜
▷初任給をもらったけれど、いろいろ引かれて手元に残ったのは
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▷▷仕事って 、思っていたよりも楽ではありません


営業所に配属になって2か月。担当のエリアを持つことになり、はじめての外回りに出かけました。

担当エリアのことを業界では「テリトリー」と呼び、日本語に訳すと「縄張り」です。自分のテリトリーを他社に占領されないためにも、くまなく回って自社のお客様を増やしていくのが自動車の販売会社の営業マンの仕事のひとつです。

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最初は自分にお客様がいないので、いわゆる「飛び込み訪問」をやります。見ず知らずの人の家のチャイムを鳴らし、訪問するのです。

1日の訪問件数の目標は「100軒回ること」。研修担当の方からは「それをノルマとして、とにかく顔を売れ!」と言われていたので、その数をこなすしかありません。

新人研修で教わった通り、お宅のチャイムを鳴らして、人が出てきたら挨拶をしま す。「こんにちは! 豊丸自動車西東京・多摩営業所の古屋と申します! このたび こちらの地区の担当となりましたので、ご挨拶におうかがいいたしました!」と名刺 を差し出します。

見ず知らずのお家の方は、怪訝そうな顔をしながらも名刺を受け取り、「あぁ、そうですか。うち、おたくから車買ってないですけど?」とそっけない返事です。すかさず、習ったばかりのおうむ返しを試します。

「そうですよね。買ってないですよねぇ」。すると、「そういうことなんで......」と言われ、バタンとドアが閉まってしまいました。 「あれ? 研修のときと違う反応だな......」と、現場の厳しさを噛み締めながら、100軒の訪問のノルマを達成するために、隣の家に移動します。

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文字通り「門前払い」で断られ続けながら、挨拶&名刺配りをとにかくこなし、初日に100軒のノルマをなんとか達成。

が、収穫らしい収穫もなく、1日やった感想は、とにかくクタクタ。そして、不在の家が多いこと。共稼ぎの家が多いみたいで、訪問しても留守ばかりでした。

ただ、「100軒」というノルマは、ものすごく疲れるけれど、留守宅も入れるとがんばればなんとか回れることがわかりました。次の日からは、自分に気合いを入れ る意味も込めて、120軒を自分の目標にして、根性で回ることに決めました。

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▷▷あの鐘を鳴らすのは

翌日、いくつかのお宅を回っているなかで、マンションも訪問しました。その中の1軒で、チャイムを鳴らすと、平日の昼間には珍しく、ダンナさんがドアを開けてくれました。

パッと見、かなり怖そうな顔の男性だったので、若干ビビりながらご挨拶をすると、「今、ベンツに乗っているんだけどさ、もう1台買おうか考えているんだよね~」とのこと。その日はいろいろと会話をして、カタログを置かせていただきました。

やった! はじめての「ホット」登場です! 「ホット」とは、買いそうなお客様のことを呼ぶ業界用語です。この「ホット」をどれだけつくれるかが、営業マンにとって毎日の訪問の成果だと教えられました。

その日の仕事終わりに日報を書き、それぞれの営業マンが終礼で報告します。新人ながらも僕は、「本日のホット1軒です!」と報告できたことがうれしかったです。 それによって所長をはじめ、先輩にもほめられました。

そして、そのホットを成約に結びつけるために、今後どんな動きをすればいいのかを、先輩からじっくり時間をかけて、丁寧に教えてもらいました。

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一番重要なのは、再度訪問して、ゆっくり時間を取ってもらえるように促し、アポをとってくることだというのです。早い話が、「商談をする時間を、お客様にいただくために、その約束をしてきなさい」と。


▷▷「値引き」は商談の強力なひと押し!?

僕は翌日、再度そのお宅を訪問し、今週の土曜日におうかがいしたい旨と、ご希望の車種を実際にお持ちすることをお伝えしたところ、なんと二つ返事でOKしてくれたのです。その日は120軒に増やした訪問のノルマも、ルンルンでこなすことができてしまいました。

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さらに、その日、じつはもう1軒の「ホット」があったのです。僕も商談のアポの流れを把握してきたので、すぐさま「今週の土曜日に、ご希望のお車をお見せしますよ!」と、一人前の顔をしながらアポをとってきました。

そして、仕事終わりに、今日の出来事を終礼で報告し、またも所長や先輩にほめてもらいました。かくして、今週の土曜日の商談2件がどんな流れになるのか、楽しみでしかたがありません。

その週の土曜日。所長に同行してもらいながら、1件目の商談に行きました。お客様のお宅に到着し、持ってきた希望の車を見てもらいます。

「これ、どれくらい値引きできる?」とお客様に聞かれると、所長はすぐさま値引きの交渉に応じます。

所長「今回、特別に34万円引きでどうでしょう?」

お客様「もうちょっとならないかな?」

所長「新人の古屋の顔を立てるということで、今、即決いただけるという前提ですが、40万円引きでいかがですか」

所長と一緒に僕は頭を下げて、「僕の1台目の契約をよろしくお願いします」とお願いしました。すると、お客様は「しょうがないな~」と苦笑いしながら、契約して くれたのです。え? 値引きするとこんなに簡単にご成約してくれるんだ......。僕は少しあっけにとられてしまいました。

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2件目の商談も同じようなことを繰り返し、簡単に成約。はじめての車の販売は、所長に手伝ってもらったこともあり、いきなり1日に2台の車が売れてしまったのです。

そうか、これか!

お客様の買いたい金額まで値下げをすれば売れるのか! 僕は営業の真髄をつかんだような気持ちになりました。

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▼次回
第1章 営業成績がトップになっても、 なんで給料が上がらないんですか?
商品の原価を知ってびっくり!
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【この本のもくじ】

まえがき●2020/1/6配信●
第1章 営業成績がトップになっても、 なんで給料が上がらないんですか?
給料払ってんだから、もっと仕事しろよ ●2020/1/7配信●
研修中も給料をもらえるなんてラッキー! ●2020/1/8配信●
初任給をもらったけれど、いろいろ引かれて手元に残ったのは●2020/1/9配信●
▷値引きをしたら、いきなり売れました●2020/1/10配信●
▷商品の原価を知ってびっくり!
▷待ちに待った「ボーナス」だけど、思っていた額と違う
▷営業成績はトップなのに、なんで給料が上がらないんですか?
▷給料が安いので、辞めることにしました

第2章 売れば売るほど給料が もらえるなんて最高です!
▷偶然見つけた社員募集のチラシ
▷「歩合制」って最高!
▷がんばっても売れません ~会社のブランド力にはお金がかかっている~
▷何度目かのアポイントではじめての契約 ~会社は社員に先行投資をしている~
▷もっと給料を上げてもらうには、どうすればいいんですか?
▷会社に貢献したら、出世しました
▷「僕の稼ぎでみんなを養っているんだ」という錯覚 ~損益分岐点売上を超えないと会社にお金は残らない~
▷決算書で「ここだけは見ておくべきところ」
▷まさか自宅が火事で全焼するとは

第3章 落ちるところまで落ちたら、見えてくること
▷お金がないので借金をしました
▷給料は安くても安定している会社 vs 稼げば稼ぐほど給料が上がる会社
▷「自分の足で歩く」という生き方
▷給料はだれが決めている?
▷社員の給料を上げたくても、上げられないワケ
▷一番実績を出している社員が、給料が不満で辞めてしまいました

第4章 「お金」が原因で失敗した 過去の自分のために書いたノート未来から 来た僕から、過去の僕へ
▷1 会社は、給料以外にも社員に還元している
▷2 「数字の読み方」を知ると、世界が変わる
▷3 「給料が上がるしくみ」は、業界や会社によっても違う
▷4 「どんな稼ぎ方をしたいか」という自分の軸を持つこと
▷5 お金で解決できることも多いが、「劣等感」はお金で解決できない
▷これから新しい未来をつくり上げるキミへ

あとがき 古屋悟司

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