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〜第1章 営業成績がトップになっても、 なんで給料が上がらないんですか?〜▷営業成績はトップなのに、なんで給料が上がらないんですか?

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【前回までのお話】
〜第1章 営業成績がトップになっても、なんで給料が上がらないんですか?〜
待ちに待った「ボーナス」だけど、思っていた額と違う
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▷▷エースをねらえ!

季節は変わって秋になり、僕の営業成績はさらに上がっていきました。
自動車の販売会社の営業マンにとって、訪問して車を売るきっかけのひとつは「査定をとってくること」です。「査定」とは、車の状態を見て、下取り額を決める行為 で、それをきっかけに新車のご提案につなげる営業方法です。
僕は、その査定をとってくることで、豊丸自動車西東京の店舗による全社記録を塗り替えることにチャレンジしました。
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先輩たちは買い替えの需要や、お客様からのご紹介で毎月10台ほどの車を販売しています。負けず嫌いの僕は、それにも勝ちたかったのですが、まだまだそこまでの結果は出せていません。そこで、「査定」だけだったら全社で1番になれるのではないかと考えたんです。

査定のレコードホルダーは豊丸自動車西東京・本社勤務の2つ上の先輩で、月間68件の査定記録を持っていました。僕はそれを塗り替えようと、通常、査定は1日1件とれるかとれないかだったのですが、1日3~4件を目標にしました。
来る日も来る日も査定をとって、翌日以降にお見積もりを渡しに行く。「どんな手 を使ってでも、その記録を塗り替える!」。そう心に誓って毎日やり続けました。画像2

査定のきっかけづくりは「こんにちは! 豊丸自動車西東京・多摩営業所の古屋です!」と、さわやかな笑顔の挨拶から入ります。
新人のフレッシュさを、あざとすぎない程度に武器にしながら、「新人なので勉強のために、お車の調子を見させていただけませんか?」と言うと、簡単に車を見せてくれるのです。


そこで査定をとっていくのですが、「査定だけして、はい、さようなら」では、テリトリーのお客様たちに不信感を与えてしまいます。そこで、お礼にタイヤをピカピカに磨く、というサービスを僕はしていました。
翌日は、見積もりを持って、お客様を再訪します。その段階でたいていお断りされるのですが、もはや、僕にとっては、それはどうでもよくなっていました。
とにかく査定の記録さえ塗り替えられれば、ということしか頭になかったんです。
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その後、査定の数が異常に伸びていることが、全社的にも広まってきたようで、人 事部の部長からは、「古屋くん、がんばってるみたいだね! 査定のあとのフォロー、 大変でしょう?」などと声をかけられました。
営業所内で査定件数は常にトップ。もちろん、ほかの営業所の同期の仲間たちの間でもダントツでした。そして、待ちに待った月末。 72件の査定件数を達成し、豊丸自動車西東京に10ある全営業所の査定記録を塗り替えることができました。さらに、販売台数も同期の中ではトップクラスです。
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年が明け、成績のよい者が表彰される3月になりました。僕は狙っていた「新人賞」もとることができました。

▷▷春なのに

そして季節は春に。春と言えば昇給・昇格の季節でもあります。僕は1年間、相当がんばった自負がありました。
なにせ、同期の中ではトップです。そして、査定の全社記録を塗り替えたんですから、僕の中ではダブル受賞みたいなものです。
「異例の昇進や、抜擢、昇給があってしかるべき」くらいに思っていたので、給料日には、内心かなり期待していました。
いつものように給与明細の封筒を開け、基本給の部分を見ると「21万8000円」。
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「あれ? 8000円しか昇給していない。嘘でしょ? もっと上がるでしょ? 僕 はトップだし、記録も塗り替えたのに......。なんで、8000円しか変わらないん だ?」と茫然としました。


同期の仲間に昇級した金額を聞くと、やはり同じく8000円でした。なぜ、人一倍がんばった僕と、それほどがんばっていなさそうな同期の仲間の昇給額が同じなのかが、まったく理解できませんでした。
少なくとも僕は、ほかの人よりも車をたくさん売った実績があります。そして、勤務態度も悪くないし、休んだこともありません。それをなぜ、会社が評価してくれないのかがさっぱりわかりません。
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僕の全社トップの記録更新の価値は月額8000円しかない。あれだけがんばっても、わずか8000円。なんだか体の力が抜けて、やる気がどんどんなくなっていくのがわかりました。
これまでは、僕の心の中の風船が「やる気」という空気で割れそうなくらいにパンパンにふくらんでいた状態でしたが、シューっと音を立てて空気が漏れていく。さらに、風船はそのまましぼんでダランとしおれる。まさに、そんな感じでした。
僕は、この会社に必要とされていない人間なのではないか? いや、むしろ、会社は僕をうまく利用して、搾取しているんじゃないだろうか?

ふと、飲み屋で黒木先輩から聞いた原価の話を思い出しました。やっぱり、社長のポケットにお金がどんどん流れ込んでいるんじゃないだろうか。悪いほう悪いほうへと向かう僕の想像は、ふくらむ一方でした。
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▼次回
第1章 営業成績がトップになっても、なんで給料が上がらないんですか?
給料が安いので、辞めることにしました
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【この本のもくじ】

まえがき●2020/1/6配信●
第1章 営業成績がトップになっても、 なんで給料が上がらないんですか?
給料払ってんだから、もっと仕事しろよ ●2020/1/7配信●
研修中も給料をもらえるなんてラッキー! ●2020/1/8配信●
初任給をもらったけれど、いろいろ引かれて手元に残ったのは●2020/1/9配信●
値引きをしたら、いきなり売れました●2020/1/10配信●
商品の原価を知ってびっくり!●2020/1/13配信●
待ちに待った「ボーナス」だけど、思っていた額と違う●2020/1/14配信●
営業成績はトップなのに、なんで給料が上がらないんですか?●2020/1/15配信●
▷給料が安いので、辞めることにしました

第2章 売れば売るほど給料が もらえるなんて最高です!
▷偶然見つけた社員募集のチラシ
▷「歩合制」って最高!
▷がんばっても売れません ~会社のブランド力にはお金がかかっている~
▷何度目かのアポイントではじめての契約 ~会社は社員に先行投資をしている~
▷もっと給料を上げてもらうには、どうすればいいんですか?
▷会社に貢献したら、出世しました
▷「僕の稼ぎでみんなを養っているんだ」という錯覚 ~損益分岐点売上を超えないと会社にお金は残らない~
▷決算書で「ここだけは見ておくべきところ」
▷まさか自宅が火事で全焼するとは

第3章 落ちるところまで落ちたら、見えてくること
▷お金がないので借金をしました
▷給料は安くても安定している会社 vs 稼げば稼ぐほど給料が上がる会社
▷「自分の足で歩く」という生き方
▷給料はだれが決めている?
▷社員の給料を上げたくても、上げられないワケ
▷一番実績を出している社員が、給料が不満で辞めてしまいました

第4章 「お金」が原因で失敗した 過去の自分のために書いたノート未来から 来た僕から、過去の僕へ
▷1 会社は、給料以外にも社員に還元している
▷2 「数字の読み方」を知ると、世界が変わる
▷3 「給料が上がるしくみ」は、業界や会社によっても違う
▷4 「どんな稼ぎ方をしたいか」という自分の軸を持つこと
▷5 お金で解決できることも多いが、「劣等感」はお金で解決できない
▷これから新しい未来をつくり上げるキミへ

あとがき 古屋悟司

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