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魚群探知機はここまできた!最先端の魚探は魚を探すだけじゃない?!

古野電気が魚群探知機を世界で初めて実用化して70年以上が経ちました。
当時はまだ戦後直後、まだテレビもないようなそんな時代、初代の魚群探知機は軍の払い下げ品だった「音響測深機」を改良したものでした。

そこから時代が進み、技術の発展とともに魚群探知機も進化してきました。
ブラウン管テレビが誕生すれば、魚探もブラウン管に。カラーテレビが登場すれば、魚探もカラーに。そして最新の魚群探知機は画面はタッチパネルになっています。
時代のトレンドに合わせて発展してきていることがわかりますね。

魚群探知機の遍歴、最初は紙にエコー(魚の反応など)を記録していた

しかし、魚群探知機の進化は外観や映像の見せ方だけではありません。
その本領は海の中、そこには魚探ならではの技術革新が隠れています。

今回、フルノ随一の釣りマニアでかつ、魚探エンジニアでもある津島さんに最新魚探のテクノロジーについて教えてもらいました。

魚探大好き津島さん、海の音に再び登場!!

津島和亮
釣り好きがきっかけで魚探や航海計器に興味を持ち、フルノに入社するほどの釣りマニア。特にカジキ釣りに造詣が深く、カジキ釣り船のクルーとしても活動している。津島さんのカジキ釣りをピックアップした記事も「海の音」人気記事!

フルノの魚探は魚を見るだけじゃない

ー 魚探って外観以外はどのように進化してきたんでしょうか?

津島さん「多分、多くの方が"魚群探知機=魚を探知するもの"と思っていますよね。それは正解なんですが、それだけじゃないってことを今日知ってもらいたいなと思います。
例えば、その代表的な機能が"底質判別"ですね。フルノの魚探は海底が砂なのか、岩場なのか、それとも泥なのか、そういったことを判別することができます。」

海底を4種類の底質タイプに分類表示

ー それってどう重要なんですか?

津島さん「2つの理由で重要ですね。まずひとつは漁場の選定のためです。魚によって好む海底は異なります。キスやカレイなどは砂地を好みますし、カサゴやハタは岩場を好みます。魚群探知機の映像だけで魚の種類まで判定するのはとても難しいので、海底質などの情報を合わせることでターゲットの魚を探しやすくなるんです。

カサゴは岩礁帯に棲息、海底付近にジッとしていることが多い

もうひとつはアンカリング(錨を下ろすこと)のポイント選定です。サラサラの砂地に錨を下ろしても引っかかりが少なく、適切なアンカリングにならない場合があります。
より良い漁場を見つけるため、安全に船を停泊させるために底質判別は重要な機能となるわけです。」

確かに、潜ってみないと海の底は分からない。

ー ちなみにどうやって底質判別しているんですか?

津島さん「海の中の反射で一番強い反射ってやっぱり海底なんですよね。その反射信号の強さ"海底の尾引き"を分析して、どんな質の海底なのかを判定しています。尾引きとは魚探画面上で海底から下方向に伸びている部分のことを言います。

左側は低周波、右側は高周波で同じ海中を見ている。周波数で尾引きの見え方も異なっている。

底質が岩など硬めのときは海底からの反射も強いですし、尾引きも強く映る性質があります。その一方で砂地など軟らかめの地質のときはまた変わってきます。実はそれだけじゃないんですが、かなり話が長くなるのでひとまず企業秘密ということで(笑)
ちなみに漁師さんたちは、昔から海底付近の映像を見て、底質を判断していたそうです。このノウハウをもっと簡単に多くのユーザに提供したいという想いからこの技術開発に至りました。またどこかで開発秘話も話したいですね。」

魚探のトレンド!チャープ魚探とは?

ー 魚を見ること自体は進化したんでしょうか?

津島さん「今すごい進化が起こっていますよ。魚探誕生から70年以上経過していて、いろんな技術革新がありましたが、今が一番かも。
"チャープ化"が最新魚探のトレンドになっています。次の比較映像を見てください。」

FURUNO TruEcho CHIRPᵀᴹの映像例

ー 確かにチャープの方が精細な映像ですが、そもそも"チャープ"って何ですか?

津島さん「チャープを一言で言うと、"周波数が時間とともに変化する信号"のことを指します。
従来の魚探では単一の周波数を使っていました。例えば50kHzはずっと50kHzのままといったように変わることはありません。モノによっては50kHzと200kHzなど2周波を同時に使って、映像に差をつけることで情報量を増やすなどしていましたが、チャープは全く別物です。
チャープでは例えば30〜60kHzや150〜200kHzといった幅広い周波数の範囲で、周波数を少しずつ変えながら発信しています。さらに返ってきた信号にも特別な信号処理を加えることでこの高精細な映像が得られるという仕組みです。」

チャープ魚探の送信イメージ

ー 分かったような分からないような。ちなみにどんな効果があるんでしょうか?

津島さん「先ほどの映像をもう一度見てもらいたいのですが、高精細にすることでより多くの情報が読み取ることができます。


まずチャープでは魚群の魚の密度の差がはっきりわかりますよね。また海底と魚がしっかり分離されていることもわかると思います。要するに魚群の量や活性状態の推測がしやすいメリットありますね。魚の見逃しも減ると思います。」

チャープ魚探によって、映像から分かる情報が増えている

魚群の量や魚種まで分かる最新の魚探!

ー チャープ化がすごいのがわかりました。まだ他にも進化はありますか?

津島さん「フルノの魚探でこれまでも人気があった機能が魚体長計測です。この機能もチャープ化によって、従来の魚探よりも精度がかなり向上しました。その理由としてはチャープ化で、ある程度の深さでも高繊細なデータが得られるようになったというのが大きいです。」

FURUNO ACCU-FISHᵀᴹ機能  魚のサイズが分かる

ー 視覚的にも楽しく釣りができますね。

津島さん「あと、最新のプロ向けの機能にはなりますが単体魚だけでなく、魚群の体長分布も推定できるようになっていますね。魚探映像の中から調べたい魚群を範囲で指定してあげると、その範囲内にどれくらいの大きさの魚がどれくらい含まれているか計測できるようになりました。」

魚体長計測の映像例、ヒストグラムで魚群内のサイズ分布が一目でわかる

ー シンプルにすごいですね。

津島さん「そうですね。この機能が搭載された魚探は漁業だけでなく、国際的な研究機関にも活用されています。これからは資源管理型漁業が求められていますので、海とその環境のために役立ってくれるといいなと思っています。
あとは魚種判別ですね。特定の魚種であれば判別も可能になりましたよ。」

ー 映像だけからでもそこまで分かるようになっているんですね。

魚種判別の例 (現在は海外向け販売のみ)

津島さん「これも範囲指定をしてあげると、その範囲内の魚群がなんの魚種なのか確率で教えてくれます。今後もいろんなデータが集まっていくと精度向上や判別可能な魚種が増えるかも知れませんし、期待されている機能ですね。
この魚種判別機能により混獲を防止できるので、これも同じく資源管理型漁業に貢献できると思います。」

フルノの目指す魚探の未来

魚群探知機は漁業の効率化に大きく貢献し、我々の食卓を支えるのに欠かせない機械となりました。しかし、その一方で水産資源が減少していることは見逃せない事実でもあります。
フルノは魚群探知機のパイオニア企業としてこの問題にも真っ向から取り組み、豊かな海の環境と美味しい魚食文化の両立を掲げていきたいと思います。

やはりそこでもキーになるのは魚群探知機だと思います。
これまでの魚探は魚を取るための機械でした。しかし、これからの魚探は魚を守るための機械に代わっていくのかもしれません。

いつまでも豊かな海を守りたい。

執筆 津島和亮・高津みなと
監修 大西祐司

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