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クソっ

報告書用のデータが飛んだ。
やり直しかよ。

キーボードを叩く指に力が入る。

まぁそれでも
やるしかない。

イラつくわ。

しばらくすると、
外勤から上司が戻ってきた。

高すぎないヒールのパンプスは
小気味よい音を響かせてこっちにくる。

「よしのぶ、あの件どうなった?」

わざわざおれの横まできて
上司は尋ねた。

「あぁあれですか。順調ですよ、室長」

モニタから視線を外しもせず
ぶっきらぼうにこたえる。

我ながらひどい態度だ。

「そう、先方はなんて言っているの?」

おれの姿勢を注意することもなく、
上司は跪き、おれより目線を下げて
ゆっくりと話を続ける。

...こいつマジか?!

おれの不遜な態度を戒めるどころか
逆に目線をおれより下げるだと!!

「...担当者は良いって言ってくれてます。ただ、上に確認したいそうで」

いやいや、そんなことされても
今さら態度変えるような柔軟さは
おれにはねーぞっ!

「いつごろ返事もらえるのかしら」

にこやかに話す上司。

「今週返事なかったら、月曜日に電話してみます」

その視線に耐えられなくなったおれは
背もたれた椅子から腰をズリ落とし
せめて上司より目線を下げようとする。

「そう。報告ちょうだいね」

あれ?室長ちょっと。さっきより姿勢低くね?
おれさらにケツズリ落とすハメなるんすけど。

「はい」

やっぱり絶対さっきより低いよね?
え?なにわざと?
おれ目線下げるためにどんどん姿勢が
とりかえしつかないことなってんですけど!

「よかったわ。丸山商事もOKもらえたのよね」

いやちょっと!もう限界だから。
もうおれ椅子に座ってないから。
背中もたれかかってるだけだから。
おかしいでしょこの姿勢。

「室長、ちょっと低すぎませんか?」

「無理しないで。できる分でいいのよ」

やっぱそうだ!もう!なんなのこれ!

(この投稿は、途中からフィクションです)


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