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大量に読んだ中でよかった本(エッセイ編)

まとまった冊数の本を一定期間に読まなければ、前に読んだ本の内容は記憶の彼方にあり、読んだ本同士を比較するとかにはならない。幸か不幸か、休職により一定期間に大量の本を読んだわたしは、これまでの読書体験よりも遥かに、好きな本・嫌いな本があることを自覚した。そして、それはわたしの思想にもなっていることを自覚しなければならないとも思った。


本を選ぶことに慣れていなかったので、あまりに自分に合わない本をブックオフで買ってしまい、三分の一読んだところで、もう嫌だと読まなかった本。図書館で借りて、最後まで読んだけど結論に全然納得できない本もあった。しかし、本を読まないあまりにそんな経験をもしたことがなかったので、読書経験値が上がった、とありがたく思いはした。


せっかくたくさん本を読んで、どちらかと言うとあれが好き、と感じることができたので、本日はどんな本が好きだったのかをまとめてみます。今日の記事はエッセイを編3位までのランキング形式で。小説、新書・実用書、古典文学関連についても続けて書こうとおもっとりマス。


エッセイだけはまあまあ読んできたけれど、休職期間中の読書はこれまで読んだことがない作家のものを読むようにしていた。いずれも休職前は未読の作家。


第3位 川上未映子『深く、しっかり息をして』


誰かが川上未映子が好きだと言っていた気がする、と思ってまず闇雲に選んだ1冊がこちら。この頃はまだ小説に手を出していなかったので、エッセイが気に入ったら小説を読もうと思い、手に取った(否、ブックオフで注文した)。好きな理由は、わたしが日常で感じる感覚と結構似ている!と思ったから。


思えば親以上に年齢が離れた人、またはもう亡くなっている人のエッセイしか読んでこなかった。単に比較的年齢の近い同性の筆者の目線だからなのか、はたまたそれが川上未映子のものだからなのかはまだわからないが(その他の比較的人例の近い同性の作家のエッセイを読んでいないので)、フィット感あり、とジャッジした。小説もイケるかもと思い、この後『夏物語』『全て真夜中の恋人たち』『黄色い家』を読んだ。


第2位 川上未映子『きみは赤ちゃん』


また川上未映子かい。序盤から2連続かい。えこひいきではないんですが、そもそもエッセイに偏らないとしようと努力して、読んだエッセイの冊数そのものが少ないので、なんか偏ってます。近年友達が子供を産むことが増えているので、友達の気持ちをわかりたいと思ってブックオフで買った本。


妊娠から1歳児になるまでの、女性の身体に起こる抑制し難い変化や、夫と二人で親になっていくために越えなければならない性別役割分担意識などなど、友がこんなセーフティーバーなしのジェットコースターみたいな日々を乗り越えたんだと思うと、涙ぐまずにはいられなかった。きみらは、本当にすごい。


わたしは、人はなぜ子供を産むのかという問いについて、自分の中で答えが出ていないので、子供を産もうと思えない、という出産・子育てを結構深刻に考えてしまう人間でした。子供が産まれないとこの国で暮らしていくのが大変になるけども?、子育てにはお金がかかるし、夫とともに親になる覚悟がまだ持てないし、守るべき家もないし、でも自分の老後が心配だし子は必要か??でもでも、そのためだけの子供なのか?、などなど、ぐるぐる考えてしまう。夫のことを愛している、だからふたりの子供が欲しい。とか、素朴には思えない。


が、この本と『夏物語』を読んで少しその深刻さが緩んだ気がする。子供を産む理由は「わたしがあなたに会いたいから」でもいいんだと。あなたに会ってみたいという気持ちは、わたしにもある。


第1位 梨木香歩『春になったら苺を摘みに』


外国に住んでここまで濃密な体験ができるものなんだ…スゴイ…。というその凄さのインパクトで第1位。もちろん、体験自体がすごいと言うのに加えて、体験の描写もすごいのだが。わたしは海外経験豊富ではないが、仕事でちょっと海外にいたりということはあったりした。仕事のためにちょっといたぐらいでは、その地で生活する人の文化や考え方を知ることはできないし、あたたかい交流もほとんどない。シャイな日本人を言い訳にしていては、外国にいても自分だけの狭い狭い世界で生きることになるんだろう。


ここまで現地の人と心を通わせたり、時にはぶつかったりできるということは、相当なまでに人と対話することを恐れず、英語で向き合い続けていたのだと思う。デモに誘われてほいほいついて行ったら、デモに参加してせいで逮捕されて国外退去を命じられたらどうするんだ!と怒ってくれる隣人や、賃貸契約をしようと思ったら、担当者がアジア人にそうしてしまうようにマイクロアグレッションをしてしまい、同行してくれた現地の人が怒ってくれるとか。自分のために怒ってくれる人が現れるほど、現地コミュニティに大切にされている作者は、自分の入っていく世界に対してごく当たり前に敬意を払い、馴染んでいくよう相当に努力したのだろう。




エッセイならば読む方ではあったけれど、この期間で新しい作家に出会えてよかったと思う。次回は小説編を書きますが、小説の合う合わないの可能性をジャッジするのに、まずエッセイを読んでみるのはけっこういい方法ではないかと思います。川上未映子は読んだけど、梨木香歩の小説はまだ読んでいないので、どれか読んでみようかな~と思います。きっと、しっくりくるでしょう。

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