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くらしにきました |#4「個でも、チームでも、特性は無視できない。弱さを『ボケ』と捉えて」

地方出身、東京経由で、また地方へ。暮らしが移ろぐ20代を過ごしてきたアラサー男子二人が、地域、仕事、妖怪(?)についてあれこれしゃべります。

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富川屋 / to know代表。ローカルプロデューサー。新潟生まれ割烹屋育ち、岩手県遠野市在住。宮城大学非常勤講師。赤坂の広告会社でWebマーケ→移住→ベンチャー共同創業→独立→75歳の師匠に出会い遠野物語にドハマりし文化領域で創業準備中。郷土芸能舞い手、HIPHOP好き、岩手ADC賞2018グランプリ受賞作品のプロデューサー。遠野文化友の会副会長などなど。ほそぼそと実家の鮭の味噌漬け販売中。

https://www.toknowjp.com/

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1988年生まれ。プランナー / バーテンダー 。「ケケケ」という屋号で、広告代理人的に、地域と絡みあうメディア・場・カクテルづくりをやってます。たゆたうバー「movar」、空きない-飽きない-商い「アキナイイエ」など。元・おきなわ移住計画代表。自由研究テーマは風俗と民俗と芸能。趣味はローカルウォッチ。境港市妖怪検定中級。

https://note.mu/omija

都会を経験したのちに、岩手と鳥取、生活拠点をそれぞれ移した二人が、全5回にかけて繰り広げるローカルトーク「くらしにきました」。

第3回では、地方でフリーランスの仕事をしているふたりの働き方や、共通点になっている「プロデュース」でお金を稼ぐこと、そして職業よりも“職能”に注目してみる、といったお話でした。

今回は、地域プロジェクトに関わる以上、一人だと動かせないものがあるなか「どうチームとして動くか」、その立ち位置やコミュニケーションついて、互いの考え方を共有していきます。終盤では、なぜかボケとツッコミの話に...!

特性と仕事。なぜ「企画」や「コーディネート」を担うのか

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岳:大見謝さんの、自分で書くこともできるけど、どちらかというと、「企画」や「コーディネート」の部分を担うことって強みだと思うんですよ。

で、僕も結構そこなんすね。自分の特性としては、自分で文章も書くし、映像も作るけど、そこよりも「デザイナーがデザインの意味をちゃんと伝えられるか」みたいな職人気質な人たちが苦手とする部分のお手伝いがしたいし、複数の人が関わるプロジェクトそのものを動かしていくっていうところに関心があるんです。

だから、大見謝さん自身は、「自分の特性に合った役割として自分の仕事を持っているのか」、もしくは「本当はこういうことやりたいんだけど実際には...みたいな葛藤の部分が大きいのか」、自分の特性をどう自覚しているのかは気になってて。

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(岳さんがこれまでに培った「考えること(プランニング)」と「動かすこと(プロデュース)」のノウハウ・スキルを共有し、地域でアイデアにかたちにする人を増やすプログラム『考えて動かす学校』も始動している)

大:そうですねぇ...。実をいえば、去年の3月までは、あんまりやりたくないことをやっていたなっていう感覚はあります。

岳:ええ! どういうことですか?

「60%が100%になる仕事」を選択する

大:「苦手なこと」や「やりたくないこと」で自分がプレイヤーになって動くのってストレスなんですよね。でも、当時は仕事を振れる人もほとんどいなかったし、全部自分がやるしかなくて、抱え込んでしまって。これは精神的に良くないなと思いました。その反動があるから、半年以上も休んでたんですよ。

岳:ああ、だいぶ反動があったんですね。

大:もう、仕事したくねーみたいな(笑)。こっちで「アキナイイエ」をやろうと思ったのも、その反動だったところがあるんですよ。「やってて自分が苦にならないことをやろう」と思ったのと、「自分の60%が他人の100%になることをやろう」と思ったんですよね。

岳:...というと?

大:人によっては接客業って、どういう風にコミュニケーションしていいかわからないとか、お客さんに気を遣うとか、大変なところあると思うんですよ。ただ、僕はだれかとのやり取りって全然苦痛じゃないし、苦手意識もない。バーで言えば、カクテルをつくるっていう単純作業とか職人的なこともすごく好きなんですよね。

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(ケータリングやゲストバーテンダーなど、自身で企画することもあれば、声をかけてもらった場所に出向き、各地でカクテルづくりを進める大見謝さんの取り組み「movar」。代々木上原のレストラン「Concerto」でバーテンディングしたときの様子)

大:それで喜んでくれる人がいるんだったら、その方がいいじゃんって思って。自分の気持ち60%で働いても、誰かの満足度が100%になるなら。だから、僕は”現場”で動く仕事が好きなんだなって思って。リアルタイムに相手の表情がすごくわかるような仕事を、そもそもしたいんだなと気づいて。

なので、今アキナイイエの中にバーをつくろうとしてるのは、やっと行き着いた「やりたいこと」かもしれないなぁと。

真面目グセがあるから、ポップさの意識を

大:そうそう、SNSの発信を見てて思ったんですけど、富川さんはポップに物事を伝えるの上手いですよね!

岳:ポップね〜(笑)ほんとですか?

大:うん。なんというか、近寄りがたかったものを、親しみやすくするのが上手だなぁ〜と。

岳:あ〜そこは、意識しているところはありますね。最近、自分の中で自覚し始めた自分の役割は、「入口をつくること」だなと。入口はできるだけハードルが低いほうがいいし、「学び」っていうよりも、どっちかっていうと「面白い」って思ってもらえたほうがいいなって思っています。単純にそういう表現が好きっていうのがあるんですけど。

真面目に何かを企画をしてるとき、ある瞬間に「あ、これ真面目すぎるな!」と自分で気づくことがあるんですよ。これは、物事を真面目に考えるクセがあるという自己理解でもあって、「これはいけない!」と、少し違う要素を入れるようにしてます。そこでバランスを取っているかもですね。

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(岳さんは「To know」事業の中で、「遠野物語」をもっと身近に感じて楽しんでもらうべくさまざまなイベントやフィールドワークを企画・運営している。これは遠野でのフィールドワークの写真)

大:自分の性質をある程度わかったうえで、自分で制御できるように。それができない場合は、他人の目線や手を借りるっていう。そういう「チームとして動く」意識をつねに持たれてプロジェクトをやっているんですかね。

岳:そうかもしれません。

弱さのシェア。「隙」がある人に「好き」がつく? 

大:僕、自分に欠けてるものとか、自分の弱さをわかっている人って強いなあと思うんですよ。で、「弱さ」ってのは、言い換えれば、人間の「隙」だなって思ってて。

急な話なんですけど、モテる人って、意外と隙がある人だったりしますよね。ちょっとヘマをするとか、欠けてる部分があると、人間味を感じやすいというか。

きっと、隙があるほどコミュニケーションポイントがたくさんあるんでしょうね。僕はどっちかというと強がってあんまり隙を作らないように生きてきたタイプなので...。

岳:そうですよね。大見謝さんはそういう感じする。多分できちゃうんじゃないんですか。自分で完結できちゃうみたいな。

大:器用貧乏のいけないところっすよね〜。

岳:それは、僕もそうですよ。やりすぎちゃうんですよね。

しいたけ占いとチームワーク。自己理解から相互理解へ

岳:そういえば、大見謝さん、「しいたけ占い」って知ってます?

大:あー! はい!

2019年下半期しいたけ占い   VOGUE GIRL

(「VOGUEGIRL」に掲載される、占い師しいたけによる星座占い。週間占い半期占いとがある。ウェブサイトより引用)


岳:僕は山羊座で、昨年あたりから、それを面白半分で読んでいたんですけど、大見謝さんは?

大:僕は獅子座です。僕も結構読んでますよ。

岳:ほんとですか! 実はあれ、わりと自己理解のきっかけになってて。山羊座って、0か100かみたいなところがあるんですよ。他人を寄せ付けず、孤高の存在になっちゃうんですって(笑)。

去年の暮れぐらいにチームのメンバーと話し合うなかで、いろいろ分かったことがあるんですよ。僕が集中している時とかは「声かけるな」オーラが出ているらしくって。結構、「富川一人が爆走している」みたいな状況になっちゃっていて、「あれ、自分必要とされてないのかしら?」とも思わせてしまっていたようで...。

でも僕の気持ちとしては、ただ集中しているだけなんですよね。みんなでいる時間も大事だけど、自分の時間がないとダメなだけで。そこで一人になって企画書作ったりとか、企画するときって一人じゃないとできないんです。

大:そういうつもりじゃなくても、そう見られてしまう可能性があるってことですよね。

岳:そうです。その話し合いのときに、自分の得意・苦手をちゃんと周りにも共有して、「無視したいんじゃなくて、これが僕の特性なんです。許してください」って伝えなきゃなと気づきました。

「弱み」がチームの生産性を高める

そういうのを開示してから、仕事がしやすくなってきました。最近Web記事で見たんですけど、居心地よく、安心感を感じられる、仲の良いチームっていうのは、生産性が高いそうなんです。

そのポイントとして互いに「弱みを見せる」というのがあったんですよ。一般的には「仲が良いから弱みを見せられる」っていう順番で考えがちだけど、逆らしく「あっちが弱みを見せてくれたから、こっちも弱さを見せて仲良くなろう」っていう順番なんですって。

大:あー、それはなんとなくわかる気がしますね。

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(岳さんのチーム/ユニット活動の一つにもなっている「ゆらしにきました」。タイプの異なる柳瀬さんと力を合わせ、過去には、千葉・金谷で「しゃらく祭」を手がけた)

岳:特にチームの上に立つ人がそれを率先してやるのが良いですよ、と書いてあって。その弱みを見せ方が、安心できる居場所づくりとして重要だって。そっから自分の弱い部分をシェアするようになりましたね。

改めて考えると、「チームで動く」ってすごく難しいなと思っていて。今は個人事業主としての仕事もやっているので、そっちで今稼いでいるんですけど、個人って意思決定もシンプルだし、自分の心地よいスピード感でできるじゃないですか。

けどチームでやる時に、意思決定のスピードと、自分の直感を一旦止めなきゃいけないっていうもどかしさを感じていて。一人でできるボリュームだからそれができているのかなと思うんですけど。一人とチームのバランス、いろいろ考えてます。

大:チームであるからできることって結構ありますよね。

プロジェクトの役割分担は、「分人」で切り替え

大:今、大山では地区の地域自主組織を立ち上げようって、そのお手伝いをしてるんですよ(2019.3.1時点)。月1回くらい集まって話しまくってるんですけど、生まれも育ちも職業も違う、30代から70代までの人たちが10人以上も集まっているんで、なかなか話がすぐにはまとまらないんですよね。でも、ゆっくりとでも組織が形になってきたら、「一人じゃできないことができるかもしれない」という期待感はあって。

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(2019年4月にできた地域自主組織「なわのわ」は、旧名和保育所を拠点に活動スタート。「食」や「ものづくり」をきっかけに地域の人が集まる場をめざして、現在は「コミュニティキッチン」をつくるためのDITプロジェクトを進行中)

いつからだったか、その状況をどうやって生かすか、っていうのを考えるようになりました。僕はこれを"状況資源"って言ってるんですけど。

この組み合わせ、この状況だからできること、このときの最善は何かっていうのをひたすら考えるんですね。一人だからこそ、みんなだからこそ、っていう「その状況におけるベストを考えればいいだけ」と思えるようになってからは、正直気持ちが楽になったというか。

あと、プロジェクトに合わせて、自分の中にある二つの人格を振り分けられるようにもなりました。一人で動きたい「個人格」と、みんなで動きたい「法人(チーム)格」と。たとえば、いちバーテンダーとしての活動は個人格で、自分のペースでやりたいし、誰にも邪魔されたくないなっていう気持ちが強いんですよね。

岳:わかるわかる。

大:法人格でプロジェクトに挑むときは、「みんなでやっていこう」の気持ちなんで、個人格でのこだわりは出さないようにしてます。手放せるものがすごい増えたというか。そういう個人と法人の人格の切り替えで、自分の役割意識の棲み分けもできてきましたね。

ちなみに、作家・平野啓一郎さんの「分人」の考え方を後から知ったんですけど、それに通ずるものあるなぁと気づきました。

岳:あるものの中でベストを尽くすって、一種のゲームみたいな感じなんですかね、チームで動くって。

大:今はわりとそういう感覚です。2〜3年前まではうまくいかなくてもどかしかったですけど、その時は、自分に固執していたというか、やたらに自意識が強かったんだと思います。去年、がつっと仕事を休んで、家事とかばっかりやってたので、いいリハビリになったのかもしれませんね(笑)。

岳:なるほどね〜。チームで動くときの「手放す」は僕のテーマだなあ。

大:「言うは易く行うは難し」なのも痛感してますが...(笑)

チームで飛び交う言葉を、「聞くこと」そして「翻訳すること」

岳:ちなみに、チームで動くときの大見謝さんが意識してることって何かありますか?

大:そうですね...自分の特性を活かせるような役割でいうと、「とりあえず話を聞く」っていう姿勢でしょうか。できるだけ丁寧なコミュニケーションを意識してます。

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(バーテンダーとしてカウンターの中で学んだ「聞く」は、ライターとしての「取材」や、場づくりにおける「ファシリテーション」の姿勢にもつながっているとか)

大:プロジェクト進行を妨げるような、何かしらのすれ違いや対立があるときって、お互いに相手がその考えに至った背景に目が向いてないだけのことが多いじゃないですか。裏側にある部分を知れたら、お互いに理解できることも増えて、関係が滑らかになり、物事は進みやすくなると思うんですよ。

そのためには、耳を傾けることから始めて、場合によっては「翻訳する」ことも必要なのかなって。想いがうまく伝わらないときって、その人たちが扱っている言葉のニュアンスが微妙に違うだけのときもあると思うんです。だから、話を聞いてみて、「なるほど。それって、つまり○○ということですね」と言い直して、伝えます。案外それで、「そうそう!」とスッキリすることってありますし。

そういう意味でも、感情とかロジックとか情報とかを整理していくのはわりと得意なので、「聞く」と「翻訳する」は、チームの中での僕の役目なのかもしれませんね。

「ボケ」と捉えて、「ツッコミ」を入れるチームだといい

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大:そういえば、さっきの「弱さ」っていう話に繋がるんですが、去年、マキタスポーツさんの『一億総ツッコミ時代(星海社)』っていう本を読んだんです。

その内容は、「日本人はツッコミすぎるよね」みたいな話なんですけど。Twitterとかで、すぐ人の揚げ足をとるみたいな。でも「物事を俯瞰してメタでツッコむよりも、ベタにボケる側でいよう」っていう話があったんですよ。その考え方、面白いなぁと思って。

さっき富川さん、自分が真面目すぎちゃうみたいな話をしてたじゃないですか。それ、わりと僕も自分自身に感じていることなんです。だから、その本読んでたら、「僕、もっとボケた方がいいな」と思って。

弱さを見せることも、僕の中では「ボケ」だなと思うし、他人の「足りないな」「よくないな」と思っちゃう部分も、「ある意味、人生を通して、その人がかましてるボケなんじゃないか?」って考えるように今はしていて(笑)。

それを、どうツッコむかっていうのが、チームワーク的には、すごく求められている気がするんですよね。ちょっと間を空けてみようとか、スカしてみようとか、ノリツッコミしてみようかなぁ、みたいな。

そう考えるようになってから、いろんな事がかなり楽になりました。自分に対しても人に対しても優しく見れるようになれた気はします。

岳:え〜、優しくなりたい(笑)

・・・・・・

自分の弱みを理解できると、人生が楽になる

「くらしにきました」第4回は、地方でフリーランスのプロデューサーとして働く二人の「チームで動くこと」についてのお話でした。

企画やプランニング、プロジェクトマネジメントといった、「チームを動かす」リーダー的役割を担っているお二人だからこそ共有できるところが多かったようで、勉強になりました。

そうそう、今回は、私の大好きな「しいたけ占い」がでてきました! 私は占い好きで、自分以外の人の星座もよくチェックしてるんですが、岳さんが「山羊座」と分かった瞬間「なるほど山羊座っぽい〜!」と大きな声を出してしまいました(大変失礼しました...笑)。

私がしいたけ占いを愛用しているのは、岳さんが話していたように「自己理解」のきっかけになるから。

しいたけ占いは、いつも優しい文章で私たちに「どうあるべきか」を教えてくれます。「あなたってこういうところがありますよね。だから、そこを生かして、こういうことをやってみるといいかもしれません」みたいな。そうやって自分のことを教えてくれる人って、貴重な存在だなと思うんです。(もちろん、しいたけ.さんが言ったこと全てがあてはまるわけではないですが)。

前回の記事でも似たことを書いていますが、自分の強みや弱点がわかっていると生きやすくなると思っています。自己理解が進んでいる人って、自分の心はもちろん、相手のことも大切にできて、精神衛生上とってもいいです。

たとえば、自分の弱点が最初からわかっている場合、「私はこれが苦手なのでできません」と早い段階で断ることができるので、自分も相手も余計なストレスがかかるのを予防できます。

断れないことでも、「苦手分野なので助けてください!」とヘルプを出すことができる。「できないとか助けてとか、みっともなくて言えないよ」と思う人もいるかもしれませんが、苦手なことを一人でやってなんとか成果を出すより、自分の力を過信せず素直にほかの人(その分野が得意な人)に助けを求めることで、予想以上の成果を出せることもあると思うのです。

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ちなみに、過去に自分の好きなところを無理くり100個あげてみたことあるんですけど、これやるとかなり自己理解深まります。脳内に留めず、アウトプットするのって思った以上に頭がスッキリします。

私は少しずつ自分の強みと弱みを理解できてきたので、これからは弱い部分を愛して「ボケ」ていこうと思います。そして、大見謝さんがお話していた通り、周りの人の「ボケ」に対していかにして「ツッコミ」を入れていくか、やっていきたいです。世界が面白くなりそう。

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次回、いよいよ最終回!岩手・遠野と鳥取・境港に共通する「妖怪」のお話。妖怪というフィルターを通して、仕事観や人生、人間関係について二人が語ります。未知の妖怪ワールド、最後にふさわしいとっても濃い内容です!


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