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ものかきのおかしみと哀しみ

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すれ違った人たち
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#生きるエッセイ

鹿の神がやって来た

鹿の神がやって来た

鹿の神?鹿の王? わからない。けどシカには違いない。

べつに珍しいことではない。里山だからシカぐらい出る。シカに限らず、イノシシ、キツネ、タヌキ、サル、ハクビシン、キジ、その他、名前を知らないもののけたちがみんな息をしている。

いまのところ、うちの近所ではクマは出ないけど、少し山に入っていけばいることはいる。

まあ、そういうところに入ってきて暮らしてるのは人間たちのほうなのだから、もののけた

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僕の面倒くさい機能

僕の面倒くさい機能

文章を読んでると、ときどき面倒くさいことが起こります。

誰かに対してとかではなく自分の中で。なんだろう。書かれてること(言ってること)の内容とか表現だけじゃなく、その構造を可視化する機能が勝手に立ち上がるから。

出来上がってる対象物(文章)をそのまま見てるのに、勝手にスケルトンになって、どんなふうに組み立てられてるのか、どんな要素が使われてるのか、何を強調したくて何を控えめにしたくてとか、ここ

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石ころを買うときドキドキが止まらない

石ころを買うときドキドキが止まらない

小さな菓子店が好きだ。菓子店っていう言い方で合ってるのか。ちょっと不安になってきたけれど、こういう店です。

チェーンで展開してるお菓子専門店でもなく、読めないようなくずし字の暖簾がかかっている老舗の店でもなく、家族経営っぽい感じで製造小売りしている菓子の店。

並んでるのは、おまんじゅうとか、カステラとか、焼き菓子とか、ロールケーキとか。和菓子もあれば洋菓子もあって、そこにあまり境界線はない感じ

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刺身に花を乗せる人生

刺身に花を乗せる人生

インターネットには日々どうでもいいことからどうでもよくないことまで、雑多なあれこれが流れてくる。

まあ、そんなの淀川とか多摩川の近くに住んでいて「川に水が流れてる!」と驚かないように、インターネッツ川にはいつも大量の何かが流れてるものだ。

なのだけど、たまに「なんでこんなものが?」と目を止めてしまうものもある。

今日も梅雨の晴れ間だからか、洪水気味のツイッタ川(久しぶりの晴れ間ってやっぱり呟

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梅雨の思い出

梅雨の思い出

何のひねりもないタイトルをつけてしまったことを、ちょっとだけ後悔している。

いやいや、そんなの変えればいいんじゃないか。誰にOKをもらわないといけないものでもないんだし。それはわかってる。でも変えないのは、そもそも「梅雨の思い出」なんてないからだ。

いま、前提が音を立てて崩壊した。その音を聞いた南米ペルーのアンデスを望むウニオン峠を行く荷運びのロバが足を滑らせそうになった。申し訳ない。

梅雨

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間違えることはあるけど、嘘はない。

間違えることはあるけど、嘘はない。

なんだかしょっちゅうRTしてる気もするけどファンだから仕方ない。

わざわざの平田さんがちょっと前にツイートしてた言葉だ。具体的に何に言及しての言葉なのかちょっと思い出せないのだけど。

「間違えることはあるけど、嘘はない」

わざわざというお店、いやもうお店の概念に収まらない宇宙だけど、その中で人間のやることだから「間違える」はあるけど「嘘はない」と言い切れるのに撃たれたのだ。

平田さんはとき

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なぜか鉄道で外国人に試される件

なぜか鉄道で外国人に試される件

なぜか駅、新幹線のホームで外国人にたずねられることがまあまあある。

なんだろう。見るからに忙しそうでピリッとした空気をまとってるビジネスパーソン風でもなく、学生でもなさそうだからちょうど声を掛けやすいのかもしれない。

でも、日本人にはおばあちゃんを除いてあまり話しかけられないので、僕が話しかけやすいのかどうかはわからないんだけど。

外国人に話しかけられるのは、だいたい突然だ。いかにも困ってて

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僕が美術館で転んでも世界は変わらないから

僕が美術館で転んでも世界は変わらないから

土曜日だし、ほんとにどうでもいいこと。いつもそうじゃないのかと言われたら、まあそうかもしれない。

その日は名古屋で仕事があって、その日のうちに横浜まで移動しないといけなかった。次の日、朝から横浜で取材が入ってたからだ。

ミーティングが少し長引いて、新幹線の時間まで1時間と少し。ふつうに考えれば名古屋駅に移動したほうがいい。しかも、その日持っていたチケットはEX予約と違って変更ができないタイプの

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好きです、この街

好きです、この街

日本人は(壮大すぎる主語)羞恥心が強いとか、思っていても口には出さないとか、ステレオタイプな論があるけどそんなことはない。

むしろ「言葉」に関しては割と恥ずかしいことも平気なんじゃないかと思う。愛の告白だってそうだ。

この前も、ある街を歩いていて目の前に《好きです、この街》とだけ描かれた看板が現れた。いきなりの公衆の面前で愛の告白。いくらなんでも大胆すぎる。誰がそんなに想いを募らせたのだろうか

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ショコラティエは名前が高い

ショコラティエは名前が高い

「チョコってなんであんなに値段高いんだろね」

地下鉄に乗ってたら、溜池山王から乗ってきた女性3人組のひとりが突然、そんな会話を始めた。

「そうだよねー。高いよね」

他のふたりも同調している。それにしても突然だなと思いながら、なんとなく気になってしまう。

「伊勢丹のなんだっけ、チョコがタイルみたいに敷き詰められてる店」
「あるよね、あるある」
「ゴージャスなとこ」

僕も脳内で伊勢丹(たぶん

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本に乗って本を食べる

本に乗って本を食べる

気がついたら朝が夜になっていた。

端的に言ってタスクをひたすら食べ続けるように過ぎていった日。

今日中締め切りの第二稿をアップして(今日中ってどこまでだ?)、でもその原稿はほぼそのまま入稿されて組版に回るから原稿整理も同時にして、明日が一日中、打ち合わせや取材で隙間時間しか作業できないので、その次の日に送らないといけない仮構成案作成をヒアリング音源を聞きながら前倒しして、合間に日課の外周りの家

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Not Too Lateなものたちのために

Not Too Lateなものたちのために

ショップの中を流すように服を見ているとNorah Jonesの『Not Too Late』が流れてきた。そう言えば、Norah Jonesはずっと聴き続けてる。好き具合がずっといい意味で一定しているアーティストの一人だ。

それに比べると、高校生とかのときと違って服にかける情熱があまりなくなって (当たり前だけど) なんとなくいまの環境と気分に合ってればいいや的なものになってるけれど 、感じのいい

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生きることは「ひょんなこと」かもしれない

生きることは「ひょんなこと」かもしれない

生きていると「ひょんなこと」がたまにある。

予期しない、得体のしれない、道理では考えられない。こう書くと、すごく重々しいけれど、なんていうか「そう来るか」みたいな感じだ。

偶然というのとも少し違う。べつにネガティブな要素はなく、だけど、どこかで運命的なものも漂わせながら自分の前に現れるもの。

まあ、そういうのがあるから人生はおもしろい。諸先輩方からすれば何を悟ったこと言ってんだと思われるかも

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