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奥井海生堂/奥井 隆さん(老舗昆布店4代目)

飲食店開業のキーマンとなる方にインタビューする「つなぐ人」。福井県での開業準備で心がけることや土地ならではの魅力について、さまざまな分野の方に教わります。今回ご紹介する奥井 隆さんは、明治時代から続く老舗昆布店の4代目。国内外の高級料亭などに昆布を提供する一方、福井ガストロノミー協会を立ち上げ、福井の食の振興にも寄与しています。

奥井 隆さん(福井県敦賀市)/奥井海生堂/福井ガストロノミー協会会長
敦賀の老舗昆布店奥井海生堂4代目社長。最高級の利尻昆布を北海道から独占的に仕入れ、全国の料亭をはじめ海外にも出荷するなど、一流の料理人も納得する味を敦賀から発信。2013年には一般社団法人 福井ガストロノミー協会を立ち上げ、県内の料理人たちとともに福井県の食の魅力アップを目指している。
https://www.konbu.co.jp/

プロフィール

1.独自の昆布文化が息づく福井の食

福井と昆布とのかかわりは歴史が深く、江戸から明治にかけては北海道でとれた昆布が北前船で日本海を経て、京都や大阪まで運ばれていました。その中継港の一つである敦賀には、古くから大量の昆布が荷揚げされていたことから、奥井海生堂は明治4(1871)年に昆布店として創業しました。

明治中頃には曹洞宗大本山永平寺から昆布の御用をいただくようになります。曹洞宗では「修行をするための身体を作るのは食」という考えから食を非常に大切にしており、開祖道元禅師の書である『典座教訓』では、食事を作る作法を厳しく説いています。食事を作る作務も座禅と同じく大切な修行で、“動の座禅”と位置付けているんですよ。昆布は出汁をはじめ煮物に使ったり油で揚げたりなど精進料理においても欠かせない食材で、現在も永平寺には、弊社の昆布職人が菊の花や蛇の腹の形に模した”ジャバラ昆布“を納めています。

何年も寝かせた“ヴィンテージ昆布”が多数ある奥井海生堂。
熟成させた昆布の出汁は海のワインとも言われる

毎年夏には利尻・礼文の質の高い昆布を買い付けており、専用の昆布蔵で数年かけて寝かせることによってうま味を引き出します。京都をはじめとする全国の高級料亭のだし昆布として愛用いただいており、近年ではアメリカ最大規模の料理学校『C.I.A(カリナリー・インスティテュー ト・オブ・アメリカ)』のニューヨーク本校や料理学校『ル・コルドン・ブルー』のパリ本校などで昆布やうま味に関する講演を行いました。

C.I.Aでの講座の一コマ。海外でも日本の昆布は注目を集めている

2.福井ガストロノミー協会を通して伝えたいこと

古代から平安時代にかけて朝廷に食材を献上する「御食国(みつけくに)」としての役割を持つなど、海と山に囲まれた福井は豊かな食文化が育まれてきました。実は昆布は日本でしかとれないもの。『和食は福井にあり』という向笠千恵子さんの著書がありますが、まさに日本料理のルーツといえる食材を支えてきたのが福井だったわけです。

こうした福井県の“食"を国内外に発信しようと、2013年に福井ガストロノミー協会を設立。県内の料亭や旅館、食品販売の経営者有志で県外の有名シェフを招いて勉強会をしたり福井の食材の新たな価値を見出したりと、さまざまな活動を行っています。

福井ガストロノミー協会名誉顧問の門上武司氏(左)とともに

ここ数年で福井にもミシュランの星がつくレストランが増え、2022年5月にはパリで開かれた「第54回ル・テタンジェ賞国際料理コンクール」に福井市のフランス料理店「ル・ジャルダン」(2022年9月末リニューアルオープン)の堀内 亮シェフが日本人史上3人目の優勝を果たすなど、福井の食のレベルは少しずつ高まっているのを感じます。

しかし、人材はまだまだ足りているとは言えません。県外や世界ではどんな食が注目されているのか。常にアンテナを張り積極的に情報を取りに行く料理人が増えることで、新しいインスピレーションや料理人同士で切磋琢磨する環境が生まれるのではないかと考えています。

3.一人の料理人でまちは変わる

学生の頃、コペンハーゲンに10ヶ月ほどいたことがあったのですが、昔のコペンハーゲンといえば冷たいスモーブロー(オープンサンドイッチ)くらいしか思い浮かぶ料理はありませんでした。ところが、2003年にレネ・レゼピ氏によってレストラン『noma(ノーマ)』が誕生して以来、まちの風景が一変します。「世界のベストレストラン50」で4度も世界一に輝くなど世界中から評価されることで、ただの倉庫街だった場所に新しい店が続々と誕生し、食の都へと変貌したのです。

特別なインフラを作らなくてもたった一人の才能のあるシェフによってまちが変わった事実は、食の可能性をさらに広げました。もしかすると福井も一人の料理人によって大きな変化が生まれるかもしれません。そのような意味でも、この招福プロジェクトには大きな期待を寄せています。

福井県は山や海に囲まれた素晴らしい景色とそこで育まれた上質な食材が手に入ります。しかし量が少なく大手物流に乗らないため、県外での認知度が低いというデメリットがありました。しかし、これからは食材に旅をさせるのではなく、食べる人が旅をする時代。料理人の腕次第で世界中から人を呼ぶことだってできます。

2024年に予定されている北陸新幹線の福井・敦賀延伸によって人の往来が活発になり、これまで未知の存在だった福井は必ず注目されるでしょう。まだまだライバルが少ないこのチャンスを逃さない手はありません。

奥井海生堂がある敦賀市でも、より多くの方に福井の食と滞在を楽しんでもらおうと、現在新しいプロジェクトを進行中です。ポテンシャルを秘めている福井県で、これまで培ってきた歴史や文化を活かしながら、食の多様性を広げていただきたいと思います。(取材日:2022年6月/石原藍)


つなぐ人ーアーカイブ

株式会社やまよ/廣瀬義徳さん(漆器屋)
ラ メゾン ドゥ グラシアニ 神戸北野/土肥秀幸さん(フランス料理)
御料理 一燈/倉橋紀宏さん(日本料理)
Restaurant cadre/濱屋拓巳さん(フランス料理)
むつのはな/五十嵐美雪さん(日本料理)
福井県交流文化部定住交流課/三津谷勇気さん
杉原商店/杉原吉直さん(越前和紙の問屋)
奥井海生堂/奥井 隆さん(老舗昆布店)

福井県での飲食店開業を応援!招福プロジェクトとは

プロジェクト推進中!お問合せは下記URLから。
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  2)福井県への視察ツアーを企画 
  3)補助金/助成金/移住に関する相談窓口
  4)実店舗でテストマーケティング可能

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