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むつのはな/五十嵐美雪さん(日本料理)

飲食業界のトップランナーにインタビューする「つなぐ人」。福井県での開業準備で心がけることや土地ならではの魅力について、飲食に関わる様々な分野の方に教わります。今回ご紹介する五十嵐美雪さんは、京都で和食、東京でイタリアンの修業を積み、2020年に地元である福井県にUターン。2021年に鯖江市河和田(かわだ)地区で週2日限定の飲食店『むつのはな』をオープンしました。

料理人・茶湯者(日本料理)/むつのはな/五十嵐美雪(福井県福井市)
福井県出身。大学卒業後、5年半京都で懐石料理の修業を積む。その後、東京に移り、ミシュラン一つ星のイタリアンレストラン『L’asse(ラッセ)』(2022年8月閉店)で3年間経験。同店で副料理長の役職を得る。2020年に地元福井にUターンし、2021年、禅僧栄西が著「喫茶養生」の考えである“五臓和合の膳※”を献立づくりの軸に置いた料理をふるまう『むつのはな』をオープン。

プロフィール

1.東京から地元・福井にUターンし、コロナ禍で開業。

地元・福井にUターンしたのは2020年。大学卒業後に料理の世界に入り、京都と東京で8年以上修業を積みましたが、出産を機に飲食業から一旦離れました。コロナウィルスの蔓延もあり、子育てを最優先に考えると自然豊かな福井の環境が良さそうだと思ったのが大きな理由です。

福井でお店を始めることになったのは移住前から続けていた「茶道」がきっかけ。茶道を通して知り合った方から「自分が所有する築25年の民家を使って何かやってみたら?」と勧められたのです。建物があるのは周囲が田んぼに囲まれているのどかな場所。窓から見える自然豊かな景色に魅せられて、自分のできる範囲でやってみようと、週2日限定の飲食店『むつのはな』を始めることにしました。

鯖江市河和田(かわだ)地区は福井の伝統工芸の一つ、越前漆器の産地。
近くに工房も多く、店でも漆器や漆塗りのカトラリーを使っている

お店を始めるにあたり、内装の大部分は自分たちでDIYしました。福井県では他県から移住する際に移住支援金がもらえます。また移住と同時に創業を検討している方は創業事業支援金も支給されます。しかし私は当初、福井でお店を開くとを考えていなかったので申請しませんでしたが、これからお店を始める方はぜひチェックしてみると良いかもしれません。

2.子どもとともに自然を楽しみ、食材選びに馳走する

お店で扱う食材は、人の紹介やご縁でつながった生産者さんが多いですね。基本その日お店で使う分を自分自身で馳走します。魚に関しては南越前町に信頼している漁師さんがいて、毎朝連絡をもらい、その時水揚げされた魚を求めて現地に足を運ぶのがいつものルーティン。漁港で魚を選び、すぐに内臓を出して持って帰ることができるので、鮮度も抜群です。

素材の味を活かし、調理方法はできるだけシンプルにすることで、
山の幸、海の幸の豊かさを感じられる

野菜や米、酒も美味しいのですが、その理由は水がいいからだと思っています。茶道にも水が欠かせないので、身近に美味しい水が手に入るのは福井県ならではの魅力ですね。『むつのはな』でもすぐ近くにある刀那清水(となしょうず)をはじめとして、多くの水源からその日ベストだと思う湧き水を使っています。

お子さんとともに野点をするようになったという五十嵐さん。近くの湧水を使うことも
福井県では、認定基準を満たした湧水等を「ふくいのおいしい水」として認定している。


食材の仕入れは、子どもも巻き込んで産地に行くこともあります。一つの教育としていろんな景色を見せることで、将来何かのきっかけになれば嬉しいなと思って。福井は学力や体力が全国でもトップクラスだと言われていますが、自然が身近な環境が何よりも子育てに大きな影響を与えていますね。もちろん、子育てのサービスは都市部の方が充実している面もありますし、暮らしの部分でも車が欠かせないなど時間や手間がかかることもありますが、育てやすさに関してはピカイチだと思っています。


3.超えるのは昨日の自分。地域に根付く覚悟を持つ。

福井県は基本的に外食が少ない文化。新しいもの好きな一面もあるけど、ベースとなる食文化が息づいていると思います。オープン当初は私もほかの店を意識したり、個性を出そうと和洋問わず尖った料理を出したりしていましたが、ある時常連さんが「美雪さんのベーシックといえる料理が食べたい」と言ってくださったんです。その言葉で目が覚めて、単に新しさを追い求めず、調理法も削ぎ落とし、よりシンプルになっていきました。

大切なのは、身近にある豊かな食材を自分なりに咀嚼して料理し、お客様に食材へのアプローチや発想の面白さを感じ取っていただくこと。結局、超えなければいけないのは、昨日の自分であって他の人ではないんですよね。日々感じたことや知り得たことを、実際に召し上がっていただく料理にどうやって落とし込むのかがものすごく苦しい作業でもあるので、ほかのお店を意識する時間がなくなってしまいました(笑)。

「五臓和合の膳」を意識し、コースの締めに抹茶が供される

都市部に比べると福井は飲食店自体の数が少ないので、開業のハードルは高くはないと思います。自分の腕を磨くことはもちろんですが、人とのつながりも重要。これまでの経験にあぐらをかくことなく、「地域に根付く」覚悟を持って、出会う人を大切にしていくことでご縁は広がっていくと思います。私もまずは地域に愛されるお店を目指し、県外はもちろん、もっと力つけて世界から来ていただけるようなお店を目指したいと思っています。(取材日:2022年6月/石原藍)

※「五臓和合の膳」とは。栄西著、第1「五臓和合門」、第2「遣除鬼魅門」の上巻、下巻でなる「喫茶養生記」から。その五臓和合門では、五臓を五行に配当し,心臓は苦味を好むので茶の苦味によって心臓の病を治し、五臓が調和すると説くことから、茶を軸に五臓に良いとされる食材を使った膳を考えることである。


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