鍛冶師 藤田純平

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鍛冶師 藤田純平

このnoteでは日々の鍛冶仕事に僕なりの哲学を落とし込んだ記事を毎回1テーマに絞って書いていきます。よろしければフォローよろしくお願いします。 鍛冶理念『刃物で諦める人をゼロにしたい』 鍛冶工場MUJUN WORKSHOP職人第一号 刃物youtuber

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  • 富士山ナイフ製造紀

    富士山ナイフの日々の作業・実験の記録まとめ -------- +個人的見解・エッセイ

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わたしのおしごと

こんにちは。鍛冶を始めて2年が過ぎようとしている藤田です。 2020年はたくさんアウトプットするぞ!と意気込んで色々動き回っている日々です。 今日はわたしのおしごとについて書いていこうと思います。 1,一人の若者として何ができるか?僕は鍛冶屋になる前は音楽を生業にしてきました。 ステージでの演奏、楽曲制作、講師業、パフォーマー、審査員、。 音楽を通して様々なおしごとを経験しました。 そんな僕が大好きな音楽を離れ鍛冶屋へと転身したのにはこの問いかけに答えるためでした。 「一

    • 職人の勘×科学

      こんにちは。鍛冶師の藤田純平です。 世の中には職人の勘というものがございまして。 10年、20年、、と毎日のように続けていると自ずと大事なポイントが掴めてくるようです。 今日はそんな職人の勘と科学に基づいたデータとの擦り合わせのお話です。 科学的データの参入歴 時代は昭和初期。鍛冶屋にも機械化が導入されこれまでの人の手で作られた刃物と機械工場で作られるそれとが混ざり始めた頃。 人の手、つまり職人の技量や"勘"に委ねられていた時代とは違い、〇〇だから△△といった機械

      • 二乗の聞き力

        こんにちは。鍛冶師の藤田純平です。 僕にはたくさんの師匠がいます。 みなさん60なんてとうの昔に迎えられた方ばかりなのですが、お話をしていると年齢なんて感じさせないエネルギーを燦々と放っています。 今日はそんな師匠から学ぶ時に僕が意識していることを共有したいと思います。 人の話から得られる学びを何倍にも引きあげてくれる「聞き力UP」の技です。 「話のポイントを探る」まずはじめに全員の師匠に共通する点を上げておきます。 それは「みんな話出したら止まらない」という点で

        • "戻す"と書いて"進む"と読む

          こんにちは。鍛冶師の藤田純平です。 今日は、「いぶし」の作業を行いました。 富士山ナイフのいぶしはとても美しいな〜✨ 前回までの記事"富士山ナイフ製造記"にてあーだこーだ実験してはことごとく失敗に終わった事を綴ってきましたが、今回は諦め末 元通りの作業工程で進めました。 色々実験していく中で積み重ねた失敗の上、元に「戻す」事を選んだ僕ですが、作業をしていて これは「前進」だなとふと思いました。 「戻す」を「進む」と読んでみるとしっくりきた帰り道の軽トラはいつもと変わら

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        • 富士山ナイフ製造紀
          7本

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          つまらん作業で磨くもの

          こんにちは。鍛冶師の藤田純平です。 今日はとてつもなくつまらない作業をし続けた1日でした。 楽しい作業の中にもあるのですね。 なんだこの作業。っていう時間。 このやらなければならないが、やりたくない仕事 に出くわす度に僕は「今は精神を磨いているんだ!」 と言い聞かせながら手を動かす事に決めています。 目を背けず、逃げず、ただ続ける。 それでもなんとかこの時間を短く出来ないか試行錯誤をしたくなってきます。 余裕がある時は研究して構いませんが、今日に至っては職人3人

          つまらん作業で磨くもの

          後輩から学ぶ

          こんにちは。鍛冶師の藤田純平です。 富士山ナイフの製造をはじめてかれこれ2年が過ぎようとしています。 この"富士山ナイフ"というプロダクトは、鍛冶職人の育成という大きなテーマがあります。 工場の職人全員が一緒に手を動かして後輩は先輩のやり方を見て学び、出来るように練習し、富士山ナイフの工程が身体に馴染んだ頃には他の刃物作りにも共通する基礎技術が磨ける! というカリキュラム的要素があるのに加え、 工場として資金を稼ぐ力をつける事で 腕を磨きながら経済的にも自走していける

          後輩から学ぶ

          挑戦の末の諦めは潔く

          こんにちは。鍛冶師の藤田純平です。 さて!富士山ナイフの黒染め作業も終わりましたよ。 ずばり、、 NG。。残念。 理由はやはり前回のグラインダー作業でできた細かいキズが気になる点。 こればかりは仕方がないです。このキズを取り除くには手間がかかりすぎてしまいます。 ここでこの肌に対する追求は一旦保留にしていきたいと思います。 もちろん追求すればするほど改善される部分はあります。 が、それは製造しながらのことであり、没頭しすぎるのも時に毒になり得ます。 今回の肌

          挑戦の末の諦めは潔く

          壁の先には壁

          こんにちは。鍛冶師の藤田純平です。 ものづくりをしていると上手くいく事もあればいかない事もあり。 「"なぜ?"と向き合う瞬間の連続にどう立ち向かうか」 というのが職人に与えられた一つの使命なのかもしれません。 さて、今日も富士山ナイフの肌のツヤを整えて参りましょう。 前回の続きで一度バレル作業へ戻り再度黒染めをしてツヤ感を確かめます。 バレルを終えた感想では、かなりマット感は増しました。黒染めも上手くいきそうな予感がしております。 ただ一点、なかなか解消されない問題も

          黒染めのツヤ感、若干の大差

          こんにちは。鍛冶師の藤田純平です。 今日は黒染め作業をしましたよ。 水・苛性ソーダ・亜硝酸・リン酸 を調合した黒染め液。鍛冶屋ではこの方法を「いぶし」と言う。(作りたては白い液体であるが作業を重ねるとこのように赤褐色になってくる。) 現在 富士山ナイフの肌の調整をしておりまして、今回注目すべきはズバリ「肌のツヤ」です。 実はこのツヤ感ですが、黒染め作業で決まるものではなくその前の状態で決まるのです。 具体的にはピカピカに磨いてあるものを黒染めすると黒光りに、マットな

          黒染めのツヤ感、若干の大差

          富士山ナイフ、バレルで目が回る

          こんにちは。鍛冶師の藤田純平です。 今日は先日の富士山ナイフの作業の続きをしました。 仕上がりの刃の見栄えの均一化と美装強化を狙っていますが、今回はバレルという機械を使う作業です。 聞き慣れない名前のマシンだと思うので少しご紹介です。 「バレル」 :ドラム式の容器に研磨物・研磨石・コンパウンド・水 を入れ回転させる研磨方法。 刃物製造の仕上げ研磨でよく使われている技術。 わかりやすく写真にすると、、 が↓ です。笑 これはかなり大袈裟ですが、実際はゆっくりと重

          富士山ナイフ、バレルで目が回る

          停滞?後退?前進!!

          こんにちは。鍛冶師の藤田純平です。 富士山ナイフの製造をはじめて2年近くになりますが、まだまだトライアンドエラーの繰り返しのなかで失敗とにらめっこの日々です。 今日も今日とて刃の仕上がりを左右する磨きの工程の見直し作業。 以前から気になっていた部分を改良するためのトライですが、なかなかうまくいかず。 1丁2丁だと問題ではありませんが500丁単位になると効率化や統一感といった部分や作業する職人ごとの共有など考えることが多く。 考えてもその通りにいった試しもなく、このあた

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          夢の隣にある苦悩

          こんにちは。 鍛冶師の藤田純平です。 今回は自分のネガティブな側面から記事を書いていこうと思います。 僕には夢があります。 刃物で困る人をゼロにしたい。というものですが、この夢があるがゆえに感じていた苦悩を綴っていきます。 自分に対して違和感を感じ、少し歩みを止め内面と向き合う時間が欲しいと思った2ヶ月間の話です。 自分の思い描く夢へ近づくための歩みを止めたいと思った僕は、これが贅沢であり甘え、倦怠なのかと疑ったりもしました。 が、今思えばその些細な違和感を無視せず

          夢の隣にある苦悩

          農家×鍛冶屋の社会実験からの考察

          こんにちは。MUJUN WORKSHOPの鍛冶師 藤田純平です。 今回は農家×鍛冶屋で行なっている社会実験企画『MUJUN EXCHANGE』から見た、価値を交換した先にある社会への考察をまとめていきます。 1.MUJUN EXCHANGEのはじまり 2020/4/21 私がTwitterでつぶやいた一言が次々と共感を呼び瞬く間に拡散されたのがキッカケでした。 社会からどんな反応があるのか観察してみようかという気持ちだったのですが、なんと翌日には1軒の農家さんから収穫

          農家×鍛冶屋の社会実験からの考察

          後継者志望者から見えたMUJUN WORKSHOPの軸

          こんにちは。MUJUN WORKSHOPの鍛冶師 藤田純平です。 当工場が稼働して程なくから定期的に「将来鍛冶屋になりたい」という方からの問い合わせが多く寄せられています。 そしてこの春、新たに1名の若者が当工場で鍛冶修行をはじめました。 (2020年7月現在では私含め3名の若者が日々汗を流しております。) 実際に当工場が開設されて丸2年となる今、鍛冶を志す様々な人達との出会いから紐解く『MUJUN WORKSHOPの軸』をまとめてみました。 1.MUJUN WORK

          後継者志望者から見えたMUJUN WORKSHOPの軸

          新しい研ぎ直しシステム論「包丁研ぎ直し1,000円」は高いのか?

          こんにちは。 MUJUN WORKSHOPの鍛冶師 藤田純平です。 今回は刃物の研ぎ直しという概念を見直してみようと思います。 題して新しい研ぎ直しシステム論「包丁研ぎ直し1,000円」は高いのか? 1,鍛冶師の見解このような質問を受けて、ぱっと答えが出る人はおそらく少ないでしょう。 なぜなら、包丁研ぎ直しを業者に頼んだ事が無い人がほとんどだから。 それでは、鍛冶師としての意見を率直に申し上げます。 「包丁研ぎ直し1,000円」は「高い」です。 はい。「高い」です。

          新しい研ぎ直しシステム論「包丁研ぎ直し1,000円」は高いのか?

          研げば研ぐほど切れなくなる理由

          最初に答えを言っておきます。 それはあなたが 『研ぎ方を間違えているから』 1.研ぐことの素晴らしさ冒頭一言、『あなたが研ぎ方を間違えているから』 一見トゲのある言葉ですが仕方ありません。 事実です。受け入れましょう。 そしてこの記事では研ぐ時の「コツの紹介」や「正しいやり方」などの"How to"を書くつもりは全くございません。 (気になる方は記事の最後に関連リンクを載せておきます。) ではこの記事は何が目的なのでしょうか? それは 『間違えた研ぎ方から紐解く研ぐ

          研げば研ぐほど切れなくなる理由