【小説】なし太【2000字ジャスト】
なし太は自分の名前が嫌いだった。
漢字で書けば果物の梨なのだけれど、瑞々しく生命力のある人間に育ってほしいと名付けた両親の思いとは裏腹に、学校では玉なし太だとか根性なし太などと呼ばれ、いじめられていた。
なし太はそれでもただ微笑んでいた。
微笑んではいたのだけれど、そこではないどこかのほうが好きだった。
なし太は学校にあまり行かなくなり、とはいえ家にいるのもいやで、山でひとりで遊ぶほうがずっと楽しかった。
家にいると両親がなし太に謝るのが、なし太は嫌だった。
なんと言っていい