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小説:イグニッションガール 【2000字ジャスト】

「低気圧ぶっころす」と、私は目が覚めると同時に呟いた。 パジャマにしているパーカーのフードで首のストレッチをしたが、頭は重いままだった。 たぶん今、頭が2トンくらいある。 私はベッドに寝たまま身体をずりずり移動し、テーブルの上のペットボトルに手を伸ばした。 しかし、あと少しのところでペットボトルは向こう側に倒れた。 私は天井を見つめたまま、「ミルクティーぶっころす」と呟いた。 空腹ではなかったけれど、頭痛薬を飲むためになにか食べようとキッチンに下りた。 「頭が痛いときはカフ

    • きっと明日

      気が紛れている事実が辛い 不確かな未来について その場しのぎの未来について 失う可能性のほうが高い未来についてなら 際限なく空想できること 約束できない明日について 約束できない明日について 確約めいたことを話すな 僕は明日いない それでもいいよと君は言う 悲しいくらい君は言うのだろう

      • 詩 : 瀝青

        真夜中の怪物に触れる 重く固い瀝青のような負 ねばつくネガティブで手を汚しながら それでもトラウマをこねるしかない夜 ピッチのような陰鬱は水を弾き いつまでも洗い流されることはない どれだけ雨が癒そうとしても 夜明けも明日も見たくない 静かな地中で眠っていたい 夜の底で瀝青に触るうち いつしか僕は瀝青になる

        • 本日の詩

          僕は愛する 僕は焦がれる 世の中に毎日がっかりできていた頃 月を見て電灯を見て月を見てなぜだか月の温もりを知り 死んだって空には行けない 鈍重な土になおさら飲まれるだけで 越えられぬ夜を乗り越えた君の空 この世でいちばん晴れ渡る空 ぼんやりと灯る火よりも強烈な火花となりてシナプス焼かん 春の日や デフォルトが虚無 土香り

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        • 小説【Ouka】
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          自由律俳句 : 行く空

          「抱えすぎないほうがいい悲しみ」 「考えすぎないほうがいい出来事」 をできるだけ正確に見極められたら、どれだけ世界が晴れるだろうか 空はどんより曇っている 少なくとも今は

          自由律俳句 : それでも

          人間の『まさか』は 神様の『またか』でも

          詩 : それはなんの悪魔だ

          どうしてこうなった? どうしてこうなった? 誰か断片でいいから教えてくれ 俺の倫理の断片にできるように ほんの小さな一滴でいいから 自分の血が見たくなった それが異様な赤であることに 安心するために 目から無色の血を流す その白々しさ 自分の手の甲を切ってはみるけれど それは仕事に支障がない部分だった 同情よりももっと無邪気で卑怯な傷だった

          銀の輪で跳べ

          あいかわらずよくわからないシルバーリングをつくっている 銀相場が高騰し続けているこのご時世に

          自由律俳句 : 仲裁

          猫のケンカすらとめられないのに?

          自由律俳句 : 春

          外で猫が闘って春

          詩 : それでも雨は

          降り続く雨は 春にしては冷たくて 悲しみそうにも なるけれど それでも雨は 雨なりのやさしさで 山菜を伸ばすのでしょう びょ〜んて

          エッセイ : あの人のこの一日

          新しい 朝は来るのか 最上川 思わず一句詠むくらいには、お風呂はヒマだ でも、ヒマで然るべきだ せめてお風呂くらいは オイルキャンドルを灯しながら真夜中に長風呂をキメていた もう朝は来ないんじゃないかと思うくらい静かな夜だった それでも朝は来た 確認はとれていないけれど、たぶんみんなにも たぶんあの人にも 願わくばあの人のこの一日が できるだけ悲しみのすくない日になりますように

          短文 : こころのかまど

          怒りは炎である。 扱いを間違えば己も他人も炭にする。 EQ(感情的知性)とは竈である。 炎を撒き散らさずに包み、その熱でご飯をつくり、誰かに食べさせてあげることもできる。 そのご飯が言葉なのか行動なのかはわからない。 でもたぶんそれは温かい。 怒りを乗り越えられた人が優しいのは、心に竈を作れたからなのかもしれない。

          雑文 : No Music No お風呂

          雨の真夜中に窓を開けて風呂に入りながら、 雨音と一緒に聴くのに適した音楽。 たぶんLOVE PSYCHEDELICOあたりじゃないかなと思うんですけど。 スガシカオか吉井和哉でもいいかもしれない。 いつも3時間くらいお風呂に入っているので、音楽は割と大事だし、往々にして枯渇してるんですよね。 「これこないだ聴いたわ」なんて気にしてたら、聴く音楽がすぐなくなる。 風呂に持ち込むキレートレモンウォーターくらいすぐなくなる。 たとえば今夜みたいな特徴のある夜、雨が降っていてくれ

          雑記(あるいは日記) : 春の決めかた

          おはようございます。 と言っても、うたた寝を睡眠に含めるならの話ですけど。 空が光をとり戻しつつあるので、やっぱりおはようございますでいいかもしれませんね。 じゃあおはようございます。 上の文章に「うたた寝光」みたいな、くそダジャレみたいな文字が見えた気がするけど偶然なので僕のせいじゃないです。 山菜を採りたいな、と思うことについて。 もういいかげん春と断言してもいい時節になると、特定の田舎の民はそわそわし始めます。 そう、世はまさに大山菜時代。 山菜採りをしない人には冗談

          短歌 : 幸福花火

          幸福のかたちと不幸せのかたち 横から見るか下から見るか