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小説:イグニッションガール 【2000字ジャスト】

「低気圧ぶっころす」と、私は目が覚めると同時に呟いた。 パジャマにしているパーカーのフードで首のストレッチをしたが、頭は重いままだった。 たぶん今、頭が2トンくらいある。 私はベッドに寝たまま身体をずりずり移動し、テーブルの上のペットボトルに手を伸ばした。 しかし、あと少しのところでペットボトルは向こう側に倒れた。 私は天井を見つめたまま、「ミルクティーぶっころす」と呟いた。 空腹ではなかったけれど、頭痛薬を飲むためになにか食べようとキッチンに下りた。 「頭が痛いときはカフ

    • 【日記】雨が来る、鳥が飛ぶ

      ゴマ粒みたいに高く飛ぶ鳥から見れば 地表の人々の悩みも小さく見えるのだろうか 長い道のりを一歩一歩進む人間を見て 「飛べばいいのに」とか思ってたりするんだろうか 焼き鳥にしてやろうか とはいえ鳥にだって悩みはあるのだろう なんだか今朝から左の羽の付け根が痛いだとか 横風に煽られたときに落としてしまった虫のことだとか 一昨年バードストライクで死んだあいつのことだとか 焼き鳥のことだとか 生き物は主観でしか生きられない 客観は主観的な空想でしかない それで

      • 【日記】海に降る、誰も知らない雨音

        今日も雨音が屋根を打つ。ため息はつかない。濡れなくてよかった、と思う。 世界のどこかでは今まさに雨に打たれながら耐えている人がいるのだ。冷えた指先で濡れた靴下がずれるのを何度も引っ張り上げながら、背筋の悪寒を筋肉の強張りで耐え凌ぎ、柔らかく乾いた部屋を夢に見ながら歩き続ける人が。 それに比べれば、雨音がほんの少し憂鬱にさせることなんて些細が過ぎるというものだろう。 僕をいつか打った雨は、今はもう巡り巡って誰かの涙になっていたりするのだろうか。 そんなものは早く乾いてし

        • 【日記】換気の歌

          なにかに怯えるように創作や趣味に没頭している。 たぶん邪念や後悔に支配されることに怯えているのだと思う。 学んでいる間は余計なことを考えずに済む。 作りかけのもの、設計段階で止まっているもの、あと一歩で閃きそうなもの、そんなものがたくさん散らばっている。 枕に顔を埋めて足をばたばたさせている時間はない。 とはいえ。 とはいえなのだ。 こんな雨の秋の夜。 よろよろと過去が歩み寄ってくる。 言えなかったことも、言わなきゃよかったことも、間違った選択も、間に合わな

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        小説:イグニッションガール 【2000字ジャスト】

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          【日記】エロ画像を見ることにしている(語弊)

          心の持ちかたを一定に保つなら、視界に入れないほうがいい世界というのはある。 “住む世界”なんて言葉は使いたくないけれど、嫌いなもののことばかり考えている人とはどうも、長い時間話すことは避けたい気持ちになる。 どうしてそんな、自ら気分を滅入らせるようなことをするのだろう。 もしかすると、『話せばスッキリする』という言葉が一人歩きしてしまった結果なのかもしれない。 あれは言語化することで嫌な気持ちの正体を露わにし、整理し、前進できるように、という意味じゃないのかな、と思うのだけれ

          【日記】エロ画像を見ることにしている(語弊)

          【日記】エマールをさがせ

          めちゃめちゃ普通の話していいですか? いやべつに日記だから普通の話のほうが普通なんですけど。 こないだエマール買いに行ったんですよ。ウール洗うあれ。 あまり時間的な余裕がなかったもので、エマールのボトルだけぱっとカゴに放ってしゃっとレジへ、とか思ってたんですね。 それで、颯爽と入店してぴゃーって真っすぐ洗濯洗剤コーナーへ向かうじゃないですか。 そのとき行ったドラッグストアが普段行かない、ちょっと大きめのとこで。 うわぁ壁一面あのあれだ。洗濯洗剤。と思いつつ、左上

          【日記】エマールをさがせ

          【日記】カサンドラは旅に出た

          カサンドラは旅に出た。 それはおそらく長い旅だった。 旅の長さなんて終わるまでわからないけれど、それでも。 僕がそれを知ったのはカサンドラがすでに旅に出たあとだった。 もちろん行先なんて告げられていない。 そういえば最近見ないな、と思っていたところへ、知人からカサンドラの近況を聞かされたという有様だ。 エーゲ海に行ったのかもしれないし、木星に行ったのかもしれない。 どこだっていい。どこだって同じだ。 どちらにしろ、旅なのであればいつかそのうち帰ってくる。 帰ってこないのであれ

          【日記】カサンドラは旅に出た

          【日記】まつがいない

          お風呂に入っているときなんかは結構頻繁に流しているはずなのに、スガシカオだかシガスカオだかわからなくなる。 ものすごく失礼だよなとは思う。けれどどうしようもないのだ。 日本語が不得手なままでぼんやり生きているので、音が近い単語を頭の中で取り違えてしまうことがままある。 ビニール袋と猫を道端で見間違えるくらいよくある。 ヴィム・ヴェンダースとジム・ジャームッシュが混ざりそうになることもある。撮っている映画はぜんぜん違う空気感のはずなのに。たぶん同じくらい好きなせいで。

          【日記】まつがいない

          【日記】虫の青春パンク

          虫が鳴いている。 すっかり涼しくなったけれど、もう少しだけ網戸のままでいたい。 虫の声が好きというわけでもないけれど、家電や電子機器のファンの音なんかよりはよほど好きだ。 虫の鳴く声はJ-POPなのだろうか。 あれはたしか求愛でしたよね。 一見綺麗に聴こえるけれど、その実、色恋ばかり歌っている。 そう思うと、なんか微妙な気分になってきたな。 もちろんそれは僕が虫語を理解していないだけで、もしかしたらそうじゃない虫もいるのかもしれない。 世知辛い世の中でモテない

          【日記】虫の青春パンク

          【日記】夢を歩く

          夢の中にしか存在しない場所、というものがある。 何度も同じ場所を夢に見る。 誰にでもあるものなのかはわからない。 少なくとも僕にはある。 幼少期にどこかで見た景色で、見た記憶を忘れているだけなのか。 あるいは風景の断片をつなぎ合わせて頭の中で作り上げたものなのか。 もしかしたらまったく実在しない場所なのかもしれない。 だとしたら少し怖い。 あまりにもディティールが過剰であるし、あまりにもその夢を覚えすぎているのだ。 その場所は、緩い斜面に広がる古い住宅地だっ

          【日記】夢を歩く

          短歌 : てんき

          雨を待つ 降れば降ったで 晴れを待つ 転機になれと 傘も持たずに

          短歌 : てんき

          【小説】 ラテ

          庭にときどき猫がくる。 餌を与えたりはしないし、名前をつけたりもしない。 ただそこにいるだけの猫だ。 神妙な顔で通り過ぎるだけの日もあれば、虫を捕まえる姿を見られる日もある。 ちょっとした楽しみではあるけれど、僕はそれを待たないようにしていた。 猫の来ない日が必要以上にさみしくならないように。 「あたしでも飲めるコーヒー見つけたんだ」 ベンチに座っていた僕の隣にバックパックを置きながら、彼女は挨拶もせずに言った。 「コーヒー?」と僕は言った。彼女はコーヒーが苦手だったはずだ

          【小説】 ラテ

          6月12日 2:15~3:15詩作(短歌)

          虹を追い 虹に追われた 金縛り なんだ夢かと 虹に腰掛け 香を焚き 失くしたものを 思うたび さらに記憶は 煙となりて トーテムの姿も知らぬ トーテムの名前も知らぬ 救いも知らぬ 目を瞑る フォッサマグナの境界で あちらと呼ばす 手が引くを待ち 精霊を呼ぶ藁の熱 夏風は頬を冷まさず 頬乾かさず 愚痴れども 花の咲かない 祖母の庭 雨も肥料も情緒もなさず 黒煙ののぼるモニタを閉じれども ああ閉じれども 閉じれども死が

          6月12日 2:15~3:15詩作(短歌)

          メモ : 雑草

          部屋にそこらへんの雑草を飾るとすこしたのしい #monochrome #fujifilm_xseries #キリトリセカイ #photo

          短歌 : 雨海鳥

          海に降る 雨音を知る その鳥は 誰に言うでもなく微笑んで

          短歌 : 雨海鳥