【日記】カサンドラは旅に出た

カサンドラは旅に出た。
それはおそらく長い旅だった。
旅の長さなんて終わるまでわからないけれど、それでも。
僕がそれを知ったのはカサンドラがすでに旅に出たあとだった。
もちろん行先なんて告げられていない。
そういえば最近見ないな、と思っていたところへ、知人からカサンドラの近況を聞かされたという有様だ。
エーゲ海に行ったのかもしれないし、木星に行ったのかもしれない。
どこだっていい。どこだって同じだ。
どちらにしろ、旅なのであればいつかそのうち帰ってくる。
帰ってこないのであればそれは旅ではない。

庭の植物に鳥が集まる。
僕はそれを眺めているのが好きだ。
鳥に詳しいわけではない。
それどころか、庭に生えていた背の高い植物の名前すら知らなかったくらいだ。
調べてみると、それは毒のある植物だった。
鳥は毒性の強い種を傷つけないように、毒性が比較的弱い果肉を器用に食べているらしい。
僕は思わずそれを何かに例えてしまいそうになったけれど、やめた。
そのかわり、小さなため息をひとつついた。
歯磨きしているときの左手みたいな行き場のない感情があった。

メモ
カサンドラが帰ってくる前にやるべきこと