見出し画像

【日記】夢を歩く

夢の中にしか存在しない場所、というものがある。
何度も同じ場所を夢に見る。
誰にでもあるものなのかはわからない。
少なくとも僕にはある。

幼少期にどこかで見た景色で、見た記憶を忘れているだけなのか。
あるいは風景の断片をつなぎ合わせて頭の中で作り上げたものなのか。
もしかしたらまったく実在しない場所なのかもしれない。
だとしたら少し怖い。
あまりにもディティールが過剰であるし、あまりにもその夢を覚えすぎているのだ。

その場所は、緩い斜面に広がる古い住宅地だった。
道は複雑に入り組んでいて目的地に真っ直ぐ辿り着くことはできない。
古い家々の間をくたびれたアスファルトが覆っている。
どこを目指しているのかはわからない。
辿り着けないということだけがわかる。
その街はいつも夕暮れで、薄暗闇が空を覆っている。
西の空の端にオレンジが残っている。
それほど急いでいるわけではないけれど、みぞおちのあたりに焦燥感の苦しさがある。
また道を間違える。
知らない道だからな、と僕は思う。
本当に知らないんだっけ?
見たことのない、何度も見た場所。

願わくば、あの夢の街こそが現実でありませんように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?