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【日記】雨が来る、鳥が飛ぶ

ゴマ粒みたいに高く飛ぶ鳥から見れば
地表の人々の悩みも小さく見えるのだろうか
長い道のりを一歩一歩進む人間を見て
「飛べばいいのに」とか思ってたりするんだろうか
焼き鳥にしてやろうか

とはいえ鳥にだって悩みはあるのだろう
なんだか今朝から左の羽の付け根が痛いだとか
横風に煽られたときに落としてしまった虫のことだとか
一昨年バードストライクで死んだあいつのことだとか
焼き鳥のことだとか

生き物は主観でしか生きられない
客観は主観的な空想でしかない
それでも
たとえ的外れな空想だとしても
想像してみることを諦めずにいられたら
より良い生き物になれるだろうか

鳥が雨の予感に鳴いている
僕にもわかる
雨が来る

軒先の喫煙所で鳥に話しかける
面識だけはある他部署の同僚だ
「降りそうですね」
「そんな感じですね」と、鳥は答える
「降らないと思ってたんだけどな」
「通り雨だといいですけど」
「急いで帰るか、雨宿りがてら一杯やってくか」
「微妙なとこですね」
「いや、明日早いんだ。やっぱ帰ろう」
「私は一軒寄っていくことにします」
「いいですね」
「焼き鳥屋に」
「鳥なのに?」
「冗談ですよ」

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