暇のギャラリ 青山一丁目編 2

ギャラリーに展示された
日常のための吹きガラスを時計回りでゆっくりと眺めて行った。

最初の棚には
小皿がぽつん、ぽつん、と規則正しく並べられている。
空気みたいに透けてるガラスに
微細な線でシロツメクサが一輪描かれていた。
丁寧に、丁寧に、描かれていた。
水玉模様で縁取りされた小皿、
私だったらどんな食べ物を置こう。

シロツメクサを隠すような真似はしたくない。

そうだ、ゼリーだ。
それも紫色のゼリーだ。
円錐形の先っちょを水平にスッキリと切ったタイプの、
ほのかに葡萄のかほりのするゼリー。

真上からみれば
まるでシロツメクサが入れ込まれてるような魔法のようなゼリー。
お皿とゼリーが一体となっているみたいな。

右側の棚には
大皿が3枚、等間隔に並べられている。
左端のものが気に入った。

その皿は少し深さがあるけれど、
ボウルとまではいかないちょうどいい深さ。
底には硝子の青が閉じ込められていて
縁には風に揺れているいくつかのナズナの一瞬が描き取られていた。

私だったら、
塩味のシンプルな冷製パスタを謙虚に置こう。
真ん中に、
それも周りにかなりの空間をもって
トングでクルッと巻きながら置こう。
ナズナがきっと良い味を出してくれる。

なんだかお腹が空いてきた。

カラン、
ガラス張りの扉が開いた。

遅いよ、
今日のイタリアンおごってよね。

〜完〜

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