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ショートショート

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ショートショートの数々、知恵を絞って書いています。
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洞窟の奥はお子様ランチ

洞窟の奥はお子様ランチ

太郎兄ちゃんが大きくなったらお医者さんになる、と言い出し
お父さんから人体図の書かれた本を買ってもらった。そっと見たら本当に
びっくりした。体の中には僕の大好きなお子様ランチのお皿に乗っている
ものがいっぱい並んでいるんだ!

わぁ、ハンバーグが二つも!オムライスもパスタも、旗の立ったライスも!あ!僕の嫌いなニンジンも・・・これは食べたくないなぁ。

お母さんが話してくれた。
「食べ物はね、口から

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【行列のできるリモコン】のお題で、【青春の香る】ショートショート

【行列のできるリモコン】のお題で、【青春の香る】ショートショート

俺はテレビのリモコン。この家じゃ一番古くて体も大きい。いろんな色のボダンも付いてなかなかのシャレ者だ。
この家には、なんとリモコンが多いことか。テレビ、ステレオアンプ、レコーダー、エアコン、ストーブ、天井の照明・・
色も黒、白、ベージュ、シルバー、ゴールド。好きなところに転がってるから一向に片付かない。

奇麗好きな俺はついに切れて大声で命令した。

「整列!」

さすがに驚いたらしく俺を先頭に一

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【ツノがある東館】のお題で、【一行目で惹きつける】ショートショート

【ツノがある東館】のお題で、【一行目で惹きつける】ショートショート

綾瀬はるかだ!東横線の向かいの席にスッと座った女性を見て確信した。長い髪を一つにまとめ、黒くて大きいサングラスが顔半分を隠している。なんと小さい顔!ほんの少しめくれ上がった形のいい唇、口紅はつけていない。横浜駅に着くとスイと降り、「たらはデパート」に向かっていく。
このデパートは東館、西館に分かれていて、東館には高級ブランド売り場がずらり。屋上にはツノのような塔があり、これはVIPむけの展望レスト

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【アメリカ製保健室】のお題で、  【どんでん返し】なショートショート

【アメリカ製保健室】のお題で、  【どんでん返し】なショートショート

小さいころのわたしは、学校へ行くと口をきくこともできず、すぐ泣くので絶好のいじめの対象になった。傘やノートを隠されたりボールをぶつけられたり。学校を休むことは許されなかったから、保健室だけがほっとできる場所だった。ベッドに横になり白いカーテンの揺れる窓から空を眺めているのが好きだった。

そんなわたしは19歳のとき恋をした。相手はポールというアメリカ人、ふくよかな身体でハグされると、あのころの保健

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会員制の粉雪

会員制の粉雪

 クリスマスデート用に白いコートを買った。デートの場所は動物園。彼からステキな催しの会員になったから、一緒に行こうと誘われて。入口で彼が「粉雪会員」のカードを見せるとシロクマランドの前に案内された。最近赤ちゃんが生まれて人気のスポットだ。
 6時になると粉雪が舞ってきた。人工雪だろうが、イルミネーションに映えてキラキラ美しい。シロクマの赤ちゃんも嬉しそうだ。
「赤ちゃん、可愛い!こっち見てるね」

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ルールを知らないオーナメント

ルールを知らないオーナメント

月遅れの端午の節句の季節になると、村の家々には鯉のぼりがはためき、「お宮さん」と呼ばれて親しまれている神社には、鳥居の横に大きな旗が飾られ、その縦長の旗の下角には、「お猿っ子」と呼ばれる小さな魔除けの猿の人形が飾られていた。

子ザルのモンタはその小さな人形が欲しくて、ついにある朝その人形をむしり取ってしまった。重しのなくなった旗は、ひらひらと頼りなげに揺れたので、モンタは猿人形の代わりに、ぶら下

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台にアニバーサリー

台にアニバーサリー

医学部に合格し、東京は常盤台近くの古い一軒家の二階に下宿が決まり、
上京した日が僕の独立記念日だった。
勉強ばかりで家事などしたことがなかったから、当然賄付き、トマト嫌いの僕は下宿のおばさんから砂糖まぶしのトマトを出され、初めて食べた。甘いトマト記念日もここで経験した。

国家試験合格と同時に、大学病院のある旗の台に引っ越した。ここが僕の医者としての一歩を踏み出した記念の地である。

僕は希望どう

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白骨化スマホ

白骨化スマホ

「お母さん、ハッコツカってなに?」
と幼稚園「ゾウ組」の二郎が聞いた。
「お兄ちゃんが本読んでくれたんだけど、ゾウは死ぬとき場所が決まっていてそこに集まるんだって。そこにはハッコツカしたゾウが沢山よこたわっているんだって」

「そうね、そういう説もあるわね。死んだ象はやがて骨だけが残る。
それを白骨化するっていうのよ」

「ふうん、なんだか象さん可哀そうだね」

「だから、生まれかわったら幸せにな

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助手席の異世界転生

助手席の異世界転生

憧れの受付嬢と結婚でき、亮は有頂天になった。彼女は一度見たら忘れられないほど笑顔がチャーミングで、言い寄って来る男は何人もいたが、亮を選んだのは「真面目で真っすぐだから」とのこと。そんな彼女に亮は精一杯の約束をした。
「芝生の庭のある広い家を建て犬を飼おう。子供が生まれたらその庭で子供と犬が戯れる。休みの日にはみんなでドライブに行こう」
「まあ、嬉しい!犬はコリーがいいわ」彼女は大喜びだった。

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着のみ着のままゲーム機

着のみ着のままゲーム機

ここは深夜の交番。

お巡りさんが老人に話し掛けている。

「どこから来られたんですか?
この寒いのに着の身着のままじゃないですか」

「おお君、ご苦労さん!永田町から来たんだよ。
自慢するわけじゃないけどね、俺は子供のころから成績よくて、中学高校は名門進学校、有名大学から有名企業に入り、コネがあって議員秘書になり、
それで政治家、今は総理大臣になっちゃってさ。日本を動かしてるんだよ」

「はいは

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戦国時代の自動操縦

戦国時代の自動操縦

一万三千の兵を率いた明智光秀は、右手の太刀を高々と掲げ叫んだ。
「敵は本能寺にあり!」
その声で軍勢は向きを変え、猛然と京へと歩を進めた。

さて、ここは40億年前の火星、ゲームに夢中の坊やがいた。「戦国ゲーム」を自動操縦にしていたのだが、ふと長い手をひょろひょろと動かせて「明智」の駒を動かしてみた。西に向かっていた「明智」の軍勢を京の方に向けてみたのだ。自動操縦のままなら、明智の駒は西に向かい、

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ごはん杖

ごはん杖

自分が杖だ、と信じ込む人が現れ、急激に増え続けている。
特徴は、自分が好む素材の杖になったつもりになること。金が好きな者は
自分は金の杖になったと信じ、人を支えようとする。
「僕はこんなに光っているから夜道でも大丈夫、君を支えてあげるよ」と人に近づく。といっても姿は人のままだからややこしい。

ごはんが好きな人はごはんを固めて作った杖になったつもりになり、小腹が空いたとき、思わず自分の指を噛み切っ

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20字の小説・5話

20字の小説・5話

君の街へ向かうバス、もう恋かもしれない。

水底は揺れて見えない君の心、瞳を凝らす。

立ち向かうような金木犀の香りよ我に宿れ。

私の心に、君の手のあとがまだ残っている。

姿見たさにそっと街角人の流れが美しい夕。

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5つのラブストーリーでまとめたつもりですが、20字は初めてで
物語が見えてくるかどうか・・・

小牧さんよろしくお願いいたしま

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親切な暗殺

親切な暗殺

1963年、ジョン・F・ケネディがダラス市内をパレード中に銃撃され死亡したのは、世を揺るがす暗殺事件だった。犯人とされたオズワルドも2日後に撃たれて死亡、事件は今も謎のままである。

ケネディ大統領が残した偉業は、キューバ危機を収めたことだ。
キューバからミサイルが発射され世界大戦がはじまろうという時
「トルコにある米軍のミサイル基地を撤去する代わりにキューバのミサイル基地も撤去する」という条件で

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