菜根

大学生五人による共同読書垢です。本に関して呟きます。様々な分野に渡る書籍の紹介を心掛け…

菜根

大学生五人による共同読書垢です。本に関して呟きます。様々な分野に渡る書籍の紹介を心掛けています。お気軽にフォロー頂ければと思います。Twitterでも書評を公開しています。Twitterのアカウント(菜根:@fresh_academism)もフォローしていただければ幸いです。

最近の記事

[書評]『二・二六事件 「昭和維新」の思想と行動(増補版)』/高橋正衛(中公新書)

本書は近代日本最大のクーデタである二・二六事件を扱ったものである。二・二六事件は、1936年に陸軍青年将校(20代後半から30代前半にかけての年齢で、階級は尉官クラス、隊付の士官)が岡田啓介首相・高橋是清蔵相・鈴木貫太郎侍従長・渡辺錠太郎教育総監ら政権および陸軍幹部を殺害(一部未遂)し、永田町をはじめとする日本の中枢を4日間にわたって占拠したクーデタ未遂事件である。 本書は二・二六事件とは、「真崎甚三郎の野心と重なり合った青年将校の維新運動」と位置付ける。これは本書が二・二

    • [書評]『広田弘毅「悲劇の宰相」の実像』/服部隆二(中公新書)

      本書は戦前に外相や首相を歴任した広田弘毅の実像を描き出そうとしたものである。外交文書や周囲の人々の日記などから広田自身と広田外交を仔細に検討している。広田は福岡出身で、福岡の国家主義団体「玄洋社」の一員であった。それゆえ広田は冷静沈着な外交官としての1面に加え、「国士」としての1面もあった。広田は外務省主流派である幣原派とは距離を置き、幣原が志す欧米重視の姿勢ではなく、中国やソ連との外交を重視した。とはいえ広田は重光のような亜細亜主義者ではなく、「漠然とせる観念等に捉わるる事

      • [書評]『白』/原研哉(中央公論新社)

        無印良品のアートディレクターを務める他に、森ビルや蔦屋書店のコンセプトを生み出したデザイン界の巨匠・原研哉が、「白」という概念の捉え方を見出す。『白があるのではない。白いと感じる感受性であるのだ。』白を単なる色のひとつと考えるのではなく、色の不在による空白とみなし、そこから生み出される創造に着目している。また、不可逆性を孕んだ白い紙、空白に価値を見出した日本の文化を、「白」がもたらす印象に照らし合わせて考察している。本書は、無意識のうちに白色から受けていた感触を言語化すること

        • [書評]『社会主義への挑戦1945-1971』/久保亨(2011)/岩波新書

          本書は1945年から1971年にかけての中国近現代史を扱ったものである。したがって国共内戦から林彪失脚・国連代表権獲得までの歴史を紐解くものである。国共内戦に勝利した共産党は、新民主主義を掲げるも、チベット進駐や朝鮮戦争など外患を抱えた状態を社会主義を徹底することで乗り越えようとした。その中心が毛沢東であった。しかし行き過ぎた社会主義路線は大躍進政策で頓挫、1960年代に入ると劉少奇らが代わって主導権を握り調整政策で徐々に国力を回復させた。だが1966年、再び毛ら急進派が文革

        [書評]『二・二六事件 「昭和維新」の思想と行動(増補版)』/高橋正衛(中公新書)

        • [書評]『広田弘毅「悲劇の宰相」の実像』/服部隆二(中公新書)

        • [書評]『白』/原研哉(中央公論新社)

        • [書評]『社会主義への挑戦1945-1971』/久保亨(2011)/岩波新書

          [書評]『勉強の哲学 来るべきバカのために』/千葉雅也(文春文庫)

          本著はフランス現代思想を手掛かりとして、「勉強」という一つの大きなテーマについて考察したものである。前半では主に「勉強をする」とはどういうことか、ラディカルに勉強する過程でどのようなことが起こるか、そして勉強するにあたって覚悟すべきことは何かなどについて著者なりの考えが詳らかに述べられており、後半においては前半で説明された勉強に関する原理を我々がどう実践すべきかについて、特に技術的な視点から丁寧に書かれている。哲学そのものについて解説したり、自らの思想を説いてそれを哲学史の中

          [書評]『勉強の哲学 来るべきバカのために』/千葉雅也(文春文庫)

          [書評]『幻のアフリカ納豆を追え!』高野秀行(2020)新潮社

          本書は、ノンフィクション作家の高野秀行氏によるもので、筆者が世界各国を回り出会った納豆についての調理法や歴史的背景を探り、ひいては全世界の納豆に共通する理論をも導こうとするものだ。 例えばセネガル。元々は一部地域でしか作られていなかった納豆だったが、1960年代の独立後、各地から若者が都心部へ集まると共に、市場に納豆がおかれるようになった。また、フランスの統治下になり米が大量に輸入されたことも納豆料理を加速させていった。ちなみにアフリカでは主に納豆にパルキアというマメを使い、

          [書評]『幻のアフリカ納豆を追え!』高野秀行(2020)新潮社

          『新左翼とは何だったのか』/荒岱介(2008)/幻冬舎新書

          本書はかつて二次ブントの指導者であり、現在は「新左翼」運動から離れ、環境保護活動家である著者が、「新左翼」を概観・考察したものである。鈴木氏の『新左翼とロスジェネ』が主に運動の陽の部分を描いたものであったのに対し、本書は、陰を取り上げたものと言えるだろう。筆者は「新左翼」がスターリンを痛烈に批判する一方で、レーニン・トロツキーを神聖化してしまい、原理主義的傾向に陥っていたこと、また新左翼各派が生協やサークルの利権をめぐり争っていたこと、そして運動衰退期に至っては原理主義的傾向

          『新左翼とは何だったのか』/荒岱介(2008)/幻冬舎新書

          『新左翼とロスジェネ』/鈴木英夫(2009)/集英社新書

          本書は、ロスジェネ世代である(学生運動全盛世代ではない)著者が、ロスジェネ世代とそれより若い世代向けに書いた本である。運動家の手記に基づき、新左翼運動全体を7つの期に分類し、概観する。その際、著者は学生運動を「自分探し」と位置づける。これは著者も認める通り、「軽率」な表現だろう。しかしながら新左翼運動を貫く「実存主義」・全共闘運動以後の「自己否定」の思想を考慮すれば、あながち的外れな分析ではない。また新左翼運動を「自分探し」と位置付けることは、ともすれば、学生運動を遠く、関係

          『新左翼とロスジェネ』/鈴木英夫(2009)/集英社新書

          『成長マインドセット』(吉田行宏 著)

          成長とは何か?なぜ、成長できないんだろう?この本は、成長するための心構えや方針を、物語形式で描いている。そのためとても分かりやすく、読者に対して曖昧に10を伝えるよりも、1を確実に伝え腹落ちしてもらおうという意図が感じられた。成長というと多くの人は新たなスキルを身につけて、出来ることが増えることに重点を置きがちだが、この本によると、成長とは意識、ふるまい、スキル、成果の4層からなるアイスバーグをバランスよく大きくすることだ。スキルの土台となるふるまい、意識も大きくならないと、

          『成長マインドセット』(吉田行宏 著)

          『TRACTION(トラクション)』 ジーノ・ウィックマン 著

          中小企業の起業家・経営者が、ワーク・ライフ・バランスを保ちながら組織の勢いを増すことができる包括的なシステム作りをするために、EOS(起業家のための経営システム)の仕組みと導入方法について書かれた本。人の心理に沿った組織作りが可能となるEOSは膨大な経験に基づいており、確かな結果を出し、既に多くの経営者に取り入れられている経営システムだ。自分は経営者では無いため、このシステムをそのまま全て受け入れ導入することはできないが、今行っているアプリ開発に一部役立て、確かな効果を実感し

          『TRACTION(トラクション)』 ジーノ・ウィックマン 著

          『人新世の「資本論」』/斎藤幸平(集英社新書)

          本著は最新のマルクス研究の成果を踏まえて気候危機と資本主義の関係を分析し、様々なデータや数々の古典からの引用を通じて現代資本主義社会の抱える根本的問題を暴露し追及するものである。所々に見られる論理の飛躍や、自身の主張に対する反論の検討とそれに対する再反論の提示と言った反省的姿勢の欠如、壮大で抽象的な理論の具体的な実現方法と実現可能性の検討の薄さなど議論の余地のあるポイントも種々見られはするものの、有名な『資本論』の枠をも超越する晩期マルクスの思想の再興と掘り直しに基づきながら

          『人新世の「資本論」』/斎藤幸平(集英社新書)

          『開発主義の時代へ 1972-2014』/高原明夫・前田宏子/岩波新書

          本著は題名にもある通り、1972年から2014年までの中国について記されたものである。本著は通説とは異なり、文革中の1972年から改革開放が始まったとの立場をとり、72年を起点に、毛沢東・鄧小平・江沢民・胡錦濤、そして習近平へと続く最高指導者たち、また彼らを取り巻く中央指導部の姿を描いている。改革開放をめぐる争いやそれに伴う「社会主義の中国的変質」を国内政治・外交・経済など様々な視点から分析がなされており、当時の中国情勢がわかりやすく、かつリアリティーをもって伝わってくる。本

          『開発主義の時代へ 1972-2014』/高原明夫・前田宏子/岩波新書

          「アラブの心臓」に何が起きているのかー現代中東の実情/青山弘之編/岩波書店

          本著は「アラブの心臓」諸国、即ちエジプト、シリア、イラク、レバノン、ヨルダン、パレスチナの各国について、6人の研究者がそれぞれ記したものである。近年サウジアラビア等の沿岸諸国が存在感を増す一方で、紛争の連鎖により力を低下させる「アラブの心臓」諸国は、我々日本人には複雑怪奇で、ともすればステレオタイプ的な見方をしてしまう。そこで本著では研究者のフィールドワークに基づいた考察により、その虚像を解き明かし、実情を描き出している。特にムバーラク、ムルスィー、スィースィーと2つの革命を

          「アラブの心臓」に何が起きているのかー現代中東の実情/青山弘之編/岩波書店

          『オイディプス王』/ソフォクレス/藤沢令夫訳(岩波文庫)

          古代ギリシアにおける三大悲劇詩人の一人ソフォクレスの作品の中でも特に傑作と謳われ、哲学や文学などにおいて古今東西を問わず引用されてきたこの作品のストーリーそのものについては、論文や書籍はさることながらインターネット上においても多くの批評が為されていそうなので、ここでは敢えて現在自分が大学で受講している哲学の授業の内容と絡めて簡単な書評を行いたい。 この作品には「真理」というワードがしばしば登場するが、これは本著の文脈においては「アポロン神の神託における御言葉」を表しており、作

          『オイディプス王』/ソフォクレス/藤沢令夫訳(岩波文庫)

          『見えがくれする都市 [江戸から東京へ]』 / 槇文彦 他(鹿島出版会 SD選書)

          幕張メッセや横浜アイランドタワーなど、数多くの建築を設計した建築家、槇文彦による本。 東京の街並みには、江戸の頃から続く、文化的・歴史的背景が見え隠れしている。道の形状や建物と自然の配置、建築の正面のデザインや間取りに至るまで、日本人独特の思想を見出すことが出来るのである。すなわち、日本の住宅や街並みの重層感、そして求心的な奥なる空間の存在は、西洋の中心思想と対を成し、空間に深さ、精神的な奥性を見いだす文化を反映しているのである。槇は、西洋化が進む現代の東京に暮らす私達に、今

          『見えがくれする都市 [江戸から東京へ]』 / 槇文彦 他(鹿島出版会 SD選書)

          『アメリカ大統領選』/久保文明、金成隆一(岩波新書)

          アメリカにおける民主主義の規範の崩壊は、トランプによって始められたものではない。このプロセスを突き動かしてきたのは、90年代頃から加速した二大政党の分極化である。かつて文化的・人口統計学的に似通っていた民主・共和両党の支持層は公民権運動後の南部の白人の民主から共和への「大移動」と新たに選挙権を得たアフリカ系の民主党員化、大量移民時代の到来による移民とその子孫の大半の民主党員化、さらにはレーガン政権期以降のエバンジェリカル(原理主義)キリスト教徒の共和党への圧倒的支持、という三

          『アメリカ大統領選』/久保文明、金成隆一(岩波新書)