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「アラブの心臓」に何が起きているのかー現代中東の実情/青山弘之編/岩波書店

本著は「アラブの心臓」諸国、即ちエジプト、シリア、イラク、レバノン、ヨルダン、パレスチナの各国について、6人の研究者がそれぞれ記したものである。近年サウジアラビア等の沿岸諸国が存在感を増す一方で、紛争の連鎖により力を低下させる「アラブの心臓」諸国は、我々日本人には複雑怪奇で、ともすればステレオタイプ的な見方をしてしまう。そこで本著では研究者のフィールドワークに基づいた考察により、その虚像を解き明かし、実情を描き出している。特にムバーラク、ムルスィー、スィースィーと2つの革命を経験しているエジプトを「制度内」と「制度外」に分け、政治分析を行なっているのは非常にわかりやすく、またさまざまな政治分析に応用可能な見方のように思われる。本著が書かれた2014年から6年ほどが経つが、中東情勢がさらに混沌とする中で、本著はひとつの指針を与えてくれるものである(S)

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