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『新左翼とは何だったのか』/荒岱介(2008)/幻冬舎新書

本書はかつて二次ブントの指導者であり、現在は「新左翼」運動から離れ、環境保護活動家である著者が、「新左翼」を概観・考察したものである。鈴木氏の『新左翼とロスジェネ』が主に運動の陽の部分を描いたものであったのに対し、本書は、陰を取り上げたものと言えるだろう。筆者は「新左翼」がスターリンを痛烈に批判する一方で、レーニン・トロツキーを神聖化してしまい、原理主義的傾向に陥っていたこと、また新左翼各派が生協やサークルの利権をめぐり争っていたこと、そして運動衰退期に至っては原理主義的傾向がさらに強まり、組織的な「内ゲバ」が起きたことを指摘する。結局のところ、「新左翼」は社共両党のアンチテーゼゆえに議会主義を採れなかったことが最大の欠点であったのではないかと思う。変革・主張の手段がデモや武力闘争に限られたため、要求が通らない限り、過激化し続け最終的に「テロ」とみなされ、大衆の支持を失うのは明らかであろう。「新左翼」は「見果てぬ夢」を追い続ける運命にあったのかもしれない。本書の射程からは外れるが、「新左翼」的エネルギーが現在環境問題に注がれつつある(欧州では実際そうであるのかもしれない)という筆者の指摘は非常に興味深い。(S)

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