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[書評]『社会主義への挑戦1945-1971』/久保亨(2011)/岩波新書

本書は1945年から1971年にかけての中国近現代史を扱ったものである。したがって国共内戦から林彪失脚・国連代表権獲得までの歴史を紐解くものである。国共内戦に勝利した共産党は、新民主主義を掲げるも、チベット進駐や朝鮮戦争など外患を抱えた状態を社会主義を徹底することで乗り越えようとした。その中心が毛沢東であった。しかし行き過ぎた社会主義路線は大躍進政策で頓挫、1960年代に入ると劉少奇らが代わって主導権を握り調整政策で徐々に国力を回復させた。だが1966年、再び毛ら急進派が文革を起こし実権を握った。このように中国現代史を概観すると毛を中心とする急進社会主義派と劉・鄧小平を中心とする穏健派との間のパワーゲームに揺られていたように思われる。文革以後、鄧小平が指導者となり「中国式」社会主義が定着した。さらに現在の習近平体制では彼と権力を争う相手も「中国式」社会主義に対抗するイデオローグも見当たらない。本書が扱った時代の路線変更は眼前の社会的危機、もしくは外患がきっかけになり発生した。21世紀、超大国となった中国は今後どうなっていくのかという難題に示唆を与えてくれる1冊。(S)

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