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『開発主義の時代へ 1972-2014』/高原明夫・前田宏子/岩波新書

本著は題名にもある通り、1972年から2014年までの中国について記されたものである。本著は通説とは異なり、文革中の1972年から改革開放が始まったとの立場をとり、72年を起点に、毛沢東・鄧小平・江沢民・胡錦濤、そして習近平へと続く最高指導者たち、また彼らを取り巻く中央指導部の姿を描いている。改革開放をめぐる争いやそれに伴う「社会主義の中国的変質」を国内政治・外交・経済など様々な視点から分析がなされており、当時の中国情勢がわかりやすく、かつリアリティーをもって伝わってくる。本著を通して、私は中国が、社会主義が形骸化した今でも、他の先進諸国と比べて、中央のエリートが国民の1歩前に立ち、国家の利益やあるべき姿を定め、それを追求する手段を決定しているという事実を改めて認識させられた。そしてこのことが「中国モデル」の本質であると考える。エリートが国民の1歩前に立ち国家を導くのか、あるいは指導者が「平凡な」国民とともに国家を運営していくのか、国家運営の本質的な在り方を考察する上でも、多大な示唆を与えてくれる1冊である。(S)

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